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入院中、筆者の代わりに「いなりん」の人形に見守られた我が子
入院中、筆者の代わりに「いなりん」の人形に見守られた我が子

緊急事態での出産ルポ

 新型コロナウイルス感染拡大が妊産婦へも影響を及ぼしている。妊婦や、免疫力の弱い新生児が感染しないように各医療機関で徹底した対策が取られている。この厳戒態勢の中で、筆者は妻の出産を経験した。
 32歳の妻は第1子の出産を控えていた。予定日は4月23日。しかし3月末の時点で子の体重はすでに3000㌘を超え、出産日が早まるのではと予感していた。そんな矢先、新型コロナ対策で10日に県が緊急事態宣言を出した。
 その夕方だった。妻が「水が漏れて止まらない。破水かもしれない」。分娩予約した豊橋市内の産婦人科に連絡すると「すぐに来院してください」。あらかじめ準備した荷物を車に積む。筆者自身が37年前に産まれた時、慌てた祖母の車のタイヤが側溝に落ちたというアクシデントを教訓に、冷静にハンドルを握った。
 病院に着いたのは午後7時過ぎ。すぐに検査すると破水と判明し、入院が決まった。助産師によると「まだ陣痛がないので、出産までの時間は何とも言えません」。初産婦は一般的に陣痛開始から出産までは平均10~12時間とされ、1日以上かかる人もいる。緊急事態宣言を受けて、病院は翌11日午前8時から父親も含めて、家族らの面会を禁止する方針を決めていた。
 不安の中、午後9時過ぎに陣痛が始まった。痛みの波の間隔も縮まり、強くなっていく。筆者は妻の背中をさするなどしてサポートし、深夜2時ごろに陣痛室へ。そして助産師の判断で4時半に分娩室へ入る。立ち会う予定ではなかったため、筆者は部屋で待機。1時間もたたず、吉報が届いた。産まれたばかりの我が子と顔を合わせることができた。外はもう明るくなっていた。
 出産があと2、3時間遅かったら、子どもとの初対面はスマートフォンのカメラを介してだったかもしれない。激しい痛みと戦う妻に寄り添えなかったかもしれない。そう考えると、初産にしては早く誕生した我が子に感謝したい。
 妻子は出産から5日間入院。その間は筆者は病院に入れず、荷物を届けるだけだった。退院まで待ち遠しかったが、病院の徹底した感染対策に安心感も抱いた。いつか我が子に思い出話として語れる日が来ることを願う。
(由本裕貴)

緊急事態での出産ルポ

 新型コロナウイルス感染拡大が妊産婦へも影響を及ぼしている。妊婦や、免疫力の弱い新生児が感染しないように各医療機関で徹底した対策が取られている。この厳戒態勢の中で、筆者は妻の出産を経験した。
 32歳の妻は第1子の出産を控えていた。予定日は4月23日。しかし3月末の時点で子の体重はすでに3000㌘を超え、出産日が早まるのではと予感していた。そんな矢先、新型コロナ対策で10日に県が緊急事態宣言を出した。
 その夕方だった。妻が「水が漏れて止まらない。破水かもしれない」。分娩予約した豊橋市内の産婦人科に連絡すると「すぐに来院してください」。あらかじめ準備した荷物を車に積む。筆者自身が37年前に産まれた時、慌てた祖母の車のタイヤが側溝に落ちたというアクシデントを教訓に、冷静にハンドルを握った。
 病院に着いたのは午後7時過ぎ。すぐに検査すると破水と判明し、入院が決まった。助産師によると「まだ陣痛がないので、出産までの時間は何とも言えません」。初産婦は一般的に陣痛開始から出産までは平均10~12時間とされ、1日以上かかる人もいる。緊急事態宣言を受けて、病院は翌11日午前8時から父親も含めて、家族らの面会を禁止する方針を決めていた。
 不安の中、午後9時過ぎに陣痛が始まった。痛みの波の間隔も縮まり、強くなっていく。筆者は妻の背中をさするなどしてサポートし、深夜2時ごろに陣痛室へ。そして助産師の判断で4時半に分娩室へ入る。立ち会う予定ではなかったため、筆者は部屋で待機。1時間もたたず、吉報が届いた。産まれたばかりの我が子と顔を合わせることができた。外はもう明るくなっていた。
 出産があと2、3時間遅かったら、子どもとの初対面はスマートフォンのカメラを介してだったかもしれない。激しい痛みと戦う妻に寄り添えなかったかもしれない。そう考えると、初産にしては早く誕生した我が子に感謝したい。
 妻子は出産から5日間入院。その間は筆者は病院に入れず、荷物を届けるだけだった。退院まで待ち遠しかったが、病院の徹底した感染対策に安心感も抱いた。いつか我が子に思い出話として語れる日が来ることを願う。
(由本裕貴)

入院中、筆者の代わりに「いなりん」の人形に見守られた我が子
入院中、筆者の代わりに「いなりん」の人形に見守られた我が子

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