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豚コレラ最前線(下)

豚肉を手に取る買い物客=アピタ向山店で
豚肉を手に取る買い物客=アピタ向山店で

遅すぎる国と県の対応

 豚コレラの感染が関東にまで広がる中、田原市の養豚農家らは日常を取り戻しつつある。感染農家の豚舎にも豚の姿が見え始め、移動制限のかかっていた農家も出荷を再開した。しかし、全てが元通りになる日はまだ先になりそうだ。
 田原市内で養豚業を営む鈴木辰也・JA愛知みなみ養豚部会長は「3㌔圏内に入っていた豚舎の移動制限が6月に解除され、今は通常通り出荷できている」とする一方で「在庫が多い状態。出荷に制限がかかっていたため、密集状態での飼育が続き、発育不良の豚が多くいる。ふんの量も多くなり、処理が大変」と苦労を明かした。
 鈴木部会長は「国と県の対応の遅さには怒りを通り越してあきれている。殺処分を余儀なくされた農家も含めて、まだ補償金を誰1人もらえていない。地元の若手農家がつくる渥美養豚研究会は、すでに昨年9月の時点で資金の拡充を県に要望している。ワクチンの判断についても遅すぎる」。怒りを露わにした。
 また別の田原市内の養豚農家は、ワクチン実施の決定が遅れたことについて「日本の養豚業は宮崎・鹿児島県が中心。豚肉を海外輸出する両県の養豚農家が非清浄国になることを嫌がってワクチン接種に反対していた。江藤農林大臣は宮崎県出身。忖度(そんたく)が働いたのでは」と疑うほど国への不信感をつのらせた。
 「両県は清浄地域ブランドとして売り出そうとしているそうだが、もうそんな段階ではない。早期に全国でのワクチン実施を求める」と語気を強めた。
 「田原ポーク」を取り扱うG・ファームの鈴木美仁社長は「ワクチン実施のニュースを聞いて、『やっとか』という感じ。春にイノシシが活動的になる前に、冬の時点で抑え込むべきだった」と指摘した。「獣医も気付かない程の弱毒性が原因。豚もイノシシも死ぬことがないため、ウイルスが拡散してしまう」
 また鈴木社長は、従業員について「一時期は周りの豚舎がどんどん感染していくため、従業員にプレッシャーがのしかかり、辞めたいと申し出る従業員が多数出た。精神的にやられてしまっていた」と振り返る。
 「私も豚コレラが出てからは心配で、社長業だけでなく朝5時半から農場へ出て従業員と一緒に出荷作業を手伝うようになった。今はだいぶ落ち着いてきた」
 さらに消費者の心理について鈴木社長は「豚コレラを気にする消費者はわずか数%しかいない。感染農家も前向きになって豚舎の清掃などを行っている。皆で豚肉を食べて応援してほしい」と訴えた。
 群馬県で感染が確認された翌日、アピタ向山店へ買い物に来ていた女性(61)は、豚肉のパックを買い物かごに入れながら「豚コレラ?全然気にしない。今夜は家族4人で豚しゃぶを食べます」と笑顔で話した。
 同店担当者は「『豚コレラは人に感染しません』というポスターは2か月前にはがしてしまった。いたずらにお客様の不安をあおるだけ」と語った。
 豚コレラに感染した豚が市場に流通することはなく、もし食べたとしても体に害はなく、ワクチン摂取も1997年までは全国で実施しており、それまでは皆が普通に食べていたわけで、日本が清浄国の認定を得たのも2015年だからつい最近のことで…。
 筆者も筆を置こう。いたずらに不安をあおるだけだ。
(木村裕貴)

遅すぎる国と県の対応

 豚コレラの感染が関東にまで広がる中、田原市の養豚農家らは日常を取り戻しつつある。感染農家の豚舎にも豚の姿が見え始め、移動制限のかかっていた農家も出荷を再開した。しかし、全てが元通りになる日はまだ先になりそうだ。
 田原市内で養豚業を営む鈴木辰也・JA愛知みなみ養豚部会長は「3㌔圏内に入っていた豚舎の移動制限が6月に解除され、今は通常通り出荷できている」とする一方で「在庫が多い状態。出荷に制限がかかっていたため、密集状態での飼育が続き、発育不良の豚が多くいる。ふんの量も多くなり、処理が大変」と苦労を明かした。
 鈴木部会長は「国と県の対応の遅さには怒りを通り越してあきれている。殺処分を余儀なくされた農家も含めて、まだ補償金を誰1人もらえていない。地元の若手農家がつくる渥美養豚研究会は、すでに昨年9月の時点で資金の拡充を県に要望している。ワクチンの判断についても遅すぎる」。怒りを露わにした。
 また別の田原市内の養豚農家は、ワクチン実施の決定が遅れたことについて「日本の養豚業は宮崎・鹿児島県が中心。豚肉を海外輸出する両県の養豚農家が非清浄国になることを嫌がってワクチン接種に反対していた。江藤農林大臣は宮崎県出身。忖度(そんたく)が働いたのでは」と疑うほど国への不信感をつのらせた。
 「両県は清浄地域ブランドとして売り出そうとしているそうだが、もうそんな段階ではない。早期に全国でのワクチン実施を求める」と語気を強めた。
 「田原ポーク」を取り扱うG・ファームの鈴木美仁社長は「ワクチン実施のニュースを聞いて、『やっとか』という感じ。春にイノシシが活動的になる前に、冬の時点で抑え込むべきだった」と指摘した。「獣医も気付かない程の弱毒性が原因。豚もイノシシも死ぬことがないため、ウイルスが拡散してしまう」
 また鈴木社長は、従業員について「一時期は周りの豚舎がどんどん感染していくため、従業員にプレッシャーがのしかかり、辞めたいと申し出る従業員が多数出た。精神的にやられてしまっていた」と振り返る。
 「私も豚コレラが出てからは心配で、社長業だけでなく朝5時半から農場へ出て従業員と一緒に出荷作業を手伝うようになった。今はだいぶ落ち着いてきた」
 さらに消費者の心理について鈴木社長は「豚コレラを気にする消費者はわずか数%しかいない。感染農家も前向きになって豚舎の清掃などを行っている。皆で豚肉を食べて応援してほしい」と訴えた。
 群馬県で感染が確認された翌日、アピタ向山店へ買い物に来ていた女性(61)は、豚肉のパックを買い物かごに入れながら「豚コレラ?全然気にしない。今夜は家族4人で豚しゃぶを食べます」と笑顔で話した。
 同店担当者は「『豚コレラは人に感染しません』というポスターは2か月前にはがしてしまった。いたずらにお客様の不安をあおるだけ」と語った。
 豚コレラに感染した豚が市場に流通することはなく、もし食べたとしても体に害はなく、ワクチン摂取も1997年までは全国で実施しており、それまでは皆が普通に食べていたわけで、日本が清浄国の認定を得たのも2015年だからつい最近のことで…。
 筆者も筆を置こう。いたずらに不安をあおるだけだ。
(木村裕貴)

豚肉を手に取る買い物客=アピタ向山店で
豚肉を手に取る買い物客=アピタ向山店で

カテゴリー:社会・経済

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