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豊橋っ子に愛された「甘党トキワ」店じまいへ

店を切り盛りしてきたトキワの名物店主・加藤さん夫婦=豊橋市大手町で
店を切り盛りしてきたトキワの名物店主・加藤さん夫婦=豊橋市大手町で
閉店を知って訪れたトキワファンら=同
閉店を知って訪れたトキワファンら=同

 多くの豊橋っ子に愛され、新聞やテレビでもおなじみの老舗甘味処「甘党トキワ」(豊橋市大手町)が、店じまいすることになった。先代から店を受け継いできた店主の加藤寿一さん(82)清子さん(79)夫妻が一貫してきた手作りの味。大判焼にソフトクリーム、クリーム金時(かき氷)―。たくさんの人がその味に魅了された。店は今、トキワを惜しむ大勢の人たちが次々と訪れている。

 閉店はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で瞬く間に広がった。この3連休、近隣住民や学生、聞きつけて県外から帰省した人ら客足は途切れることがない。
 子どもの頃に自転車で通っていた50・60代の女性らは「もう泣けてきちゃって」と目を潤ます。「豊橋市民にとって究極のソウルフードでした」と誇らしげ。
 近所に住む菰田拓馬さん(19)も幼稚園から通い続ける。「おじいちゃんが『また来てくれたのか』って声を掛けてくれるのがうれしかった。なくなるのは本当に寂しい」と声を落とす。
 閉店は、店主の加藤さんにとっても苦渋の決断だった。自慢のあんこ作りが、難しくなったからだ。小豆と水を入れると重さ8㌔にもなる鍋「寸胴(ずんどう)」。ひざを痛め、これを運ぶとなると再発が心配される。
 「私の代で店を閉めるのは…」との気持ちがあったが、清子さんらとも相談して決断した。
 加藤さんによると、幕末の頃に創業したとされ、定かではないが、初代はらくがんを作っていたと言い、加藤さんが5代目。前身は和菓子店で「杉田屋」だった。1945(昭和20)年の豊橋空襲で焼けたが、バラック(急造の建物)で再開。戦後間もなく「トキワ」に改名した。「アイスキャンディーなどを売っていたが、冬に何かということで始めたのが、大判焼の始まりとなる『ともえ焼』」だった。
 加藤さんが引き継いだのは1970年代初め、36歳のとき。以来、50年近くにわたり、清子さんと一緒に価格も変えることなく、手作りのトキワの味を届ける。
 効率化が進む時代に、手作りにこだわるのは「うちは地元のお客さんばかり。きちんとした味、変わらない味を作り続けることが大事」という信念から。常連客の伊藤達也さん(38)は「手間を感じる味。一級品」とほれこんでいる。
 店をたたむのは9月中の予定で、閉店を惜しむファンらの声に「嫌な顔して終わるのも変。最後は笑顔で終わろう」と店を手伝う次男の善朗さん(43)。清子さんは「長い間、皆さんにお世話になりました」と感謝する。
 次々とやって来るトキワファンに、加藤さんも「いつも9月は暇なのに、ありがたいですね」。昔と変わらない笑顔で迎えている。
(中村晋也、飯塚雪)

 多くの豊橋っ子に愛され、新聞やテレビでもおなじみの老舗甘味処「甘党トキワ」(豊橋市大手町)が、店じまいすることになった。先代から店を受け継いできた店主の加藤寿一さん(82)清子さん(79)夫妻が一貫してきた手作りの味。大判焼にソフトクリーム、クリーム金時(かき氷)―。たくさんの人がその味に魅了された。店は今、トキワを惜しむ大勢の人たちが次々と訪れている。

 閉店はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で瞬く間に広がった。この3連休、近隣住民や学生、聞きつけて県外から帰省した人ら客足は途切れることがない。
 子どもの頃に自転車で通っていた50・60代の女性らは「もう泣けてきちゃって」と目を潤ます。「豊橋市民にとって究極のソウルフードでした」と誇らしげ。
 近所に住む菰田拓馬さん(19)も幼稚園から通い続ける。「おじいちゃんが『また来てくれたのか』って声を掛けてくれるのがうれしかった。なくなるのは本当に寂しい」と声を落とす。
 閉店は、店主の加藤さんにとっても苦渋の決断だった。自慢のあんこ作りが、難しくなったからだ。小豆と水を入れると重さ8㌔にもなる鍋「寸胴(ずんどう)」。ひざを痛め、これを運ぶとなると再発が心配される。
 「私の代で店を閉めるのは…」との気持ちがあったが、清子さんらとも相談して決断した。
 加藤さんによると、幕末の頃に創業したとされ、定かではないが、初代はらくがんを作っていたと言い、加藤さんが5代目。前身は和菓子店で「杉田屋」だった。1945(昭和20)年の豊橋空襲で焼けたが、バラック(急造の建物)で再開。戦後間もなく「トキワ」に改名した。「アイスキャンディーなどを売っていたが、冬に何かということで始めたのが、大判焼の始まりとなる『ともえ焼』」だった。
 加藤さんが引き継いだのは1970年代初め、36歳のとき。以来、50年近くにわたり、清子さんと一緒に価格も変えることなく、手作りのトキワの味を届ける。
 効率化が進む時代に、手作りにこだわるのは「うちは地元のお客さんばかり。きちんとした味、変わらない味を作り続けることが大事」という信念から。常連客の伊藤達也さん(38)は「手間を感じる味。一級品」とほれこんでいる。
 店をたたむのは9月中の予定で、閉店を惜しむファンらの声に「嫌な顔して終わるのも変。最後は笑顔で終わろう」と店を手伝う次男の善朗さん(43)。清子さんは「長い間、皆さんにお世話になりました」と感謝する。
 次々とやって来るトキワファンに、加藤さんも「いつも9月は暇なのに、ありがたいですね」。昔と変わらない笑顔で迎えている。
(中村晋也、飯塚雪)

店を切り盛りしてきたトキワの名物店主・加藤さん夫婦=豊橋市大手町で
店を切り盛りしてきたトキワの名物店主・加藤さん夫婦=豊橋市大手町で
閉店を知って訪れたトキワファンら=同
閉店を知って訪れたトキワファンら=同

カテゴリー:社会・経済

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