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コンビニ ルポ㊤

カテゴリー:特集

人けのない平日の深夜に営業する「ファミリーマート新豊橋駅店」=豊橋駅で
人けのない平日の深夜に営業する「ファミリーマート新豊橋駅店」=豊橋駅で

人材不足で激変する業界

 深刻化する人手不足により、ビジネスモデルの転換を強いられている業界がある。「コンビニエンスストア」―。日本独自の進化を遂げたこの業態に今何が起きているのか。豊橋駅前のコンビニ6店舗に足を運び、その実態に迫った。

 12月17日午前3時04分、豊鉄渥美線新豊橋駅直結の「ファミリーマート新豊橋駅店」は、この日も皆が寝静まる中、休むことなく煌々(こうこう)とライトを光らせ営業していた。この時間、駅の利用客はゼロ。それでも店は眠ることなくLEDライトの白い電光を発し、人けのないぺデストリアンデッキを照らし続けている。
 「もう辞めたい」―。そう話すのは、この日の深夜、たった1人で「品出し」をしていたアルバイトの60代男性。白髪交じりの頭髪、か細い手足、猫背の背中。笑うと深くなる顔のしわからは、疲労が見て取れる。「来店客は電車通勤者がほとんど。終電が終わる午前1時15分から5時までは10数人程度しか来ない。深夜の時間は店を閉めてもいいのでは。もう私も歳。店が深夜営業をやめると言うなら、私も気持ちよく辞められます」
 また男性は「最近、お弁当と冷凍食品の来る時間が1時間遅くなり、品出しが朝までに終わらなくなった。物流業界も人材不足。しわ寄せが来ている」とため息をつく。
 同店の浜岡達也店長は「深夜は完全に赤字。そのうえ最近、夜勤者が1人辞めてしまい慢性的な人手不足。深夜は売上高が低い上に人件費が高い」と頭を抱える。
 同店は10月中旬から時短営業実証実験を開始。本部からの実験店舗の募集に手を挙げ、毎週日曜日深夜0時から翌朝5時までの営業休止に踏み切った。ファミリーマート全国640店舗で2次実験として実施中で、6~8月実施の1次実験では、売上高は減ったものの利益が上がったケースも出たという。東愛知新聞の取材に同社は「各地域によって必要な営業時間が異なると思うので、実験を通して適切な営業時間を見極めたい」と述べた。
 一方、豊橋駅西口から徒歩3分。この日の同時間帯、「ファミリーマート豊橋白河町店」で業務にあたっていた50代女性従業員は時短営業に異を唱える。「簡単に深夜営業をやめると言うけれど、こっちは生活がかかっている。安易に体制を変えないでほしい」。夜勤の仕事について「1人なのでレジと品出しの業務が重なった時が大変。コーヒーマシーンやおでんの容器の清掃も夜勤が担当。大変だけど、これが私の仕事ですから」と胸を張った。
 同店を訪れた自動車工場勤務の30代男性は「夜勤明けに毎日ビールとつまみを買いに来る。仕事終わりの1杯だけが楽しみ。この店が深夜閉まったら困る」と深夜の営業を切望した。
 24時間営業が当たり前だったコンビニ。便利の裏には、店の葛藤が見え隠れする。「ありがとうございました。またお越しくださいませ」―。同店で500㍉㍑ペットボトルの水とカレーパンを購入した筆者。右手の第1関節に食い込んだビニール袋がいつもより重たく感じた。
 次回はフランチャイズ加盟店オーナーの苦悩に迫る。
(木村裕貴)

人材不足で激変する業界

 深刻化する人手不足により、ビジネスモデルの転換を強いられている業界がある。「コンビニエンスストア」―。日本独自の進化を遂げたこの業態に今何が起きているのか。豊橋駅前のコンビニ6店舗に足を運び、その実態に迫った。

 12月17日午前3時04分、豊鉄渥美線新豊橋駅直結の「ファミリーマート新豊橋駅店」は、この日も皆が寝静まる中、休むことなく煌々(こうこう)とライトを光らせ営業していた。この時間、駅の利用客はゼロ。それでも店は眠ることなくLEDライトの白い電光を発し、人けのないぺデストリアンデッキを照らし続けている。
 「もう辞めたい」―。そう話すのは、この日の深夜、たった1人で「品出し」をしていたアルバイトの60代男性。白髪交じりの頭髪、か細い手足、猫背の背中。笑うと深くなる顔のしわからは、疲労が見て取れる。「来店客は電車通勤者がほとんど。終電が終わる午前1時15分から5時までは10数人程度しか来ない。深夜の時間は店を閉めてもいいのでは。もう私も歳。店が深夜営業をやめると言うなら、私も気持ちよく辞められます」
 また男性は「最近、お弁当と冷凍食品の来る時間が1時間遅くなり、品出しが朝までに終わらなくなった。物流業界も人材不足。しわ寄せが来ている」とため息をつく。
 同店の浜岡達也店長は「深夜は完全に赤字。そのうえ最近、夜勤者が1人辞めてしまい慢性的な人手不足。深夜は売上高が低い上に人件費が高い」と頭を抱える。
 同店は10月中旬から時短営業実証実験を開始。本部からの実験店舗の募集に手を挙げ、毎週日曜日深夜0時から翌朝5時までの営業休止に踏み切った。ファミリーマート全国640店舗で2次実験として実施中で、6~8月実施の1次実験では、売上高は減ったものの利益が上がったケースも出たという。東愛知新聞の取材に同社は「各地域によって必要な営業時間が異なると思うので、実験を通して適切な営業時間を見極めたい」と述べた。
 一方、豊橋駅西口から徒歩3分。この日の同時間帯、「ファミリーマート豊橋白河町店」で業務にあたっていた50代女性従業員は時短営業に異を唱える。「簡単に深夜営業をやめると言うけれど、こっちは生活がかかっている。安易に体制を変えないでほしい」。夜勤の仕事について「1人なのでレジと品出しの業務が重なった時が大変。コーヒーマシーンやおでんの容器の清掃も夜勤が担当。大変だけど、これが私の仕事ですから」と胸を張った。
 同店を訪れた自動車工場勤務の30代男性は「夜勤明けに毎日ビールとつまみを買いに来る。仕事終わりの1杯だけが楽しみ。この店が深夜閉まったら困る」と深夜の営業を切望した。
 24時間営業が当たり前だったコンビニ。便利の裏には、店の葛藤が見え隠れする。「ありがとうございました。またお越しくださいませ」―。同店で500㍉㍑ペットボトルの水とカレーパンを購入した筆者。右手の第1関節に食い込んだビニール袋がいつもより重たく感じた。
 次回はフランチャイズ加盟店オーナーの苦悩に迫る。
(木村裕貴)

人けのない平日の深夜に営業する「ファミリーマート新豊橋駅店」=豊橋駅で
人けのない平日の深夜に営業する「ファミリーマート新豊橋駅店」=豊橋駅で

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