豊橋に文化サロン「汽水域」が完成

　豊橋に新しい文化の発信場所を―。豊橋市のＮＰＯ法人「三河三座」理事長の伊藤秀子さん（77）が同市東小池町に建設を進めていた、能舞台のあるホールにカフェを併設した文化サロン「汽水域」が完成した。25日午後１時から、関係者などを招き開所式を開く。鏡板のお披露目や、こけら落としとして、喜多流シテ方能楽師の粟谷明生さんによる祝舞「高砂」がある。
　10年前に伊藤さんの母親が亡くなり、空き家となっていた生家を「壊すくらいなら皆の集える場所に。地元の伝統芸能や芸術文化の拠点に」と、３年前からサロンの計画を立て始め、ようやく実現した。
　木造在来工法で、３月22日に起工した。敷地は４７９・87平方㍍、建物は87・98平方㍍。壁は調湿性に優れた素材を職人が手塗りするなど、自然素材にこだわった。５・４㍍四方の檜（ひのき）舞台と客席約30席分のホールに、レトロ感がありつつスタイリッシュな作りのカフェを併設した。駐車場は15台分。
　鏡板（能舞台の正面の羽目板）の老松を描いたのは、地元豊橋の画家、早川洋介さん（61）。大阪芸大美術科を卒業後、渡仏して腕を磨き、国内外の美術展で受賞を重ねるほか、豊橋を拠点に各地で個展や教室展を開催する。北海道旭川市の上川神社能楽堂の鏡板絵付けを手掛けた実績があり、今回は５月から約１カ月かけて完成させた。
　発色よく耐久性のあるアクリルと、松煙墨の独自混合で描いたという老松は、荘厳な風格の中にも若々しさを感じさせられる仕上がりとなった。
　併設のカフェは。８月オープン予定。東京で舞台女優をしながらパンケーキ店で修業を積んだ小菅かおりさんによる各種コーヒーやパンケーキなどが楽しめる。
　「皆さんが気軽に遊びに来られる場所にしたい」と伊藤さん。「汽水域」とは海水と淡水の混じりあう水域のことで「老若男女だれもが交流できる場になれば。能だけでなく、貸しホールとして日舞やダンス、ヨガなどの練習や発表にも利用してほしい」と呼び掛ける。
　ホールは絵画や写真なども展示できるようにし、伊藤さんの叔母で書家の大澤喜三栄さんの作品なども飾っていくそうだ。今後は「三河三座」の活動の拠点にもなるという。
【田中博子】