文字の大きさ

地域に支えられ道産子を飼育 田原の青木さん

カテゴリー:特集

青木さんの牧場に遊びに来た男の子と馬でぃ=田原市野田町で
青木さんの牧場に遊びに来た男の子と馬でぃ=田原市野田町で
馬でぃの牧場。隣には牧草などを育てる畑もある
馬でぃの牧場。隣には牧草などを育てる畑もある

 田原市在住の青木千鶴さんは、野田町の「サンテパルクたはら」に近い小さな牧場で2019年末から1頭の馬を育てている。地域の人に支えられながら、3~5年後をめどに「馬好きの人が気軽に集まれる場所を作りたい」と努力を続けている。

 青木さんは岐阜県出身で名古屋育ち。結婚してから田原市に住み始め35年になる。
 幼い頃から馬が大好きだった。母の世話などでスケジュールが多忙になり、乗馬クラブの会員を辞めてから、代わりに馬の皿などのアクセサリーを作りたいと5年ほど前から市内の陶芸教室で学び始めた。
 転機があったのは、教室の先生に馬が大好きだと話してから。「そんなに好きなら思い切って飼ってみては」と勧められた。
 馬を飼うと聞いて心配されることもあったが、馬好きの人でつながった縁で地域の農家などの人々の協力も得られ、以前に牛小屋など牧場があった場所に約100坪の土地を借りられた。周りの人の温かい支援に、やってみよう、と青木さんも覚悟を決めた。乗馬クラブのようなやり方は難しいが、個人のペットのように小さくやっていくなら十分に可能だと計画を進めた。

 飼うなら日本在来馬にしようと、北海道芽室町にある牧場「剣山どさんこ牧」へ道産子(どさんこ)の愛称で親しまれている北海道和種を見に行った。牧場主の川原弘之さんは、当時はまだ不安を抱いていた青木さんに「馬を特別視することはない。犬や猫と同じ。やってみればなんとかなる」と背中を押した。おおらかな川原さんの人柄や北海道の大自然に、青木さんは「あれこれ考えて無理だと思ってしまう自分の価値観を壊された気がしました」と笑う。
 そこでは70頭以上が自然のように群れで放牧されている。多くは青木さんを気にしなかったが、1頭だけ青木さんの後をついて回った。青木さんは「この子なら飼えそうだ」と思い、川原さんに希望を伝えて迎えることができた。名前は「馬でぃ」。雄の去勢馬で現在5歳だ。道産子らしく温厚で優しいが頑固なところがあり、やりたくないと決めたことにはてこでも動かないという。

 来た当初は環境の変化もあり、攻撃的になることもあった。調教師にしつけてもらい、青木さんも仕事の傍ら「グラウンドワーク」について学んでいる。力で従えるのではなく、対等に接してリーダーとして馬に認めてもらうコミュニケーションのやり方だ。馬のことを知り、馬の気持ちを考える。「徐々に仲間意識が芽生えてきて、家族の一員として認めてくれていると思う。言うことをきくかどうかは別。子育てと一緒で、こちらは一生懸命でも、うまくいかないこともある」と笑う。
 馬でぃの主食は乾燥牧草で、1日約5㌔を食べる。副食はニンジンや笹だ。競走馬や農耕馬ではないため、量は少なくしているという。一部は牧場の畑で育てたり、農家から分けてもらうこともある。1カ月の食費は1万円に達しない。青木さんが仕事などで多忙な時は、馬好きの仲間に世話を頼んでいる。
 当面の目標は、人間の言うことを聞かせること。できないと、一般の人が触れるのは難しい。将来的には牧場の整備も進め、より気軽に馬と会える環境づくりに専念したいという。「気軽に馬を見に来て、馬が好きになるきっかけができる場所にしたい。皆さんに支えてもらって夢がかなったので、何か社会貢献になるようなことができれば」と青木さんは語った。
【岸侑輝】

 田原市在住の青木千鶴さんは、野田町の「サンテパルクたはら」に近い小さな牧場で2019年末から1頭の馬を育てている。地域の人に支えられながら、3~5年後をめどに「馬好きの人が気軽に集まれる場所を作りたい」と努力を続けている。

 青木さんは岐阜県出身で名古屋育ち。結婚してから田原市に住み始め35年になる。
 幼い頃から馬が大好きだった。母の世話などでスケジュールが多忙になり、乗馬クラブの会員を辞めてから、代わりに馬の皿などのアクセサリーを作りたいと5年ほど前から市内の陶芸教室で学び始めた。
 転機があったのは、教室の先生に馬が大好きだと話してから。「そんなに好きなら思い切って飼ってみては」と勧められた。
 馬を飼うと聞いて心配されることもあったが、馬好きの人でつながった縁で地域の農家などの人々の協力も得られ、以前に牛小屋など牧場があった場所に約100坪の土地を借りられた。周りの人の温かい支援に、やってみよう、と青木さんも覚悟を決めた。乗馬クラブのようなやり方は難しいが、個人のペットのように小さくやっていくなら十分に可能だと計画を進めた。

 飼うなら日本在来馬にしようと、北海道芽室町にある牧場「剣山どさんこ牧」へ道産子(どさんこ)の愛称で親しまれている北海道和種を見に行った。牧場主の川原弘之さんは、当時はまだ不安を抱いていた青木さんに「馬を特別視することはない。犬や猫と同じ。やってみればなんとかなる」と背中を押した。おおらかな川原さんの人柄や北海道の大自然に、青木さんは「あれこれ考えて無理だと思ってしまう自分の価値観を壊された気がしました」と笑う。
 そこでは70頭以上が自然のように群れで放牧されている。多くは青木さんを気にしなかったが、1頭だけ青木さんの後をついて回った。青木さんは「この子なら飼えそうだ」と思い、川原さんに希望を伝えて迎えることができた。名前は「馬でぃ」。雄の去勢馬で現在5歳だ。道産子らしく温厚で優しいが頑固なところがあり、やりたくないと決めたことにはてこでも動かないという。

 来た当初は環境の変化もあり、攻撃的になることもあった。調教師にしつけてもらい、青木さんも仕事の傍ら「グラウンドワーク」について学んでいる。力で従えるのではなく、対等に接してリーダーとして馬に認めてもらうコミュニケーションのやり方だ。馬のことを知り、馬の気持ちを考える。「徐々に仲間意識が芽生えてきて、家族の一員として認めてくれていると思う。言うことをきくかどうかは別。子育てと一緒で、こちらは一生懸命でも、うまくいかないこともある」と笑う。
 馬でぃの主食は乾燥牧草で、1日約5㌔を食べる。副食はニンジンや笹だ。競走馬や農耕馬ではないため、量は少なくしているという。一部は牧場の畑で育てたり、農家から分けてもらうこともある。1カ月の食費は1万円に達しない。青木さんが仕事などで多忙な時は、馬好きの仲間に世話を頼んでいる。
 当面の目標は、人間の言うことを聞かせること。できないと、一般の人が触れるのは難しい。将来的には牧場の整備も進め、より気軽に馬と会える環境づくりに専念したいという。「気軽に馬を見に来て、馬が好きになるきっかけができる場所にしたい。皆さんに支えてもらって夢がかなったので、何か社会貢献になるようなことができれば」と青木さんは語った。
【岸侑輝】

青木さんの牧場に遊びに来た男の子と馬でぃ=田原市野田町で
青木さんの牧場に遊びに来た男の子と馬でぃ=田原市野田町で
馬でぃの牧場。隣には牧草などを育てる畑もある
馬でぃの牧場。隣には牧草などを育てる畑もある

カテゴリー:特集

 PR

PR