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あまりに文学的な日本の安全保障

カテゴリー:コラム

「霞ヶ関文学」なる言葉をご存じでしょうか。この霞ヶ関文学は、当初は日本語を正確に定義して書くという、行政官僚に本来求められる当然の技量に過ぎないものでしたが、法律や大臣の国会答弁の文章を明確に書き過ぎると、自分たちの裁量権が狭められたり、官僚が何よりも重んじる省益を損なう内容になる場合に、本来の趣旨とは異なる目的で頻繁に使われるようになったものです。そして法案や大臣の国会答弁で使われる単語や表現の意味が、私たちの一般常識とは、かけ離れたものになってしまったわけです。たとえば、「完全民営化」と「完全に民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別のことを意味しています。「完全民営化」は、株式と経営がともに民間企業に譲渡される文字通りの民営化を指しますが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全に」実現すればいいという意味になります。また、霞ヶ関文学では、人数は変わっていなくても「削減」という言葉を使うことができます。1000人の人間がいたとして、そのうち、100人を辞めさせ、新たに100人を採用した場合でも「削減」と言うことができるのです。また、単語の後に「等」をつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまう手法もよく知られた常套手段です。ところで、霞ヶ関文学には、これから私たち国民が注視しなければならない翻訳部門もあります。たとえば、集団自衛権行使の閣議決定後の日米新ガイドライン(2015年)においては、作為的翻訳が何箇所も指摘されていますが、一つ、例をあげるなら、「The Self-Defense Forces will have primary responsibility for conducting -----operations ---to defend Japan.」の日本語訳は、「自衛隊は、日本を防衛するため-----作戦を主体的に実施する」となっていますが、本来の意味は「日本を防衛する作戦をするための主たる責任は自衛隊が持つ」ということでしょう。また、「(Cross-Domain Operations)The United States Armed Forces may conduct operations involving the use of strike power----」の日本語訳は「(領域横断的な作戦で)米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」とありますが、どう考えても「実施する可能性がある」の意味に捉えるのが正解だと思われます。意図的に外務官僚は、米軍が日本防衛に加わる印象を強めようとしています。先日も尖閣諸島については、日米安全保障条約第5条が適用されるとマティス国防長官が明言したというニュースをNHKが速報テロップで流しました。たしかに日米安保条約第5条には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と書いてあります。しかしながら、戦争宣言の権限は大統領にはなく、議会にあります。したがって日米安保条約は「米国議会が承諾したら戦争します」と言っているに過ぎません。さらに泥沼になったベトナム戦争の反省から制定された「戦争権限法」(1973年)という法律があります。米国議会が宣戦布告をしないで米軍の司令官として大統領が軍隊を投入した時には、最長でも60日で撤退しなければならない旨が明記されています。(戦争権限法第1544条 (b)項)当然、このことは国会でも議論されていますが、「--米国議会が(安保条約の)履行を妨げる措置をとるということは考えがたいというふうに私ども(日本政府)は思っております。」(平成23年5月19日、安全保障委員会における松本剛明外務大臣の答弁)というように政府の願望が述べられているに過ぎません。このように日本の安全保障は、あまりに文学的な願望によって成立しています。文学の世界に耽溺するのではなく、現実に向き合うことが今、求められています。
*戦争権限法第1544条 (b)項(合衆国軍隊の使用の停止、例外、延長期間)
報告書が提出された日又は第1543条(a)項(1)に従って提出を求められた日のうちいずれか早い日から60日日以内に、大統領は、提出された(又は提出を求められた)当該報告書に係わる合衆国軍隊の使用をすべて中止しなければならない。ただし、連邦議会が(1)戦争宣言をし、若しくは合衆国軍隊の当該使用に関する特別の授権法を制定する場合、(2)当該60日の期間を立法により延長する場合、又は(3)合衆国に対する武力攻撃のため物理的に集会することができない場合はこの限りではない。当該60日の期間は、大統領が合衆国軍隊の安全に関する不可避な軍事的必要性により、軍隊の迅速な撤退をなし遂げる上で軍隊の継続的使用が必要であると決定し、連邦議会に対し書面で立証する場合には、30日を超えない期間で延長される。
(取締役統括本部長 山本正樹)

「霞ヶ関文学」なる言葉をご存じでしょうか。この霞ヶ関文学は、当初は日本語を正確に定義して書くという、行政官僚に本来求められる当然の技量に過ぎないものでしたが、法律や大臣の国会答弁の文章を明確に書き過ぎると、自分たちの裁量権が狭められたり、官僚が何よりも重んじる省益を損なう内容になる場合に、本来の趣旨とは異なる目的で頻繁に使われるようになったものです。そして法案や大臣の国会答弁で使われる単語や表現の意味が、私たちの一般常識とは、かけ離れたものになってしまったわけです。たとえば、「完全民営化」と「完全に民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別のことを意味しています。「完全民営化」は、株式と経営がともに民間企業に譲渡される文字通りの民営化を指しますが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全に」実現すればいいという意味になります。また、霞ヶ関文学では、人数は変わっていなくても「削減」という言葉を使うことができます。1000人の人間がいたとして、そのうち、100人を辞めさせ、新たに100人を採用した場合でも「削減」と言うことができるのです。また、単語の後に「等」をつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまう手法もよく知られた常套手段です。ところで、霞ヶ関文学には、これから私たち国民が注視しなければならない翻訳部門もあります。たとえば、集団自衛権行使の閣議決定後の日米新ガイドライン(2015年)においては、作為的翻訳が何箇所も指摘されていますが、一つ、例をあげるなら、「The Self-Defense Forces will have primary responsibility for conducting -----operations ---to defend Japan.」の日本語訳は、「自衛隊は、日本を防衛するため-----作戦を主体的に実施する」となっていますが、本来の意味は「日本を防衛する作戦をするための主たる責任は自衛隊が持つ」ということでしょう。また、「(Cross-Domain Operations)The United States Armed Forces may conduct operations involving the use of strike power----」の日本語訳は「(領域横断的な作戦で)米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」とありますが、どう考えても「実施する可能性がある」の意味に捉えるのが正解だと思われます。意図的に外務官僚は、米軍が日本防衛に加わる印象を強めようとしています。先日も尖閣諸島については、日米安全保障条約第5条が適用されるとマティス国防長官が明言したというニュースをNHKが速報テロップで流しました。たしかに日米安保条約第5条には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と書いてあります。しかしながら、戦争宣言の権限は大統領にはなく、議会にあります。したがって日米安保条約は「米国議会が承諾したら戦争します」と言っているに過ぎません。さらに泥沼になったベトナム戦争の反省から制定された「戦争権限法」(1973年)という法律があります。米国議会が宣戦布告をしないで米軍の司令官として大統領が軍隊を投入した時には、最長でも60日で撤退しなければならない旨が明記されています。(戦争権限法第1544条 (b)項)当然、このことは国会でも議論されていますが、「--米国議会が(安保条約の)履行を妨げる措置をとるということは考えがたいというふうに私ども(日本政府)は思っております。」(平成23年5月19日、安全保障委員会における松本剛明外務大臣の答弁)というように政府の願望が述べられているに過ぎません。このように日本の安全保障は、あまりに文学的な願望によって成立しています。文学の世界に耽溺するのではなく、現実に向き合うことが今、求められています。
*戦争権限法第1544条 (b)項(合衆国軍隊の使用の停止、例外、延長期間)
報告書が提出された日又は第1543条(a)項(1)に従って提出を求められた日のうちいずれか早い日から60日日以内に、大統領は、提出された(又は提出を求められた)当該報告書に係わる合衆国軍隊の使用をすべて中止しなければならない。ただし、連邦議会が(1)戦争宣言をし、若しくは合衆国軍隊の当該使用に関する特別の授権法を制定する場合、(2)当該60日の期間を立法により延長する場合、又は(3)合衆国に対する武力攻撃のため物理的に集会することができない場合はこの限りではない。当該60日の期間は、大統領が合衆国軍隊の安全に関する不可避な軍事的必要性により、軍隊の迅速な撤退をなし遂げる上で軍隊の継続的使用が必要であると決定し、連邦議会に対し書面で立証する場合には、30日を超えない期間で延長される。
(取締役統括本部長 山本正樹)

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