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共越
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働き改革の本末転倒

カテゴリー:コラム

働き改革の本末転倒

電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労自殺し、労災認定されたことに端を発した電通の違法残業事件から「働き改革」が日本社会を語るキーワードの一つになっている。そして、今国会では「働き改革」や「生産性革命」に関連する法案が審議されているが、その法案の根拠の一つとされた裁量労働制データが厚生労働省によって捏造されたことが次々と明らかになり、大問題となっている。
そもそもこの議論は2013年6月の日本再興戦略会議において企画業務型裁量労働制を始め、労働時間制について、早急に実態調査・分析を実施し、労働政策審議会で検討を開始するということで始まったものである。たしかに当時は、アベノミクスの三本の矢という言葉がマスコミで持て囃され、日本の成長戦略を進めるべきだという機運が盛り上がっていたことも事実である。もしかすると、そういう空気が今回、明らかになったデータ捏造という、厚生労働省の忖度を招いた可能性も否定できないところだ。
この問題の本質は、名目GDPの成長がほとんどない状況下で、労働生産性を上げようとすると、どういうことが求められるかということにある。そもそも労働生産性は、<GDP(国民総生産:1年に作り出す付加価値の合計)>を<就業者数×労働時間>で割ったものである。要するに労働生産性を上げるには、分母を小さくするか、分子を大きくするか、どちらかしかない。この「生産性革命」の基本となっているのは、いわゆる「働き方改革」で、残業時間規制とともに高度プロフェショナルという残業代ゼロの裁量労働制を導入することにある。つまり、現在言われている「働き方改革」は、分母を小さくすることで生産性を上げようとしているわけである。簡単に言えば残業時間を減らし、能力と成果に応じて働く裁量労働制を入れれば、あくまでも表面上であるが、労働時間を減らすことができ、前述の分母を小さくし、労働生産性を上げることができるだろうというものである。考えてみれば、サービス産業を中心に低賃金の非正規雇用が増加しているが、このことは労働コストを下げる効果はあっても、労働生産性を上げているわけではない。つまり、失われた20年を経て、GDPの成長が低迷しているなかで統計上の労働生産性を上げるために分母を小さくすることは、多くの識者が批判するように合法的ブラック企業がはびこることにも繋がりかねない危険性を秘めている。提示したグラフを見ていただければ、わかるように日本の名目GDPは、1997年からほとんど増えていない。その代わりに伸びているのが財政赤字である。つまり、財政赤字を出すことによって未来の需要を先食いしながら何とかバブル崩壊後、現状維持をはかってきたのが日本経済の現実だということである。
そうして考えてみると、今、求められているのは、分子のGDPを本当に伸ばす成長戦略だと言うことは明らかだろう。しかしながら、日本においては世界的に目覚しい勢いで進む代替エネルギーへの転換も原発再稼動に拘るあまり大幅に遅れ、IT産業であるグーグル等が主導する自動運転システムもいまだに自動車メーカーがその担い手になっている。また、世界的に進もうとしている電気自動車への転換に対してもいまだにコストの高い水素ガスステーションを推進している不可思議な状況にある。また、鳴り物入りのリニア新幹線もこの省エネ時代に逆行する従来新幹線の3倍の電気が必要とされる古い技術である。311以降、世界は加速度を付けて変わり始めているのに、日本だけが311以前の冷戦時代に回帰しようとしているのはあまりに時代錯誤である。今、求められているのは小手先の「働き方改革」ではなく、未来を切り拓く「真のリーダーシップ」である。
(取締役総務部長 山本正樹)

電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労自殺し、労災認定されたことに端を発した電通の違法残業事件から「働き改革」が日本社会を語るキーワードの一つになっている。そして、今国会では「働き改革」や「生産性革命」に関連する法案が審議されているが、その法案の根拠の一つとされた裁量労働制データが厚生労働省によって捏造されたことが次々と明らかになり、大問題となっている。
そもそもこの議論は2013年6月の日本再興戦略会議において企画業務型裁量労働制を始め、労働時間制について、早急に実態調査・分析を実施し、労働政策審議会で検討を開始するということで始まったものである。たしかに当時は、アベノミクスの三本の矢という言葉がマスコミで持て囃され、日本の成長戦略を進めるべきだという機運が盛り上がっていたことも事実である。もしかすると、そういう空気が今回、明らかになったデータ捏造という、厚生労働省の忖度を招いた可能性も否定できないところだ。
この問題の本質は、名目GDPの成長がほとんどない状況下で、労働生産性を上げようとすると、どういうことが求められるかということにある。そもそも労働生産性は、<GDP(国民総生産:1年に作り出す付加価値の合計)>を<就業者数×労働時間>で割ったものである。要するに労働生産性を上げるには、分母を小さくするか、分子を大きくするか、どちらかしかない。この「生産性革命」の基本となっているのは、いわゆる「働き方改革」で、残業時間規制とともに高度プロフェショナルという残業代ゼロの裁量労働制を導入することにある。つまり、現在言われている「働き方改革」は、分母を小さくすることで生産性を上げようとしているわけである。簡単に言えば残業時間を減らし、能力と成果に応じて働く裁量労働制を入れれば、あくまでも表面上であるが、労働時間を減らすことができ、前述の分母を小さくし、労働生産性を上げることができるだろうというものである。考えてみれば、サービス産業を中心に低賃金の非正規雇用が増加しているが、このことは労働コストを下げる効果はあっても、労働生産性を上げているわけではない。つまり、失われた20年を経て、GDPの成長が低迷しているなかで統計上の労働生産性を上げるために分母を小さくすることは、多くの識者が批判するように合法的ブラック企業がはびこることにも繋がりかねない危険性を秘めている。提示したグラフを見ていただければ、わかるように日本の名目GDPは、1997年からほとんど増えていない。その代わりに伸びているのが財政赤字である。つまり、財政赤字を出すことによって未来の需要を先食いしながら何とかバブル崩壊後、現状維持をはかってきたのが日本経済の現実だということである。
そうして考えてみると、今、求められているのは、分子のGDPを本当に伸ばす成長戦略だと言うことは明らかだろう。しかしながら、日本においては世界的に目覚しい勢いで進む代替エネルギーへの転換も原発再稼動に拘るあまり大幅に遅れ、IT産業であるグーグル等が主導する自動運転システムもいまだに自動車メーカーがその担い手になっている。また、世界的に進もうとしている電気自動車への転換に対してもいまだにコストの高い水素ガスステーションを推進している不可思議な状況にある。また、鳴り物入りのリニア新幹線もこの省エネ時代に逆行する従来新幹線の3倍の電気が必要とされる古い技術である。311以降、世界は加速度を付けて変わり始めているのに、日本だけが311以前の冷戦時代に回帰しようとしているのはあまりに時代錯誤である。今、求められているのは小手先の「働き方改革」ではなく、未来を切り拓く「真のリーダーシップ」である。
(取締役総務部長 山本正樹)

働き改革の本末転倒

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