卒業記念に寄贈した鏡と再会 豊橋大村小の同窓生

　約60年前に贈った卒業記念の鏡にご対面―。豊橋市立大村小学校（谷野正明校長）の東西階段の踊り場にそれぞれ設置された2枚の鏡。昭和36年（1961）年3月の卒業記念に学校に贈られたものだ。長い年月で、一度も割れることなく大事にされてきた鏡を一目見ようと、当時の卒業生らが学校を訪れ、感激の対面を果たした。
　きっかけは、谷野校長が不定期で書き続けてきた「校長室だより」。着任後5年間で250枚、年間50枚も発行してきた通信で、校舎が木造から鉄筋に替えられた時も、一昨年度に大規模改修が行われた時も、卒業生の思いを汲んで撤去されずに残された鏡のことについて、2017年4月28日号で書きつづった。
　「2枚とも破損することなく現存していることに感動しました。児童がぶつかって割れることもなかったのは、大村小学校の子どもたちが落ち着いている証拠だと思う。これまで鏡が残されてきたのも、卒業生の気持ちを大切にした、当時の大人たちの温かい思い」と谷野校長は話す。
　校長室だよりの「鏡についてご存じの方がおみえになりましたら…」の一文に反応したのが、大村小に3人の孫を通わせている校区在住の浅野充代さん。1948年生まれの自身も、2人の娘も大村小出身で、孫が持ち帰った校長室だよりを見てすぐ連絡をしたという。当時の状況を伝えた後、「いつか鏡を見に行きます」と約束していたものの、そのままに。しかし、この３月で谷野校長が退職を迎えることから、「在職されているうちに」と訪問を実現させた。
　学校には、浅野さんと小林保次さん、峯松すみ子さん、朝倉美代子さん、夏目雪枝さんの市内に住む仲良しグループ5人が訪問。谷野校長の案内できれいに保たれた鏡と再会し、「第14回卒業生一同　昭和36年3月」とくっきり書かれた文字にも感動、記念に写真を撮り思い出話に花を咲かせた。
　今も子どもたちの昇降を見守り続けている鏡を眺め、「鏡を見ることで、子どもたちは客観的に自分を見ることができる。これから何年先までも大切に使っていってほしい」と谷野校長は話していた。
（田中博子）