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真夏のゾクッと小噺⑤

かつて「はたご池」があったとされる場所。今は用水路が流れる=豊橋市下地町で
かつて「はたご池」があったとされる場所。今は用水路が流れる=豊橋市下地町で

豊橋の「はたご池」

 豊橋市下地町の大蚊里郵便局付近。昔ここに銭池という池があった。雨の降る丑(うし)三つ時になると機(はた)を織る音が聞こえることから「はたご池」と呼ばれるようになった。
 「豊橋妖怪百物語」(ばったり堂)に登場する話。お光という女がいた。太吉という男と恋に落ち、太吉の母と3人で暮らし始めたが、いわゆる姑と嫁の関係は悪かった。お光は働き者で近所の評判もよかったが、機織りだけが苦手だった。姑からそのことをののしられ、太吉もお光をかばったが、姑のいじめは悪化する一方だった。
 お光は腕を上げようと毎日機を織り続けたが、一向に上手にならない。泣きながら織っていると、機織り小屋にやって来た姑が言った。「泣けるほど機織りが嫌か。わしの息子の嫁の値打ちはねぇ。そんなに嫌なら、いっそのことはたごでも背負って池に飛び込んで死にゃあいい!」。
 雨の降る翌朝、お腹に赤子を身ごもっていたお光ははたごを背負い、池に身を投じてしまった。
 今は農地整理により池は埋め立てられ、小さな用水路が流れる。夜中に歩くと、どこからともなく機を織る音と赤ちゃんの泣き声が聞こえるとか…。姑の皆さん、お嫁さんは温かく迎えてあげましょう。
(由本裕貴)

豊橋の「はたご池」

 豊橋市下地町の大蚊里郵便局付近。昔ここに銭池という池があった。雨の降る丑(うし)三つ時になると機(はた)を織る音が聞こえることから「はたご池」と呼ばれるようになった。
 「豊橋妖怪百物語」(ばったり堂)に登場する話。お光という女がいた。太吉という男と恋に落ち、太吉の母と3人で暮らし始めたが、いわゆる姑と嫁の関係は悪かった。お光は働き者で近所の評判もよかったが、機織りだけが苦手だった。姑からそのことをののしられ、太吉もお光をかばったが、姑のいじめは悪化する一方だった。
 お光は腕を上げようと毎日機を織り続けたが、一向に上手にならない。泣きながら織っていると、機織り小屋にやって来た姑が言った。「泣けるほど機織りが嫌か。わしの息子の嫁の値打ちはねぇ。そんなに嫌なら、いっそのことはたごでも背負って池に飛び込んで死にゃあいい!」。
 雨の降る翌朝、お腹に赤子を身ごもっていたお光ははたごを背負い、池に身を投じてしまった。
 今は農地整理により池は埋め立てられ、小さな用水路が流れる。夜中に歩くと、どこからともなく機を織る音と赤ちゃんの泣き声が聞こえるとか…。姑の皆さん、お嫁さんは温かく迎えてあげましょう。
(由本裕貴)

かつて「はたご池」があったとされる場所。今は用水路が流れる=豊橋市下地町で
かつて「はたご池」があったとされる場所。今は用水路が流れる=豊橋市下地町で

カテゴリー:社会・経済 / 特集

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