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模索続く豊橋刑務支所㊤

カテゴリー:特集

女子収容施設に転用された豊橋刑務支所(写真は一部加工しています)
女子収容施設に転用された豊橋刑務支所(写真は一部加工しています)

女性刑務官の育成急務   

 全国的な女子受刑者の過剰収容を緩和するため、豊橋市今橋町の豊橋刑務支所が女子収容施設となり2年。高齢化や精神疾患、さまざまな障害など女子受刑者が抱える問題は多様化する一方で、それに対応する女性刑務官は若年化や早期離職が進む。受刑者の更生と若手刑務官の育成、全国で最も新しい女子収容施設としてスタートした豊橋刑務支所はその間で施設の在り方を模索する。

 スキンケア用品やファッション誌が並ぶ居室。豊橋刑務支所が女子施設に生まれ変わったことを改めて実感する。
 2017(平成29)年4月、これまで初犯など比較的犯罪傾向が進んでいない男子受刑者を収容していた豊橋刑務支所は国内11番目、名古屋矯正管区内の東海と北陸の6県で笠松刑務所(岐阜県)に次ぐ2番目の女子施設として、受刑者の受け入れを始めた。2月末現在、女子受刑者173人(定員266人)と未決勾留中の男子被告人29人(同72人)が生活している。
 一方、86人いる刑務官のうち女性は56人で、7割が採用から5年以内の若手。若年化は女性刑務官を取り巻く問題の一つだ。現実とのギャップや結婚、育児、家事への専念など事情はさまざまだが、全国的にみると3年で4割ほどの人が辞めるため、次世代へ継承されるべきノウハウが途絶えてしまう問題が生じている。豊橋刑務支所は全国の女子施設以上に若手が多い。対する受刑者の平均年齢は50歳に近い。

 「何度も服役している受刑者の方が刑務官の仕事を知っているので、指導するときには、あげ足を取られないよう言葉に注意しています」と話すのは、1年目の新人刑務官(19)。 
 高校時代、剣道部の講師が刑務官だった。「人の更生に興味があった」と言い、その道を志した。基本的に24時間体制の刑務官の仕事は、夜勤がある交代制勤務で、学生時代の友人たちと休みは合わない。社会に役立つ仕事とはいえ、気を張り続ける過酷な環境の中で何がモチベーションになるのか。「受刑者の悪いところばかりに目を向けるのではなく、いいところも見る。整理整頓ができるようになった、そんな些細なことも受刑者の意識が変わったと感じられるので、やりがいにつながっています」と力を込める。まだ着慣れない制服に身を包み、ルーキーたちは日々、母親や祖母ほどの年齢の受刑者と向き合う。

 国内の女子受刑者の数は2011(平成23)年からようやく減少に転じたものの、男子受刑者と比べ、減少率は鈍く、全受刑者における女子の比率は高まっている。法務省は、収容率が100%を超える施設があるなど、全国で慢性化していた過剰収容を緩和するため豊橋刑務支所を転用した。
 豊橋刑務支所の収容率は2月末で65%。全国平均は75%(男子収容施設63%)で、依然として高率収容が続いている。収容率は早ければ今年度中にも他の施設と同程度になると予想され、若手の「育成」と「定着率の向上」は支所が掲げる目標の一つだ。 
 女子刑務所は、入所回数や刑期などにより収容施設が分かれる男子とは違い、初犯や累犯、刑期が異なる受刑者たちが一緒に生活する。受刑者それぞれが抱える問題へのアプローチ方法は、マニュアルでは網羅しきれない部分がある。豊橋刑務支所では月2回勉強会を開き、若手が支所長ら幹部職員と語らう場を設ける。一人ひとりにより目を向けるため、先輩が指導・相談役となり新人をサポートするメンター制度も導入し、相談しやすい雰囲気づくりに取り組む。全国でも珍しい未決勾留中の男子被告人を収容する施設のため、ベテランの男性職員が多く勤務している点も、若手が多い女性刑務官の支えになっているという。
 受刑者の高齢化が進み課題となっている女性刑務官の介護負担は、地域の介護福祉士10人が交替で訪れ、受刑者の入浴などを介助する。今後、高齢受刑者を受刑者が介助することも視野に、今年度から出所後の就労支援を目的とした職業訓練の一環で介護福祉科も設ける予定だ。

 若手が多く中堅が少ない構図を支えるのが、たくましいママ刑務官たち。「今の子の方が大変。精神疾患や処方薬に依存している受刑者も多く、刑務官には多様な対応が求められる」と塀の中の変化を語るのは、この道30年近くになるベテランの女性刑務官(46)。産休と育休制度を使い、19歳と16歳の娘2人を女手一つで育てながら仕事を続けてきた。
 2人を出産したのは、前の赴任地・笠松刑務所に勤めていたとき。結婚を機に辞める人が多かった時代に、制度が始まったばかりの産休と育休は取りづらく、先輩から嫌味を言われたこともある。だが、「うるさいこのやろうって(笑)。復帰して仕事をしていればそのうち認められると思った」と振り返る。
 子どもが熱を出せばママ刑務官同士で声を掛け、助け合ってきた。長女が長期で入院した際には「仕事の代わりはやってあげられるけど、赤ちゃんの代わりはいないから」と上司が協力を買って出てくれた。
 夫とは長女が小学校へあがる前に離婚。早朝5時半に家を出て、夜勤の日は実家に2人を預ける日々。幼稚園行事や授業参観には参加できなかった。
 それでも仕事を続けてこられたのは「厳しい仕事だし、忙しくてつらいこともある。でも、受刑者からもう二度と戻ってきませんと言われると、この仕事をしていてよかったと思える。楽しいこともうれしいこともあるんです」。
 仕事と子育ての両立を可能にしたママ刑務官たちが、現場を引っ張る。
(飯塚雪)

女性刑務官の育成急務   

 全国的な女子受刑者の過剰収容を緩和するため、豊橋市今橋町の豊橋刑務支所が女子収容施設となり2年。高齢化や精神疾患、さまざまな障害など女子受刑者が抱える問題は多様化する一方で、それに対応する女性刑務官は若年化や早期離職が進む。受刑者の更生と若手刑務官の育成、全国で最も新しい女子収容施設としてスタートした豊橋刑務支所はその間で施設の在り方を模索する。

 スキンケア用品やファッション誌が並ぶ居室。豊橋刑務支所が女子施設に生まれ変わったことを改めて実感する。
 2017(平成29)年4月、これまで初犯など比較的犯罪傾向が進んでいない男子受刑者を収容していた豊橋刑務支所は国内11番目、名古屋矯正管区内の東海と北陸の6県で笠松刑務所(岐阜県)に次ぐ2番目の女子施設として、受刑者の受け入れを始めた。2月末現在、女子受刑者173人(定員266人)と未決勾留中の男子被告人29人(同72人)が生活している。
 一方、86人いる刑務官のうち女性は56人で、7割が採用から5年以内の若手。若年化は女性刑務官を取り巻く問題の一つだ。現実とのギャップや結婚、育児、家事への専念など事情はさまざまだが、全国的にみると3年で4割ほどの人が辞めるため、次世代へ継承されるべきノウハウが途絶えてしまう問題が生じている。豊橋刑務支所は全国の女子施設以上に若手が多い。対する受刑者の平均年齢は50歳に近い。

 「何度も服役している受刑者の方が刑務官の仕事を知っているので、指導するときには、あげ足を取られないよう言葉に注意しています」と話すのは、1年目の新人刑務官(19)。 
 高校時代、剣道部の講師が刑務官だった。「人の更生に興味があった」と言い、その道を志した。基本的に24時間体制の刑務官の仕事は、夜勤がある交代制勤務で、学生時代の友人たちと休みは合わない。社会に役立つ仕事とはいえ、気を張り続ける過酷な環境の中で何がモチベーションになるのか。「受刑者の悪いところばかりに目を向けるのではなく、いいところも見る。整理整頓ができるようになった、そんな些細なことも受刑者の意識が変わったと感じられるので、やりがいにつながっています」と力を込める。まだ着慣れない制服に身を包み、ルーキーたちは日々、母親や祖母ほどの年齢の受刑者と向き合う。

 国内の女子受刑者の数は2011(平成23)年からようやく減少に転じたものの、男子受刑者と比べ、減少率は鈍く、全受刑者における女子の比率は高まっている。法務省は、収容率が100%を超える施設があるなど、全国で慢性化していた過剰収容を緩和するため豊橋刑務支所を転用した。
 豊橋刑務支所の収容率は2月末で65%。全国平均は75%(男子収容施設63%)で、依然として高率収容が続いている。収容率は早ければ今年度中にも他の施設と同程度になると予想され、若手の「育成」と「定着率の向上」は支所が掲げる目標の一つだ。 
 女子刑務所は、入所回数や刑期などにより収容施設が分かれる男子とは違い、初犯や累犯、刑期が異なる受刑者たちが一緒に生活する。受刑者それぞれが抱える問題へのアプローチ方法は、マニュアルでは網羅しきれない部分がある。豊橋刑務支所では月2回勉強会を開き、若手が支所長ら幹部職員と語らう場を設ける。一人ひとりにより目を向けるため、先輩が指導・相談役となり新人をサポートするメンター制度も導入し、相談しやすい雰囲気づくりに取り組む。全国でも珍しい未決勾留中の男子被告人を収容する施設のため、ベテランの男性職員が多く勤務している点も、若手が多い女性刑務官の支えになっているという。
 受刑者の高齢化が進み課題となっている女性刑務官の介護負担は、地域の介護福祉士10人が交替で訪れ、受刑者の入浴などを介助する。今後、高齢受刑者を受刑者が介助することも視野に、今年度から出所後の就労支援を目的とした職業訓練の一環で介護福祉科も設ける予定だ。

 若手が多く中堅が少ない構図を支えるのが、たくましいママ刑務官たち。「今の子の方が大変。精神疾患や処方薬に依存している受刑者も多く、刑務官には多様な対応が求められる」と塀の中の変化を語るのは、この道30年近くになるベテランの女性刑務官(46)。産休と育休制度を使い、19歳と16歳の娘2人を女手一つで育てながら仕事を続けてきた。
 2人を出産したのは、前の赴任地・笠松刑務所に勤めていたとき。結婚を機に辞める人が多かった時代に、制度が始まったばかりの産休と育休は取りづらく、先輩から嫌味を言われたこともある。だが、「うるさいこのやろうって(笑)。復帰して仕事をしていればそのうち認められると思った」と振り返る。
 子どもが熱を出せばママ刑務官同士で声を掛け、助け合ってきた。長女が長期で入院した際には「仕事の代わりはやってあげられるけど、赤ちゃんの代わりはいないから」と上司が協力を買って出てくれた。
 夫とは長女が小学校へあがる前に離婚。早朝5時半に家を出て、夜勤の日は実家に2人を預ける日々。幼稚園行事や授業参観には参加できなかった。
 それでも仕事を続けてこられたのは「厳しい仕事だし、忙しくてつらいこともある。でも、受刑者からもう二度と戻ってきませんと言われると、この仕事をしていてよかったと思える。楽しいこともうれしいこともあるんです」。
 仕事と子育ての両立を可能にしたママ刑務官たちが、現場を引っ張る。
(飯塚雪)

女子収容施設に転用された豊橋刑務支所(写真は一部加工しています)
女子収容施設に転用された豊橋刑務支所(写真は一部加工しています)

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