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浜名湖ボート転覆事故から10年

メッセージをつけて空に放たれた風船=いずれも章南中で
メッセージをつけて空に放たれた風船=いずれも章南中で
講演する平松さん
講演する平松さん
教職員向けに危険回避について語る友章さん
教職員向けに危険回避について語る友章さん

豊橋章南中で「いのちの日」

2010年6月、野外活動中に起きた「浜名湖ボート転覆事故」=ことば=から18日で10年となった。この日、犠牲となった当時1年生の西野花菜さんをしのび、命の尊さを伝える「学校いのちの日」が豊橋市立章南中学であった。
 1時限目に全校放送のうえ、各教室で西野さんのために全校生徒258人が黙とうした。2時限目は道徳の授業だった。
 3時限目は生徒たちがメッセージ付きの黄色い風船を準備した。そして午前11時半、教室の窓から一斉に風船を空に放った。
 午後からは講演会。事故を風化させないため、毎年この日に同校と三ケ日青年の家などで掲げられている旗が生徒に紹介された。西野さんが野外活動の時に同級生の活躍を願って寄せ書きした「夢があるっていい」の言葉と、カッターボートが描かれている。色は西野さんが好きな色の黄色だ。
 その後、西野さんと小学校以来の同級生で、手作りパンの店を営む平松明華さん(23)が新型コロナウイルス対策で、校内放送を通じて講演した。中学で級長や生徒会長も担い、バスケットボール部で活躍したことを回想した。当時の夢だったパン屋を経営していることから「やりたいことがあっても焦る必要はありません。夢を追うことはかっこいいこと。やり続けることは大事だよね」と語りかけた。
 また「忘れないことで誰かのためになろうと思う。事故は、小学校卒業してすぐの出来事だった」と西野さんのことに触れ「花菜は笑顔がすてきで温かかった。思い出すと自分の心が温められる。笑顔を大切にすること。周りにいる人を大切にすることが大事です」と話した。生徒はその後、感想文を書いた。
 放課後は教職員研修として、西野さんの父友章さん(61)が講演した。
 友章さんは「子どもの命を守ることに向け、想定されるリスクをどれだけ回避できるのかを常に考える必要がある」と説いた。事故について「誰が安全を確保するのかが明確でなく、全員が他人任せだった。率先して生徒の安全を確保するのは一人一人ではないか」と指摘した。
 子どもが犠牲となった事故を紹介した。12年7月の愛媛県西条市で川遊び中の園児死亡事故、17年3月に高校生が死亡した栃木県那須町のスキー場雪崩事故、18年7月の豊田市の小学1年生熱中症死亡事故だ。これらの例から「いつもの活動である、という思いが適切な安全判断を鈍らせる。常に新たな視点で危険回避する準備が大事だ。学校だけでなく、社会全体で考えて回避する仕組みづくりも必要だ」と訴えた。
 ボート転覆事故があったのは午後3時半すぎ。友章さんは「10年前のまさにこの時間に事故が起きた。花菜は帰ってこない。特別につらい日です。それでも、事故のことを先生たちに話すまでに立ち直れた」と語り「子どもたちの命を守るために大人たちが何をすべきか。過去の教訓に学んで危険回避に努めてほしい」との言葉を送った。
 宮林秀和校長は「西野さんの指摘を受け止めていきたい。学校の安全体制を築くための決意を新たにしていきます」と語った。
【安藤聡、林大二朗】

=ことば=浜名湖ボート転覆事故

 2010年6月18日、豊橋市立章南中1年生の生徒が野外活動として浜松市北区の三ケ日青年の家を訪れ、浜名湖でカッターボートの訓練に参加。教師2人と生徒18人の計20人が乗った手こぎボートがえい航中に波を受けて転覆し、西野花菜さん(当時12歳)が水死した。同校は翌11年のこの日から「いのちの日」として集会やイベントを開いている。豊橋市教育委員会も「学校いのちの日」として全小中学校でこの日を中心に授業や活動をしている。13年2月には静岡県警が業務上過失致死容疑で当時の三ケ日青年の家所長や同中学校校長ら6人を送検。元所長のみが起訴され、執行猶予付きの禁固刑が確定した。

豊橋章南中で「いのちの日」

2010年6月、野外活動中に起きた「浜名湖ボート転覆事故」=ことば=から18日で10年となった。この日、犠牲となった当時1年生の西野花菜さんをしのび、命の尊さを伝える「学校いのちの日」が豊橋市立章南中学であった。
 1時限目に全校放送のうえ、各教室で西野さんのために全校生徒258人が黙とうした。2時限目は道徳の授業だった。
 3時限目は生徒たちがメッセージ付きの黄色い風船を準備した。そして午前11時半、教室の窓から一斉に風船を空に放った。
 午後からは講演会。事故を風化させないため、毎年この日に同校と三ケ日青年の家などで掲げられている旗が生徒に紹介された。西野さんが野外活動の時に同級生の活躍を願って寄せ書きした「夢があるっていい」の言葉と、カッターボートが描かれている。色は西野さんが好きな色の黄色だ。
 その後、西野さんと小学校以来の同級生で、手作りパンの店を営む平松明華さん(23)が新型コロナウイルス対策で、校内放送を通じて講演した。中学で級長や生徒会長も担い、バスケットボール部で活躍したことを回想した。当時の夢だったパン屋を経営していることから「やりたいことがあっても焦る必要はありません。夢を追うことはかっこいいこと。やり続けることは大事だよね」と語りかけた。
 また「忘れないことで誰かのためになろうと思う。事故は、小学校卒業してすぐの出来事だった」と西野さんのことに触れ「花菜は笑顔がすてきで温かかった。思い出すと自分の心が温められる。笑顔を大切にすること。周りにいる人を大切にすることが大事です」と話した。生徒はその後、感想文を書いた。
 放課後は教職員研修として、西野さんの父友章さん(61)が講演した。
 友章さんは「子どもの命を守ることに向け、想定されるリスクをどれだけ回避できるのかを常に考える必要がある」と説いた。事故について「誰が安全を確保するのかが明確でなく、全員が他人任せだった。率先して生徒の安全を確保するのは一人一人ではないか」と指摘した。
 子どもが犠牲となった事故を紹介した。12年7月の愛媛県西条市で川遊び中の園児死亡事故、17年3月に高校生が死亡した栃木県那須町のスキー場雪崩事故、18年7月の豊田市の小学1年生熱中症死亡事故だ。これらの例から「いつもの活動である、という思いが適切な安全判断を鈍らせる。常に新たな視点で危険回避する準備が大事だ。学校だけでなく、社会全体で考えて回避する仕組みづくりも必要だ」と訴えた。
 ボート転覆事故があったのは午後3時半すぎ。友章さんは「10年前のまさにこの時間に事故が起きた。花菜は帰ってこない。特別につらい日です。それでも、事故のことを先生たちに話すまでに立ち直れた」と語り「子どもたちの命を守るために大人たちが何をすべきか。過去の教訓に学んで危険回避に努めてほしい」との言葉を送った。
 宮林秀和校長は「西野さんの指摘を受け止めていきたい。学校の安全体制を築くための決意を新たにしていきます」と語った。
【安藤聡、林大二朗】

=ことば=浜名湖ボート転覆事故

 2010年6月18日、豊橋市立章南中1年生の生徒が野外活動として浜松市北区の三ケ日青年の家を訪れ、浜名湖でカッターボートの訓練に参加。教師2人と生徒18人の計20人が乗った手こぎボートがえい航中に波を受けて転覆し、西野花菜さん(当時12歳)が水死した。同校は翌11年のこの日から「いのちの日」として集会やイベントを開いている。豊橋市教育委員会も「学校いのちの日」として全小中学校でこの日を中心に授業や活動をしている。13年2月には静岡県警が業務上過失致死容疑で当時の三ケ日青年の家所長や同中学校校長ら6人を送検。元所長のみが起訴され、執行猶予付きの禁固刑が確定した。

メッセージをつけて空に放たれた風船=いずれも章南中で
メッセージをつけて空に放たれた風船=いずれも章南中で
講演する平松さん
講演する平松さん
教職員向けに危険回避について語る友章さん
教職員向けに危険回避について語る友章さん

カテゴリー:社会・経済 / 地域・教育

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