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食の安全と動物福祉を両立

開放的な鶏舎で自由に動き回る鶏=田原市赤羽根町の宮本養鶏場で
開放的な鶏舎で自由に動き回る鶏=田原市赤羽根町の宮本養鶏場で
なごみたまごを手にする宮本さん=同
なごみたまごを手にする宮本さん=同

田原の宮本養鶏場 「平飼い卵」提供

 田原市赤羽根町の宮本養鶏場は、鶏(にわとり)たちが平らな地面の上を自由に走りまわる。動物福祉の観点から、欧米ではこのような平飼いなどの鶏が産んだケージフリー卵が広がるが、日本国内では9割以上がケージで飼われる。同養鶏場では、鶏舎見学の受け入れや卵とり体験を催し、「物価の優等生」と称される卵生産の現状と食の安全性について、消費者に問いかけている。
 太陽光が入り、風が吹き抜ける約55平方㍍の鶏舎3ケ所に計300羽の鶏を平飼いで飼育する。晴れた日には、小屋の隣の運動場へと出かけていく鶏たち。落ち葉や米ぬかなどを敷いた土の上では、皮膚と羽毛についた汚れやダニを落とすため砂遊びをする。こうすることで、害虫駆除の殺虫剤など薬剤は使わずに健康な体が維持できるという。
 もともと父親の代からケージ飼いの養鶏場を営んでいた宮本健太郎さん(42)が、平飼いをはじめたのは2017(平成29)年。きっかけは、「化学物質過敏症」と見られる症状に悩まされるようになったことだった。
 宮本さんは大学卒業後、就職した畜産関係の薬品会社でさまざまな養鶏場を訪問し、国内では一般的な太陽光と自然の風を遮断したウインドレス鶏舎での研修も1年半ほどつんだ。そして11年に、鳥インフルエンザをきっかけに家業を手伝い始めたが、鶏に寄ってくるダニやハエを退治するためにまいた殺虫剤のせいで、頭痛と吐き気をもよおし、1週間動けなくなった。
 何とか殺虫剤を使わない飼育方法を模索する中、出会ったのが平飼いだった。「危険を察知できるのは、生産者としてはいい体質かも」と笑う宮本さんだが、今もその症状に悩む。
 国内のスーパーで売られるほとんどの卵はケージ飼いだ。鶏舎では、広さA4サイズほどの極めて狭いスペースに2羽ずつ詰め込み、動き回ることのできない中で鶏は一生を過ごす。何段にも積み重ねることで、少ない面積で多くの鶏が飼えるため、効率よく卵の大量生産が可能。エサやりや集卵などの管理は機械化し、運動もできないのでエサも少なくてすむ。その結果、安定的に安い価格で売ることができる。
 平飼いの場合、鶏の運動量が多い分、エサ代も高額になる。加えて、宮本さんは与えるエサにもこだわり、遺伝子組み換えでないトウモロコシや大豆かす、天然酵母のパンに無農薬野菜などを食べさせる。レストランから譲り受けた真鯛などを与えることで、卵の味は濃厚になるという。
 宮本養鶏場の平飼い卵「なごみたまご」は、父親が担当するケージ飼い卵に比べ、3倍ほどの1個100円で売る。コストがかかるため、適正な価格で販売する苦労はある。動物福祉への対応が選択肢の一つとなっている欧米に比べ、国内では平飼い卵の浸透はまだまだ。それでも、ストレスなく育った「なごみたまご」は「白身がキメ細かく、味に雑味やよどみがない」と評判で、リピーターも多い。
 養鶏場では、両方の飼育環境の違いに触れてもらおうと、見学を有料で受け付ける。夏には子どもたちの卵取り体験も受け入れ、直売所も設営予定。生産者と消費者の距離を近づけることで、食の安全性や動物福祉の重要性を伝える。宮本さんは「その安さの裏側で何が犠牲となっているのか、しっかり見て、判断基準にしてほしい」と話す。
 「なごみたまご」はインターネットの他、豊橋市佐藤2の「かぁやん商店」、同市三ノ輪町のビオあつみエピスリー豊橋では1個から購入できる。問い合わせは(0531・36・6223)へ。
(飯塚雪)

田原の宮本養鶏場 「平飼い卵」提供

 田原市赤羽根町の宮本養鶏場は、鶏(にわとり)たちが平らな地面の上を自由に走りまわる。動物福祉の観点から、欧米ではこのような平飼いなどの鶏が産んだケージフリー卵が広がるが、日本国内では9割以上がケージで飼われる。同養鶏場では、鶏舎見学の受け入れや卵とり体験を催し、「物価の優等生」と称される卵生産の現状と食の安全性について、消費者に問いかけている。
 太陽光が入り、風が吹き抜ける約55平方㍍の鶏舎3ケ所に計300羽の鶏を平飼いで飼育する。晴れた日には、小屋の隣の運動場へと出かけていく鶏たち。落ち葉や米ぬかなどを敷いた土の上では、皮膚と羽毛についた汚れやダニを落とすため砂遊びをする。こうすることで、害虫駆除の殺虫剤など薬剤は使わずに健康な体が維持できるという。
 もともと父親の代からケージ飼いの養鶏場を営んでいた宮本健太郎さん(42)が、平飼いをはじめたのは2017(平成29)年。きっかけは、「化学物質過敏症」と見られる症状に悩まされるようになったことだった。
 宮本さんは大学卒業後、就職した畜産関係の薬品会社でさまざまな養鶏場を訪問し、国内では一般的な太陽光と自然の風を遮断したウインドレス鶏舎での研修も1年半ほどつんだ。そして11年に、鳥インフルエンザをきっかけに家業を手伝い始めたが、鶏に寄ってくるダニやハエを退治するためにまいた殺虫剤のせいで、頭痛と吐き気をもよおし、1週間動けなくなった。
 何とか殺虫剤を使わない飼育方法を模索する中、出会ったのが平飼いだった。「危険を察知できるのは、生産者としてはいい体質かも」と笑う宮本さんだが、今もその症状に悩む。
 国内のスーパーで売られるほとんどの卵はケージ飼いだ。鶏舎では、広さA4サイズほどの極めて狭いスペースに2羽ずつ詰め込み、動き回ることのできない中で鶏は一生を過ごす。何段にも積み重ねることで、少ない面積で多くの鶏が飼えるため、効率よく卵の大量生産が可能。エサやりや集卵などの管理は機械化し、運動もできないのでエサも少なくてすむ。その結果、安定的に安い価格で売ることができる。
 平飼いの場合、鶏の運動量が多い分、エサ代も高額になる。加えて、宮本さんは与えるエサにもこだわり、遺伝子組み換えでないトウモロコシや大豆かす、天然酵母のパンに無農薬野菜などを食べさせる。レストランから譲り受けた真鯛などを与えることで、卵の味は濃厚になるという。
 宮本養鶏場の平飼い卵「なごみたまご」は、父親が担当するケージ飼い卵に比べ、3倍ほどの1個100円で売る。コストがかかるため、適正な価格で販売する苦労はある。動物福祉への対応が選択肢の一つとなっている欧米に比べ、国内では平飼い卵の浸透はまだまだ。それでも、ストレスなく育った「なごみたまご」は「白身がキメ細かく、味に雑味やよどみがない」と評判で、リピーターも多い。
 養鶏場では、両方の飼育環境の違いに触れてもらおうと、見学を有料で受け付ける。夏には子どもたちの卵取り体験も受け入れ、直売所も設営予定。生産者と消費者の距離を近づけることで、食の安全性や動物福祉の重要性を伝える。宮本さんは「その安さの裏側で何が犠牲となっているのか、しっかり見て、判断基準にしてほしい」と話す。
 「なごみたまご」はインターネットの他、豊橋市佐藤2の「かぁやん商店」、同市三ノ輪町のビオあつみエピスリー豊橋では1個から購入できる。問い合わせは(0531・36・6223)へ。
(飯塚雪)

開放的な鶏舎で自由に動き回る鶏=田原市赤羽根町の宮本養鶏場で
開放的な鶏舎で自由に動き回る鶏=田原市赤羽根町の宮本養鶏場で
なごみたまごを手にする宮本さん=同
なごみたまごを手にする宮本さん=同

カテゴリー:社会・経済

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