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豊橋筆周知へネット販売に活路

(左から)川合さん、太田さん、吉開さん=豊橋市牛川町の川合さんの工房で
(左から)川合さん、太田さん、吉開さん=豊橋市牛川町の川合さんの工房で
豊橋筆を作る川合さん。繊細な指先の感覚が要求される
豊橋筆を作る川合さん。繊細な指先の感覚が要求される
ネット通販中の福筆(フィセルのHPから)
ネット通販中の福筆(フィセルのHPから)

 毎年180万本が生産されているという豊橋筆。200年余の伝統があるが、ここでも後継者の育成と技能の伝承は深刻な問題だ。そんな中、この道50年以上の筆職人と、若手豊橋市職員らのコラボで生まれたのが、赤ちゃんの沐浴などで使う「福筆」。このほど、赤ちゃん用品などを企画販売する「フィセル」(蒲郡市)が展開するショップ「10mois(ディモア)」が取り扱いを始めた。三河の技術を生かし、豊橋筆の名前が全国に広がるきっかけになるか。
 福筆を作るのは、伝統工芸士の川合福男さん(70)=豊橋市牛川町。旧渥美町の農家に生まれ、おじが筆職人だった縁で、中学を卒業してから筆職人になった。
 師匠から独立してから半世紀になる。現在の悩みは後継者だ。昔の徒弟制度のように、何年もかけて無給で弟子を指導できる時代ではない。独立するには最低でも5年はかかるがその間、弟子が作る筆は売り物にはならない。
 そんなことを考えていた5年前の春、先輩職員と一緒に酒瓶を下げて、工房に遊びに来たのが、市職員(現在は出向中)の吉開仁紀さん(31)だった。川合さんの話を聞くうち、他地域ではほとんど知名度がない豊橋筆を世に売り出す方法はないかと考え始めた。
 吉開さんはその後、経済産業省に出向。全国各地の名産品を見て回りながら、さまざまな分野の人に豊橋筆を売り込む方法を相談していた。その中で、東京のデザイナーから「マーケットをずらそう」という提案を受けた。
 筆は書のためにある。だが、さまざまな動物の毛を束ねて作る筆の中には、なめらかな肌触りを持つものがある。「赤ちゃんの顔や体を洗うブラシにしては」。親子のスキンシップになる。川合さんが選んだ肌当たりの良い中国産のヤギの毛を採用し、持ち手は奥三河産のヒノキを使い、使用後に乾燥させられるようにフックをつけた。長さは10㌢。
 クラウドファンディングで35万円を目標に資金を募ったところ、140万円余が集まったのが2017年だった。
 直販サイトでの販売に加え、蒲郡信用金庫が今年5月に橋渡しして、フィセルと結びついた。価格は税込み1万500円。フィセルのオンラインショップで販売している。
 箱のデザインにもこだわった。すでに、孫向けのプレゼント購入する例があったという。フィセルの広報担当、太田奈保美さんは「ただの置物ではなく、普段使いしてもらえるように」と話している。
【山田一晶】

 毎年180万本が生産されているという豊橋筆。200年余の伝統があるが、ここでも後継者の育成と技能の伝承は深刻な問題だ。そんな中、この道50年以上の筆職人と、若手豊橋市職員らのコラボで生まれたのが、赤ちゃんの沐浴などで使う「福筆」。このほど、赤ちゃん用品などを企画販売する「フィセル」(蒲郡市)が展開するショップ「10mois(ディモア)」が取り扱いを始めた。三河の技術を生かし、豊橋筆の名前が全国に広がるきっかけになるか。
 福筆を作るのは、伝統工芸士の川合福男さん(70)=豊橋市牛川町。旧渥美町の農家に生まれ、おじが筆職人だった縁で、中学を卒業してから筆職人になった。
 師匠から独立してから半世紀になる。現在の悩みは後継者だ。昔の徒弟制度のように、何年もかけて無給で弟子を指導できる時代ではない。独立するには最低でも5年はかかるがその間、弟子が作る筆は売り物にはならない。
 そんなことを考えていた5年前の春、先輩職員と一緒に酒瓶を下げて、工房に遊びに来たのが、市職員(現在は出向中)の吉開仁紀さん(31)だった。川合さんの話を聞くうち、他地域ではほとんど知名度がない豊橋筆を世に売り出す方法はないかと考え始めた。
 吉開さんはその後、経済産業省に出向。全国各地の名産品を見て回りながら、さまざまな分野の人に豊橋筆を売り込む方法を相談していた。その中で、東京のデザイナーから「マーケットをずらそう」という提案を受けた。
 筆は書のためにある。だが、さまざまな動物の毛を束ねて作る筆の中には、なめらかな肌触りを持つものがある。「赤ちゃんの顔や体を洗うブラシにしては」。親子のスキンシップになる。川合さんが選んだ肌当たりの良い中国産のヤギの毛を採用し、持ち手は奥三河産のヒノキを使い、使用後に乾燥させられるようにフックをつけた。長さは10㌢。
 クラウドファンディングで35万円を目標に資金を募ったところ、140万円余が集まったのが2017年だった。
 直販サイトでの販売に加え、蒲郡信用金庫が今年5月に橋渡しして、フィセルと結びついた。価格は税込み1万500円。フィセルのオンラインショップで販売している。
 箱のデザインにもこだわった。すでに、孫向けのプレゼント購入する例があったという。フィセルの広報担当、太田奈保美さんは「ただの置物ではなく、普段使いしてもらえるように」と話している。
【山田一晶】

(左から)川合さん、太田さん、吉開さん=豊橋市牛川町の川合さんの工房で
(左から)川合さん、太田さん、吉開さん=豊橋市牛川町の川合さんの工房で
豊橋筆を作る川合さん。繊細な指先の感覚が要求される
豊橋筆を作る川合さん。繊細な指先の感覚が要求される
ネット通販中の福筆(フィセルのHPから)
ネット通販中の福筆(フィセルのHPから)

カテゴリー:社会・経済

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