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共越
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松原用水・牟呂用水の歴史を振り返る(下)

カテゴリー:コラム

牟呂松原頭首工
牟呂松原頭首工
牟呂用水神社
牟呂用水神社

<灌漑(かんがい)と土の文明>

「だれが中国を養うのか」がベストセラーになったアメリカの高名な環境学者レスター・R・ブラウンは、その著書の中で米国では穀物1トンを収穫するごとに6トンもの土が失われていると指摘している。ところで、デイビッド・モントゴメリーの「土の文明史」(築地書館)というユニークな本をご存じだろうか。彼の分析によれば、多くの文明の歴史は共通の筋を辿っている。最初は肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある発展段階に達すると傾斜地での耕作に頼ることになる。その結果、森林が切り払われ、継続的に耕起することで、むき出しの土壌が雨と流水にさらされて斜面の土壌浸食を招き、養分不足となって収量が低下。土壌劣化は急増する人口を支えきれず、文明全体が破綻へと向かっていく。古代ギリシャもローマもマヤ文明もそうだった。例外はない。近代社会は、科学技術がほとんどの問題を解決するという信念を育んだが、現実には、土壌資源が生成されるより速く消費されるという問題は、現在の技術でも解決できていない。今のままでは私たちは、貴重な土壌資源を使い果たしてしまうことになる。そう言った意味で、土壌管理は人類史上最大の課題となっている。たしかに文明は一夜にして消滅はしないが、数世代にわたって土壌を失ってゆっくりと衰退してゆくというのが、モントゴメリーの分析である。ところで、この本には千年以上にわたり、土壌侵食防止と生産力維持を図ってきた水田についての言及がないのは残念なところである。一般的に日本の水田には、次のような隠れた役割がある。
・小さな「ダム」の役割、・地下水も作る役割、・稲の光合成による空気浄化の役割、・生物(昆虫、草花など)の多様性を維持する役割等である。特に明治初期に政府に依頼されて日本の土性を調査したドイツの世界的な地質学者であるフェスカが、水田のダムとしての役割を大きく評価していたことも忘れてはならないだろう。モントゴメリーの本には取り上げられていないが、日本の水田作には食料生産を持続していくための多くの技術的ヒントと知恵が隠されている。その意味で牟呂用水、松原用水が世界灌漑施設遺産に登録されたことは、今一度、郷土の先人の労苦を偲びながら、これからの郷土の農業のあり方を考えるべき時だということを私たちに告げているのではないだろうか。

<灌漑(かんがい)と土の文明>

「だれが中国を養うのか」がベストセラーになったアメリカの高名な環境学者レスター・R・ブラウンは、その著書の中で米国では穀物1トンを収穫するごとに6トンもの土が失われていると指摘している。ところで、デイビッド・モントゴメリーの「土の文明史」(築地書館)というユニークな本をご存じだろうか。彼の分析によれば、多くの文明の歴史は共通の筋を辿っている。最初は肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある発展段階に達すると傾斜地での耕作に頼ることになる。その結果、森林が切り払われ、継続的に耕起することで、むき出しの土壌が雨と流水にさらされて斜面の土壌浸食を招き、養分不足となって収量が低下。土壌劣化は急増する人口を支えきれず、文明全体が破綻へと向かっていく。古代ギリシャもローマもマヤ文明もそうだった。例外はない。近代社会は、科学技術がほとんどの問題を解決するという信念を育んだが、現実には、土壌資源が生成されるより速く消費されるという問題は、現在の技術でも解決できていない。今のままでは私たちは、貴重な土壌資源を使い果たしてしまうことになる。そう言った意味で、土壌管理は人類史上最大の課題となっている。たしかに文明は一夜にして消滅はしないが、数世代にわたって土壌を失ってゆっくりと衰退してゆくというのが、モントゴメリーの分析である。ところで、この本には千年以上にわたり、土壌侵食防止と生産力維持を図ってきた水田についての言及がないのは残念なところである。一般的に日本の水田には、次のような隠れた役割がある。
・小さな「ダム」の役割、・地下水も作る役割、・稲の光合成による空気浄化の役割、・生物(昆虫、草花など)の多様性を維持する役割等である。特に明治初期に政府に依頼されて日本の土性を調査したドイツの世界的な地質学者であるフェスカが、水田のダムとしての役割を大きく評価していたことも忘れてはならないだろう。モントゴメリーの本には取り上げられていないが、日本の水田作には食料生産を持続していくための多くの技術的ヒントと知恵が隠されている。その意味で牟呂用水、松原用水が世界灌漑施設遺産に登録されたことは、今一度、郷土の先人の労苦を偲びながら、これからの郷土の農業のあり方を考えるべき時だということを私たちに告げているのではないだろうか。

牟呂松原頭首工
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