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児童養護施設の理想は地域に「大小混在」

地域小規模児童養護施設「かがやき」=豊川市で
地域小規模児童養護施設「かがやき」=豊川市で
かがやきの室内
かがやきの室内

国の「小規模・分散」推進で利点と課題浮き彫り

 保護者がいないか、虐待、貧困などの理由で親と一緒に暮らせない子どもたちを支援する児童養護施設。国は現在、施設の小規模化を進めている。その結果、子どもたちの個性を大切にできるようになる一方で、職員の負担の増加、レベルアップの方法という課題も見え始めた。現場は、大規模と小規模の施設の併存を求めている。
 2016年に児童福祉法が改正され、小規模化・地域分散化が進んでいる。家庭に近い環境で生活できるようにするのが狙いという。
 豊川市の「光輝寮」では、集団生活を前提にした大舎制施設に加え、2018年に2階建ての戸建て住宅を借り上げ、定員6人で基本的に高校生以上の男子児童が生活する地域小規模児童養護施設「かがやき」(2022年度より光輝寮分園として登録)を開設した。
 大舎制での集団生活の場合、子どもたちの生活の土台となる基本的な生活リズムは決まっているほか、生活用品など好きなものを選ぶことには制限がある。
 一方、かがやきでは職員と子どもたちが話し合ったうえで、それぞれの生活リズムに合わせて起床、食事、就寝の時間を決める。衣類や文房具などの備品は必要以上に常備せず、その都度子どもたちが予算立てして買ってくる形を取っている。社会的自立後の生活を見据え、各自に合ったスケジュールを組み立てていくことを目的としている。そのほか、社会的自立に向けての生活支援の一環として、料理や洗濯をする時もある。
 かがやきを担当する児童指導員の野口貴章さんは「子どもが自分で考え、行動できるように支援している。個性を生かすこともできる」と小規模施設のメリットを説明する。
 一方で課題もある。職員は引き継ぎの時間を除き、1人で対応する。何かあったときは1人で判断しなければならず、配置する職員はある程度の経験が必要になる。さらに他の職員の対応を見て学ぶことができない。
 野口さんは「集団生活をしている施設であれば、周囲に職員も多く、分からないことがあっても聞きやすい。ベテランが若手をヘルプすることもできる。職員育成の視点では、集団生活ができる大舎制施設の方が望ましい」と話す。別の施設では、宿直の負担も課題となっているという。
 施設に入所する子どもたちは、生活環境が乱れた状態でスタートするケースが多い。光輝寮では、大舎制の生活の中で基本的な習慣を立て直し、生きていく土台をつくりあげる。また、その過程で子ども社会を形成し、互いの関係性を育んで成長していく。これは、大舎制ならではのメリットだ。その先のステップアップとして、社会的自立を見据えた分園での生活支援が位置付けられている。
 また近年は虐待された子が入所するケースが多い。小規模化が進めば、兄弟がいる場合は別々の施設で暮らさなければならないケースも出てくる。
 現在、国は小規模化を推進しており、大舎制施設を建てる場合は補助金を出さない方針を掲げる。「多くの子どもが一緒に暮らす大舎制度だからこそのメリットがある。それぞれの良さが発揮できるよう、共存できる体制を望む」と多くの施設は訴える。
【竹下貴信】

国の「小規模・分散」推進で利点と課題浮き彫り

 保護者がいないか、虐待、貧困などの理由で親と一緒に暮らせない子どもたちを支援する児童養護施設。国は現在、施設の小規模化を進めている。その結果、子どもたちの個性を大切にできるようになる一方で、職員の負担の増加、レベルアップの方法という課題も見え始めた。現場は、大規模と小規模の施設の併存を求めている。
 2016年に児童福祉法が改正され、小規模化・地域分散化が進んでいる。家庭に近い環境で生活できるようにするのが狙いという。
 豊川市の「光輝寮」では、集団生活を前提にした大舎制施設に加え、2018年に2階建ての戸建て住宅を借り上げ、定員6人で基本的に高校生以上の男子児童が生活する地域小規模児童養護施設「かがやき」(2022年度より光輝寮分園として登録)を開設した。
 大舎制での集団生活の場合、子どもたちの生活の土台となる基本的な生活リズムは決まっているほか、生活用品など好きなものを選ぶことには制限がある。
 一方、かがやきでは職員と子どもたちが話し合ったうえで、それぞれの生活リズムに合わせて起床、食事、就寝の時間を決める。衣類や文房具などの備品は必要以上に常備せず、その都度子どもたちが予算立てして買ってくる形を取っている。社会的自立後の生活を見据え、各自に合ったスケジュールを組み立てていくことを目的としている。そのほか、社会的自立に向けての生活支援の一環として、料理や洗濯をする時もある。
 かがやきを担当する児童指導員の野口貴章さんは「子どもが自分で考え、行動できるように支援している。個性を生かすこともできる」と小規模施設のメリットを説明する。
 一方で課題もある。職員は引き継ぎの時間を除き、1人で対応する。何かあったときは1人で判断しなければならず、配置する職員はある程度の経験が必要になる。さらに他の職員の対応を見て学ぶことができない。
 野口さんは「集団生活をしている施設であれば、周囲に職員も多く、分からないことがあっても聞きやすい。ベテランが若手をヘルプすることもできる。職員育成の視点では、集団生活ができる大舎制施設の方が望ましい」と話す。別の施設では、宿直の負担も課題となっているという。
 施設に入所する子どもたちは、生活環境が乱れた状態でスタートするケースが多い。光輝寮では、大舎制の生活の中で基本的な習慣を立て直し、生きていく土台をつくりあげる。また、その過程で子ども社会を形成し、互いの関係性を育んで成長していく。これは、大舎制ならではのメリットだ。その先のステップアップとして、社会的自立を見据えた分園での生活支援が位置付けられている。
 また近年は虐待された子が入所するケースが多い。小規模化が進めば、兄弟がいる場合は別々の施設で暮らさなければならないケースも出てくる。
 現在、国は小規模化を推進しており、大舎制施設を建てる場合は補助金を出さない方針を掲げる。「多くの子どもが一緒に暮らす大舎制度だからこそのメリットがある。それぞれの良さが発揮できるよう、共存できる体制を望む」と多くの施設は訴える。
【竹下貴信】

地域小規模児童養護施設「かがやき」=豊川市で
地域小規模児童養護施設「かがやき」=豊川市で
かがやきの室内
かがやきの室内

カテゴリー:社会・経済

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