高齢者ドライバーと安全㊥

免許自主返納で特典も

　運転免許証を自主返納することで“ドライバーの卒業証明書”として交付される運転経歴証明書。豊川署はこれを掲示することで豊川市内の店舗で特典を受けられる取り組みを行っている。
　大堀町の花屋「フラワー＆ハート花幸」では、証明書を持参の上、店で１０００円以上の購入者にプリザーブドフラワーのバラ１輪を贈っている。創業者の河原敏幸さん（76）は豊小学校区の地域交通安全活動推進委員や高齢者交通安全協力員として地域の活動に貢献している。
　若い頃に忘れられない出来事があった。交通事故の犠牲者の葬儀に、事故の加害者側から花の配達を依頼された。花を届けると、遺族から突き返された。「そんなものはいらん。外へ持っていけ！」。花に責任はないが、遺族の気持ちは痛いほど分かる。河原さんは、花屋でしか分からない葛藤を感じた。「花は生まれた時から死ぬ時までいろんな場面で人生を彩る。笑顔で受け取ってほしいけど、交通事故ではそうはいかない」。
　配達や市場との往復で、自動車は欠かせない。自分だけでなく、家業を継いだ３人の息子たちにも安全運転を徹底させ、昨年度には警察から安全運転管理の優良事業所として表彰も受けた。
　免許の自主返納について、河原さんは「車がないと生活しづらい不便な地域では、返納するのはなかなか難しいのでは。私も交通安全活動に参加している面でも車は手放せない」と話す。
　決して「高齢者＝免許返納」ではない。河原さんのように使命感を持つ他、やりがいや趣味、スポーツなどにアグレッシブな人こそ、長生きと安全運転を両立できる面もある。（つづく）
（由本裕貴）