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貴重な明治時代の海軍兵日記

中川さんが書いた日記を手にする岩瀬専門員=豊橋市役所で
中川さんが書いた日記を手にする岩瀬専門員=豊橋市役所で
中川さんが乗っていた「千歳」=豊橋市提供
中川さんが乗っていた「千歳」=豊橋市提供

豊橋市中央図書館で展示

 豊橋市民から市に寄贈された明治時代の海軍兵の個人日記が、あまり世に知られていないアメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典に参加した巡洋艦「千歳」の航海を記したものだったことが、市の調べで分かった。航路や寄港地での歓迎ぶりをうかがい知ることができ、価値の高い資料という。実物が8日から19日まで、市中央図書館で展示される。
 筆者は、当時の渥美郡二川村字小松原町(豊橋市小松原町)の中川彰さん。1882(明治15)年の生まれで、1933(昭和8)年に亡くなった。徴兵で海軍兵だった。
 市内に住む孫の加藤國晃さん(73)が、自宅で亡くなった母親の遺品を整理していた際にこの日記を発見。文中に「インド洋」「航海中」などがあったため「これは、どういう日記だろう」と不思議に思い、昨年秋、中央図書館に持ち込んだ。 市によると、1907(明治40)年の元日から11月10日まで、日付入りの帳面にアメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典に参加し、その後、欧州を歴訪した千歳の航路、出来事などが書かれていた。日付や寄港地は、海軍の公式文書と一致した。
 同祝典は、植民から300年を記念し、1907年、最初の上陸地に近い米国東海岸・ハンプトンローズで開催。米国の要請を受け、海軍は第二艦隊司令長官の伊集院五郎中将を外国派遣艦隊の司令長官とし、千歳と巡洋艦「筑波」を派遣した。
 中川さんの日記では、千歳が横浜港を出航し、祝典に参加、その後に英国、ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアなどを巡り、寄港地での様子などが分かる。5月13日のハンプトンローズでは盛大な式が行われ、礼砲をうったこと、6月24日のドイツでは礼服に着替え、正午頃、皇帝陛下を筑波に迎え、26日にはドイツ艦隊に招かれ、公園で運動会、芝居見物などをしたことが書かれている。
 兵隊があまり日記を書けなかった時代の中で、明治時代に軍事活動をした個人日記が残っているのは珍しいという。
 日本が日露戦争(1904年~05年)に勝利した直後の時期で、調査にあたった職員の1人、市図書館専門員・岩瀬彰利さんは「日露戦争勝利後、初の海外派遣。日記から、アメリカ大統領をはじめ、イギリスやドイツなどの国家元首に謁見したほか、スペインなどの厚遇ぶりも分かる。当時の欧米主要国が日本を認めたと言える」と話す。今後、詳しく読み解いていく。
 日記は「明治海軍兵日記-アメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典等記録」と名付けて展示するほか、複製本1冊の閲覧が可能。今後、日記画像や翻刻をインターネットで公開することも予定する。
(中村晋也)

豊橋市中央図書館で展示

 豊橋市民から市に寄贈された明治時代の海軍兵の個人日記が、あまり世に知られていないアメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典に参加した巡洋艦「千歳」の航海を記したものだったことが、市の調べで分かった。航路や寄港地での歓迎ぶりをうかがい知ることができ、価値の高い資料という。実物が8日から19日まで、市中央図書館で展示される。
 筆者は、当時の渥美郡二川村字小松原町(豊橋市小松原町)の中川彰さん。1882(明治15)年の生まれで、1933(昭和8)年に亡くなった。徴兵で海軍兵だった。
 市内に住む孫の加藤國晃さん(73)が、自宅で亡くなった母親の遺品を整理していた際にこの日記を発見。文中に「インド洋」「航海中」などがあったため「これは、どういう日記だろう」と不思議に思い、昨年秋、中央図書館に持ち込んだ。 市によると、1907(明治40)年の元日から11月10日まで、日付入りの帳面にアメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典に参加し、その後、欧州を歴訪した千歳の航路、出来事などが書かれていた。日付や寄港地は、海軍の公式文書と一致した。
 同祝典は、植民から300年を記念し、1907年、最初の上陸地に近い米国東海岸・ハンプトンローズで開催。米国の要請を受け、海軍は第二艦隊司令長官の伊集院五郎中将を外国派遣艦隊の司令長官とし、千歳と巡洋艦「筑波」を派遣した。
 中川さんの日記では、千歳が横浜港を出航し、祝典に参加、その後に英国、ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアなどを巡り、寄港地での様子などが分かる。5月13日のハンプトンローズでは盛大な式が行われ、礼砲をうったこと、6月24日のドイツでは礼服に着替え、正午頃、皇帝陛下を筑波に迎え、26日にはドイツ艦隊に招かれ、公園で運動会、芝居見物などをしたことが書かれている。
 兵隊があまり日記を書けなかった時代の中で、明治時代に軍事活動をした個人日記が残っているのは珍しいという。
 日本が日露戦争(1904年~05年)に勝利した直後の時期で、調査にあたった職員の1人、市図書館専門員・岩瀬彰利さんは「日露戦争勝利後、初の海外派遣。日記から、アメリカ大統領をはじめ、イギリスやドイツなどの国家元首に謁見したほか、スペインなどの厚遇ぶりも分かる。当時の欧米主要国が日本を認めたと言える」と話す。今後、詳しく読み解いていく。
 日記は「明治海軍兵日記-アメリカ植民300年祭万国陸海軍祝典等記録」と名付けて展示するほか、複製本1冊の閲覧が可能。今後、日記画像や翻刻をインターネットで公開することも予定する。
(中村晋也)

中川さんが書いた日記を手にする岩瀬専門員=豊橋市役所で
中川さんが書いた日記を手にする岩瀬専門員=豊橋市役所で
中川さんが乗っていた「千歳」=豊橋市提供
中川さんが乗っていた「千歳」=豊橋市提供

カテゴリー:社会・経済

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