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模索続く豊橋刑務支所㊦

カテゴリー:特集

自助グループに入り薬物との決別を誓うリサさん=豊橋刑務支所で(いずれの写真も一部加工しています)
自助グループに入り薬物との決別を誓うリサさん=豊橋刑務支所で(いずれの写真も一部加工しています)
キョウコさんは車イスに座りながらもくもくと軽作業に励む=同
キョウコさんは車イスに座りながらもくもくと軽作業に励む=同

覚せい剤など再犯多く

 「一度クスリを使ってしまっても、投げやりにならず、今からでもやめられると気持ちを切り替えたい」「依存症の専門病院に行ったら、通報されないか不安」―。覚せい剤取締法違反などで服役1~6度目の女子受刑者6人が円になり、薬物使用の動機や使いたくなった時の対処法などを一人ひとりが発表していく。男性教育専門官(35)が「使ってしまったらどうする?」と穏やかな口調で問いかけると、受刑者は時折、笑い声を上げながら互いにアドバイスを送り合う。
 豊橋刑務支所で服役する女子受刑者のうち、最も多いのが覚せい剤取締法違反だ。続く窃盗と併せて8割を超える。共に繰り返す人が多いため、両罪は女子受刑者の収容率を押し上げる一因となっている。
 豊橋刑務支所では刑期や特性により、薬物の専門プログラムを受講させており、1組5~6人が1回1時間のグループワークを計12回3カ月間受ける。
 参加しているリサさん(38)=仮名=は、覚せい剤取締法違反で懲役3年、刑務所に入るのは3回目。付き合って9年になる男とともに逮捕された。
 中学2年のとき、先輩たちが使っていた覚せい剤に興味を覚え吸引。彼氏の影響でより効き目がある注射を打つようになった。「初めて注射したとき、髪の毛が逆立つような、何㌔も走ったような高揚感を覚えました」。22歳で再び彼氏をきっかけに薬物の世界へと舞い戻り、「ダイエットのため」という理由で使い続けた。
 プログラムを受け、覚せい剤を使う引き金が異性関係だと認めることができた。出所後は、服役中の男と2人で自助グループに入り、今度こそ薬物との決別を誓う。依存症を自覚し、自助グループに入ろうと思えたことが更生への第一歩となる。 

 高齢化の波は、新しい施設にも否応なしに押し寄せてくる。収容する受刑者のうち11%が65歳以上の高齢者で、最高齢は84歳だ。
 午前6時40分に起床し、居室で朝食を終えた受刑者たちは各工場へ移動し、一日中、子ども用の甚平やカーテンなどの洋裁、パチンコ台の解体など刑務作業に従事する。薄ピンク色の作業服を着て2列に歩く受刑者たち。工場のある3階まで階段を登る途中、最後尾にいた高齢の受刑者が列から遅れ出す。手すりにつかまりながらゆっくりと足を上げる後ろを、そっと刑務官がついて歩いていく。
 高齢者や障害者が軽作業をする工場内で、車いすに座りながら厚紙を折り、額縁にはめる三角形のケースを次々に作っていくキョウコさん(76)=仮名。その手には深くしわが刻まれ、ひどく乾燥している。
 柔和な笑みをたたえるキョウコさんは、一見かわいいおばあちゃんに見える。何度も窃盗を繰り返し、現在9回目の服役中だとは思えない。
 「たまたまの1回がエスカレートしました」。30代のとき、無施錠の家の中に置かれた財布が見え、気がつくと盗んでいたという。幼い息子を残して服役、その後、夫とは離婚した。「人さまの役に立つ仕事に就くのが夢だった」と40代から本格的に難病患者の生活支援など介護の職に就いた。一方で、パチンコや競艇といったギャンブルによる借金の返済に困り、病院などで置き引きを重ねた。「財布を見たら抑えられない。ワクワクしてくる」。無邪気に語る言葉が刑務官もいる部屋にパラパラと落ちる。
 40代になった息子とは20年以上会っていない。「数カ月後に京都の更生保護施設が身元引受人になって仮出所する予定です。もう絶対にやりません」と固く誓うが、取材中に質問とは違う答えを繰り返すキョウコさんに迫る「老い」の影が見え、出所後に歩む道の険しさに胸が詰まる。 
 罪を繰り返すうちに、高齢になった受刑者は、家族も帰る場所も失い、社会から孤立し、生活に困窮して再び戻ってくることも少なくない。
 豊橋刑務支所では高齢者や障害のある受刑者の社会復帰に向け、社会福祉士から福祉サービスの活用方法を学ぶプログラムがある。また、地元のハローワークと連携し、雇用ニーズを把握する中で、軽度の知的・身体障害者には履歴書の書き方の指導も行っている。全国の保護観察所とも連絡を密にとり、満期出所者が生活に困窮しないようセーフティーネットは幾重にも張る。
 それでも罪を重ねてしまう女性たち。依然として続く高率収容は、受刑者を支える社会のひずみを物語る。三井健二支所長は「更生のためには、社会に定着できる生活環境が必要で、それがいかに良好で質が高いものであるかが大事。衣食住の3つをわれわれは整えることができないのがもどかしい。だが、地域が受け入れをシャットアウトすれば、また別の場所で犯罪を起こすかもしれない。刑務所でどれだけ反省を導いても、すべて改善するわけではない。未完成な人間を社会全体が補うのは大事だと思う」と話す。女子施設となり3度目の春が訪れた塀の中で、受刑者たちの償いの日々は続く。
(飯塚雪)

覚せい剤など再犯多く

 「一度クスリを使ってしまっても、投げやりにならず、今からでもやめられると気持ちを切り替えたい」「依存症の専門病院に行ったら、通報されないか不安」―。覚せい剤取締法違反などで服役1~6度目の女子受刑者6人が円になり、薬物使用の動機や使いたくなった時の対処法などを一人ひとりが発表していく。男性教育専門官(35)が「使ってしまったらどうする?」と穏やかな口調で問いかけると、受刑者は時折、笑い声を上げながら互いにアドバイスを送り合う。
 豊橋刑務支所で服役する女子受刑者のうち、最も多いのが覚せい剤取締法違反だ。続く窃盗と併せて8割を超える。共に繰り返す人が多いため、両罪は女子受刑者の収容率を押し上げる一因となっている。
 豊橋刑務支所では刑期や特性により、薬物の専門プログラムを受講させており、1組5~6人が1回1時間のグループワークを計12回3カ月間受ける。
 参加しているリサさん(38)=仮名=は、覚せい剤取締法違反で懲役3年、刑務所に入るのは3回目。付き合って9年になる男とともに逮捕された。
 中学2年のとき、先輩たちが使っていた覚せい剤に興味を覚え吸引。彼氏の影響でより効き目がある注射を打つようになった。「初めて注射したとき、髪の毛が逆立つような、何㌔も走ったような高揚感を覚えました」。22歳で再び彼氏をきっかけに薬物の世界へと舞い戻り、「ダイエットのため」という理由で使い続けた。
 プログラムを受け、覚せい剤を使う引き金が異性関係だと認めることができた。出所後は、服役中の男と2人で自助グループに入り、今度こそ薬物との決別を誓う。依存症を自覚し、自助グループに入ろうと思えたことが更生への第一歩となる。 

 高齢化の波は、新しい施設にも否応なしに押し寄せてくる。収容する受刑者のうち11%が65歳以上の高齢者で、最高齢は84歳だ。
 午前6時40分に起床し、居室で朝食を終えた受刑者たちは各工場へ移動し、一日中、子ども用の甚平やカーテンなどの洋裁、パチンコ台の解体など刑務作業に従事する。薄ピンク色の作業服を着て2列に歩く受刑者たち。工場のある3階まで階段を登る途中、最後尾にいた高齢の受刑者が列から遅れ出す。手すりにつかまりながらゆっくりと足を上げる後ろを、そっと刑務官がついて歩いていく。
 高齢者や障害者が軽作業をする工場内で、車いすに座りながら厚紙を折り、額縁にはめる三角形のケースを次々に作っていくキョウコさん(76)=仮名。その手には深くしわが刻まれ、ひどく乾燥している。
 柔和な笑みをたたえるキョウコさんは、一見かわいいおばあちゃんに見える。何度も窃盗を繰り返し、現在9回目の服役中だとは思えない。
 「たまたまの1回がエスカレートしました」。30代のとき、無施錠の家の中に置かれた財布が見え、気がつくと盗んでいたという。幼い息子を残して服役、その後、夫とは離婚した。「人さまの役に立つ仕事に就くのが夢だった」と40代から本格的に難病患者の生活支援など介護の職に就いた。一方で、パチンコや競艇といったギャンブルによる借金の返済に困り、病院などで置き引きを重ねた。「財布を見たら抑えられない。ワクワクしてくる」。無邪気に語る言葉が刑務官もいる部屋にパラパラと落ちる。
 40代になった息子とは20年以上会っていない。「数カ月後に京都の更生保護施設が身元引受人になって仮出所する予定です。もう絶対にやりません」と固く誓うが、取材中に質問とは違う答えを繰り返すキョウコさんに迫る「老い」の影が見え、出所後に歩む道の険しさに胸が詰まる。 
 罪を繰り返すうちに、高齢になった受刑者は、家族も帰る場所も失い、社会から孤立し、生活に困窮して再び戻ってくることも少なくない。
 豊橋刑務支所では高齢者や障害のある受刑者の社会復帰に向け、社会福祉士から福祉サービスの活用方法を学ぶプログラムがある。また、地元のハローワークと連携し、雇用ニーズを把握する中で、軽度の知的・身体障害者には履歴書の書き方の指導も行っている。全国の保護観察所とも連絡を密にとり、満期出所者が生活に困窮しないようセーフティーネットは幾重にも張る。
 それでも罪を重ねてしまう女性たち。依然として続く高率収容は、受刑者を支える社会のひずみを物語る。三井健二支所長は「更生のためには、社会に定着できる生活環境が必要で、それがいかに良好で質が高いものであるかが大事。衣食住の3つをわれわれは整えることができないのがもどかしい。だが、地域が受け入れをシャットアウトすれば、また別の場所で犯罪を起こすかもしれない。刑務所でどれだけ反省を導いても、すべて改善するわけではない。未完成な人間を社会全体が補うのは大事だと思う」と話す。女子施設となり3度目の春が訪れた塀の中で、受刑者たちの償いの日々は続く。
(飯塚雪)

自助グループに入り薬物との決別を誓うリサさん=豊橋刑務支所で(いずれの写真も一部加工しています)
自助グループに入り薬物との決別を誓うリサさん=豊橋刑務支所で(いずれの写真も一部加工しています)
キョウコさんは車イスに座りながらもくもくと軽作業に励む=同
キョウコさんは車イスに座りながらもくもくと軽作業に励む=同

カテゴリー:特集

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