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東三河でも想定外の豪雨に備えよう

想定最大規模の豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(豊橋河川事務所提供
想定最大規模の豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(豊橋河川事務所提供

 200人以上の死者を出した西日本豪雨では、「数十年に1度」という最大級の警戒を促す大雨特別警報が11府県に出ていながら避難に結びつかず、多くの命が失われた。東三河平野部は過去にも洪水を繰り返してきた歴史を持つ一級河川「豊川」が縦断する。今後、この地域でも想像をはるかに超える豪雨が懸念され、情報提供の在り方、受け手側の避難行動を考え直す必要がある。
 豊川には古くから、水が堤防を越える越水や堤防決壊を防ぐため、左岸4か所に「霞堤」と呼ばれる不連続な堤防が設けられており、あらかじめ開けてある部分から一時的に水を逃がすことで上下流の水位上昇を防いできた。
 国土交通省は2025年度までに、霞堤のある豊川市金沢、豊橋市賀茂・下条・牛川(閉鎖予定)の4カ所に小堤を整備。加えて設楽ダムの完成などで、昭和40年代から2013(平成25)年までに発生したおよそ20洪水中18洪水まで解消できるという。
 安全度は着実に高まる一方で、市民の洪水への危機意識が低下し、避難行動につながらないという懸念もある。
 西日本豪雨では、6月28日~7月8日までの総降水量が四国地方で1800㍉、東海地方1200㍉を超えるなど、多くの地域で観測記録を更新。7月の月降水量平年値の2~4倍となった場所もあり、自然の猛威を見せつけた。被災地では、あっという間に自宅が浸水し、気が付いたときには外へ逃げられず、屋根に上り、救助を待つ人もいた。
 設楽町段戸山に発する豊川は、流路延長が短い上、山間部の地盤が固く雨水が地中にしみ込みにくいため、上流で降った雨はそのまま下流へと一気に到達する。洪水情報を出す基準観測所の石田水位観測所(新城市)から豊川放水路の分岐地点となる放水路第1(豊川市)までの洪水の到達は2時間ほどしかなく、早めの情報収集を心掛ける必要がある。
 東三河に「千年に1度」クラスの大雨が降ったらどうなるか―。1日の総雨量600㍉以上を想定した豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(想定最大規模)を、豊橋河川事務所がホームページ(HP)で公開している。今回の豪雨でも、高知県安芸郡で24時間降水量が約700㍉を記録しており、この想定は他人事ではない。最大で水深20㍍の被害が出ると予測。沿岸部の広い範囲で家屋が流失・倒壊の恐れがあるとされている。
 この想定を基に、豊川市は昨年度、洪水ハザードマップを作り、浸水想定区域の住人らに配布。豊橋市も、梅田川や柳生川などの浸水想定を含めたハザードマップを計画的に作成していくという。
 現在、避難に関する情報は防災無線やラジオ、メールで自治体が随時発信するほか、昨年5月からは配信対象エリアの携帯電話やスマートフォンに、豊川の水位が上昇し、氾濫の恐れがあるときや氾濫した場合に緊急速報メールが配信される。
 さらに昨年度から豊橋河川事務所のHPでは、各霞堤地区の情報を一元化し、状況をリアルタイムで配信。各地区に設置するカメラの映像や今年度つける簡易水位計の値なども一目で分かるようになる。
 今回の豪雨の影響で国や県が管理する22河川で堤防が決壊した。気象庁は早い段階で大雨への警戒を呼び掛けたが、被災地では情報が適切な避難につながらなかった。スマートフォンなど情報収集手段を持たない高齢者が多く犠牲となり、情報提供の在り方について考えなければならない。 
 豊橋市では、災害が発生した際に自らで避難することが困難な要支援者や障害者らの台帳登録を進め、地域住民で支え合う仕組みづくりにも取り組む。
 まずは住民側も浸水想定を知り、自ら避難を判断できる情報収集が不可欠で、豊橋市防災危機管理課は「待つのではなく、しっかり自分で災害情報を取りにいってほしい」と呼び掛けている。
(飯塚雪)

 200人以上の死者を出した西日本豪雨では、「数十年に1度」という最大級の警戒を促す大雨特別警報が11府県に出ていながら避難に結びつかず、多くの命が失われた。東三河平野部は過去にも洪水を繰り返してきた歴史を持つ一級河川「豊川」が縦断する。今後、この地域でも想像をはるかに超える豪雨が懸念され、情報提供の在り方、受け手側の避難行動を考え直す必要がある。
 豊川には古くから、水が堤防を越える越水や堤防決壊を防ぐため、左岸4か所に「霞堤」と呼ばれる不連続な堤防が設けられており、あらかじめ開けてある部分から一時的に水を逃がすことで上下流の水位上昇を防いできた。
 国土交通省は2025年度までに、霞堤のある豊川市金沢、豊橋市賀茂・下条・牛川(閉鎖予定)の4カ所に小堤を整備。加えて設楽ダムの完成などで、昭和40年代から2013(平成25)年までに発生したおよそ20洪水中18洪水まで解消できるという。
 安全度は着実に高まる一方で、市民の洪水への危機意識が低下し、避難行動につながらないという懸念もある。
 西日本豪雨では、6月28日~7月8日までの総降水量が四国地方で1800㍉、東海地方1200㍉を超えるなど、多くの地域で観測記録を更新。7月の月降水量平年値の2~4倍となった場所もあり、自然の猛威を見せつけた。被災地では、あっという間に自宅が浸水し、気が付いたときには外へ逃げられず、屋根に上り、救助を待つ人もいた。
 設楽町段戸山に発する豊川は、流路延長が短い上、山間部の地盤が固く雨水が地中にしみ込みにくいため、上流で降った雨はそのまま下流へと一気に到達する。洪水情報を出す基準観測所の石田水位観測所(新城市)から豊川放水路の分岐地点となる放水路第1(豊川市)までの洪水の到達は2時間ほどしかなく、早めの情報収集を心掛ける必要がある。
 東三河に「千年に1度」クラスの大雨が降ったらどうなるか―。1日の総雨量600㍉以上を想定した豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(想定最大規模)を、豊橋河川事務所がホームページ(HP)で公開している。今回の豪雨でも、高知県安芸郡で24時間降水量が約700㍉を記録しており、この想定は他人事ではない。最大で水深20㍍の被害が出ると予測。沿岸部の広い範囲で家屋が流失・倒壊の恐れがあるとされている。
 この想定を基に、豊川市は昨年度、洪水ハザードマップを作り、浸水想定区域の住人らに配布。豊橋市も、梅田川や柳生川などの浸水想定を含めたハザードマップを計画的に作成していくという。
 現在、避難に関する情報は防災無線やラジオ、メールで自治体が随時発信するほか、昨年5月からは配信対象エリアの携帯電話やスマートフォンに、豊川の水位が上昇し、氾濫の恐れがあるときや氾濫した場合に緊急速報メールが配信される。
 さらに昨年度から豊橋河川事務所のHPでは、各霞堤地区の情報を一元化し、状況をリアルタイムで配信。各地区に設置するカメラの映像や今年度つける簡易水位計の値なども一目で分かるようになる。
 今回の豪雨の影響で国や県が管理する22河川で堤防が決壊した。気象庁は早い段階で大雨への警戒を呼び掛けたが、被災地では情報が適切な避難につながらなかった。スマートフォンなど情報収集手段を持たない高齢者が多く犠牲となり、情報提供の在り方について考えなければならない。 
 豊橋市では、災害が発生した際に自らで避難することが困難な要支援者や障害者らの台帳登録を進め、地域住民で支え合う仕組みづくりにも取り組む。
 まずは住民側も浸水想定を知り、自ら避難を判断できる情報収集が不可欠で、豊橋市防災危機管理課は「待つのではなく、しっかり自分で災害情報を取りにいってほしい」と呼び掛けている。
(飯塚雪)

想定最大規模の豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(豊橋河川事務所提供
想定最大規模の豊川・豊川放水路洪水浸水想定区域図(豊橋河川事務所提供

カテゴリー:社会・経済

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