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田原の伊良湖で食事付き「大人の社会学セミナー」

三島准教授=伊良湖ホテル&リゾートで
三島准教授=伊良湖ホテル&リゾートで
児玉会長
児玉会長

 田原市伊良湖町の「伊良湖ホテル&リゾート」で食事付き講演会「大人の社会学セミナー」第2弾が開かれた。30人が参加した。
 講師は三重大学大学院生物資源学研究科生物資源学部の三島隆准教授と、「観音山フルーツガーデン」(和歌山県)の児玉典男会長。ともに地域資源活用と6次産業化について語った。
 三島准教授は、農林漁業者がそれぞれの生産だけでなく食品加工、流通販売にも取り組んで農山漁村の経済を豊かにするという6次産業化の定義をはじめ、2010年の地産地消法、県の農山漁村発イノベーション推進支援事業、17年の地域未来投資促進法などを紹介し、国や県の取り組みを解説した。
 田原市内で6次産業化に取り組み、国や県のサポートを受けている事例をまとめ、「地域資源をどう使うか、消費者にどう買ってもらうか、ビジネスモデルを明確に示せることが大切」と述べた。
 「豊橋筆」「豊橋カレーうどん」のように地名を入れた地域団体商標などを使って地域と資源を結び付けることが大きな武器になるため、商工会や商議所を頼り、地域一体でブランド力を上げていくのが肝心とした。
 三島准教授は事業継続の難しさに触れ「助成金などうまく活用して挑戦してほしい。いきなり大ヒットを狙うものではない。まず地元の人に知ってもらうことが重要」と結んだ。
 一方で児玉会長は高品質の地元フルーツを提供する「観音山フルーツパーラー」の全国展開や、SNSの活用、全国デパートなどでの試食販売、農業体験やフルーツ狩りといった観光客をターゲットに絞った手広い販売戦略を紹介し、「他がやらないことをやっている。リスクはあるが、大きなチャンスもある」と語った。
 6次化をうまく進めるためにはある程度の規模が必要とし、三島准教授に一部同意しつつも、「スピード感を大切にしている。補助金をもらっていると間に合わない」と組織的サポートの意思決定の遅さを指摘した。
 講演後ランチがあり、参加者が交流を深めた。大人の社会学セミナーは会員を募集している。問い合わせは「伊良湖ホテル&リゾート」(0531・34・2325)へ。
【岸侑輝】

編集後記

 講演した三重大学の准教授と和歌山のみかんの生産者。地方農業の活性化を阻害する構造的な要因を指摘していた。一方は「6次産業化は継続が難しい。地方の活性化に影響を与えるには、個ではなく地域、市、県が面として一定の規模に拡大しなければならない」と指摘する。一方で成功した生産者は「今の農業を取り巻く組織の意思決定は遅すぎるので一人で道を切り開いている」と主張する。
 どちらも正しい。個では地方活性化への影響は限界がある。だが組織に頼ると意思決定が遅すぎて起業家のような思考回路を持つ生産者は身動きが取れない。このジレンマこそが6次産業化が浸透しない構造的な問題である。
 一朝一夕には解決できないが、既存農業団体などの組織改革、成功した個、つまり経営者が組織化に注力をしていくプロセスが不可欠だ。
 【本紙客員編集委員・関健一郎】

 田原市伊良湖町の「伊良湖ホテル&リゾート」で食事付き講演会「大人の社会学セミナー」第2弾が開かれた。30人が参加した。
 講師は三重大学大学院生物資源学研究科生物資源学部の三島隆准教授と、「観音山フルーツガーデン」(和歌山県)の児玉典男会長。ともに地域資源活用と6次産業化について語った。
 三島准教授は、農林漁業者がそれぞれの生産だけでなく食品加工、流通販売にも取り組んで農山漁村の経済を豊かにするという6次産業化の定義をはじめ、2010年の地産地消法、県の農山漁村発イノベーション推進支援事業、17年の地域未来投資促進法などを紹介し、国や県の取り組みを解説した。
 田原市内で6次産業化に取り組み、国や県のサポートを受けている事例をまとめ、「地域資源をどう使うか、消費者にどう買ってもらうか、ビジネスモデルを明確に示せることが大切」と述べた。
 「豊橋筆」「豊橋カレーうどん」のように地名を入れた地域団体商標などを使って地域と資源を結び付けることが大きな武器になるため、商工会や商議所を頼り、地域一体でブランド力を上げていくのが肝心とした。
 三島准教授は事業継続の難しさに触れ「助成金などうまく活用して挑戦してほしい。いきなり大ヒットを狙うものではない。まず地元の人に知ってもらうことが重要」と結んだ。
 一方で児玉会長は高品質の地元フルーツを提供する「観音山フルーツパーラー」の全国展開や、SNSの活用、全国デパートなどでの試食販売、農業体験やフルーツ狩りといった観光客をターゲットに絞った手広い販売戦略を紹介し、「他がやらないことをやっている。リスクはあるが、大きなチャンスもある」と語った。
 6次化をうまく進めるためにはある程度の規模が必要とし、三島准教授に一部同意しつつも、「スピード感を大切にしている。補助金をもらっていると間に合わない」と組織的サポートの意思決定の遅さを指摘した。
 講演後ランチがあり、参加者が交流を深めた。大人の社会学セミナーは会員を募集している。問い合わせは「伊良湖ホテル&リゾート」(0531・34・2325)へ。
【岸侑輝】

編集後記

 講演した三重大学の准教授と和歌山のみかんの生産者。地方農業の活性化を阻害する構造的な要因を指摘していた。一方は「6次産業化は継続が難しい。地方の活性化に影響を与えるには、個ではなく地域、市、県が面として一定の規模に拡大しなければならない」と指摘する。一方で成功した生産者は「今の農業を取り巻く組織の意思決定は遅すぎるので一人で道を切り開いている」と主張する。
 どちらも正しい。個では地方活性化への影響は限界がある。だが組織に頼ると意思決定が遅すぎて起業家のような思考回路を持つ生産者は身動きが取れない。このジレンマこそが6次産業化が浸透しない構造的な問題である。
 一朝一夕には解決できないが、既存農業団体などの組織改革、成功した個、つまり経営者が組織化に注力をしていくプロセスが不可欠だ。
 【本紙客員編集委員・関健一郎】

三島准教授=伊良湖ホテル&リゾートで
三島准教授=伊良湖ホテル&リゾートで
児玉会長
児玉会長

カテゴリー:社会・経済

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