渥美半島の野菜でスイーツを開発

　豊橋市の洋菓子店でパティシエとして働く藤井秀和さん（28）が、故郷・渥美半島の野菜を主役にしたスイーツを開発している。「農業大国」だからこそ抱える食品ロス問題に向き合いながら、地域の雇用創出のため、田原市内に来年を目指して製造施設の建設も計画する。「サーフィンのまち田原からスイーツのまち田原へ。野菜ケーキをきっかけに田原へ来てくれる人が増えたらうれしい」と話す。
　ホウレンソウを練りこんだチーズケーキは、口に入れると抹茶のような香りが広がる。アクセントは乾燥させたジャガイモのシャリシャリとした食感、トマトのさっぱりとした酸味がさらにおいしさを引き立てる。藤井さんが追求する「味の変化」が存分に楽しめる一品だ。
　使う材料は、大きさや形などが規格外となり販売されなかった野菜。母の恵美子さん（58）が手掛ける地元の規格外野菜を乾燥させた商品「ドライサラダ」から、製造過程で割れたものを使う。繊維の多い野菜はスイーツにするための下処理が面倒だが、乾燥野菜なら繊維が崩れ、粉状にしやすい。うま味も凝縮されており、煮詰めてシロップ漬けにしてもフルーツのように使える。
　「心を喜ばせる、幸せにする、人の支えになるものを作るのがパティシエの仕事。そのままでは使いにくい食材をおいしくすることが真骨頂だと思う」と語る藤井さん。
　県立渥美農業高校から京都の製菓専門学校へ進学し、日本を代表する一流パティシエを輩出した「名古屋マリオットアソシアホテル」で修業を積んだ。技術はあって当たり前の職場で、来店者を喜ばせる姿勢を学び、現在は豊橋市宮下町の洋菓子店「ガトーフルール」で腕を振るう。　
　田原に製造拠点をつくるのは、新たな地場産業創出という目標があるから。他の地方都市と同様に、若者が進学や就職を機に外へ出て行くまち。「世界に通用するスイーツの製造施設をつくれたら、働き口が増え、地域貢献になるのでは」と考える。
　野菜ケーキのブランド名は、フランス語で「野菜」と「甘い」を意味する言葉をかけ合わせて「レギュームシュクレ」。「この地域の野菜は、それ自体が甘い」と自信を持つ渥美半島の野菜で、甘いひと時を楽しんでほしいとの思いを込める。
　現在、製造施設の建築費や冷蔵庫購入費などをクラウドファンディングサイト＝ＱＲコード＝で募集中。返礼品として野菜ケーキを用意する。
（飯塚雪）