文字の大きさ

設楽ダム工期延長で関係者困惑

工期延長に伴い基本構想作成も中断される「山村都市交流拠点施設」の建設予定地=設楽町で
工期延長に伴い基本構想作成も中断される「山村都市交流拠点施設」の建設予定地=設楽町で
設楽ダム工期延長で関係者困惑

水源地再建や治水への影響危ぐ

 設楽町で進めている「設楽ダム」の建設について、国土交通省中部地方整備局が工期延長と事業費の増加方針を示した。豊川(とよがわ)流域で受益者となる東三河の自治体では、水源地の生活再建などに配慮するとともに、早期実現を図る治水対策への影響にも心配を募らせる。一方、建設反対派は膨らむ事業費に警鐘を鳴らす。
 中部地整局「ダム事業費等監理委員会」の17日の報告では、工期の8年延長と事業費800億円増の総額3200億円とする方針を示した。地すべり対策に伴う掘削量の増大のほか、現場の働き方改革や物価高などが背景にある。
 報告を受けて設楽町の土屋浩町長は同日夜にコメントを発表。
 「現場の地理的要因のほか、働き方改革や物価高など社会要因も分かる」と理解を示す一方、「計画申し入れから約50年。移転を決めた水没地域の住民らの苦しみを思うと耐え難い」と胸の内を語った。さらに工期延長で、付替道路や生活道路整備の進み具合、まちづくりや水源地域整備事業などの計画と社会情勢に見合わなくなる点などに不安を募らせる。
 豊橋市の浅井由崇市長も国交省の報告内容には理解を示しつつ、水源地の再建や流域の治水事業については、計画通りの実施を望んだ。
 その中で「豊川水系流域治水プロジェクトで洪水時の被害軽減に努めている。特に霞堤(かすみてい)地区は安全対策へいち早く事業を進めてほしい」と求めた。
 隣接する新城市の下江洋行市長も報告には理解を示しつつ「引き続き総事業費の圧縮や工期短縮に取り組んでほしい。水源地域の皆さんの生活再建対策は重要」などと配慮した。
 東三河広域連合では完成を見通して昨年、ダムサイトの一角に「山村都市交流拠点施設」の整備構想を打ち出した。2027年完成へ今年度は基本計画作成を予定し、外部委託事業者の募集を始めたばかり。
 連合では「委託契約前なので違約金などは発生しなかった。8年後まで社会情勢の変化を踏まえることも必要」と動向に注視する構えだ。

事業費増に警鐘も

 一方、「設楽ダムの建設中止を求める会」の前代表で元愛知大学教授の市野和夫さんは「当初事業費2070億円から1・5倍超に膨らむ。別の方法で治水対策をした方が安い」と指摘した。
 また「現場は地質が悪く不適切な立地。地すべり対策は、上流部にある深層崩壊の危険箇所に施すもので、膨大な工事になる。うまくいくかも不明。すでに一部工事は始まったことを現地視察で確認した」と述べた。
 この時期の発表は「物価高騰でごまかしきれなくなったからでは」と推測。ダム工事の今後について「渇水対策は十分で治水は下流の堤防工事で済む。今からでもダムはやめるべきだ」と主張した。

衆院議員の根本氏コメント

 元国土交通政務官で自民党の根本幸典衆院議員(愛知15区)は18日、東愛知新聞の電話取材に応じ、国が示した工期延長や総事業費増額の方針について考えを述べた。
 根本氏は「地すべり対策など技術的要因に、現場での働き方改革や物価高など社会的要因も重なった。これは受け入れざるを得ない」との認識を示した。
 地元への生活再建や治水への影響は「生活道路の付け替えなど新たな負担増を下流域の受益者全体で支えるべきだ」とした。下流域の治水については「霞堤(かすみてい)のある地区での安全対策を急ぐよう、国への働き掛けを強めたい」との考えを示した。
 働き方改革が工期延長に与える影響について「社会や時代の要請で、建設業界の人材確保にも不可欠だ」と理解を求めた。将来的には「事業の長期化傾向となれば、機材リースなどの負担や総事業費の増加につながる。国土強靭化への新たな課題になり得る」と指摘した。
【取材班】

水源地再建や治水への影響危ぐ

 設楽町で進めている「設楽ダム」の建設について、国土交通省中部地方整備局が工期延長と事業費の増加方針を示した。豊川(とよがわ)流域で受益者となる東三河の自治体では、水源地の生活再建などに配慮するとともに、早期実現を図る治水対策への影響にも心配を募らせる。一方、建設反対派は膨らむ事業費に警鐘を鳴らす。
 中部地整局「ダム事業費等監理委員会」の17日の報告では、工期の8年延長と事業費800億円増の総額3200億円とする方針を示した。地すべり対策に伴う掘削量の増大のほか、現場の働き方改革や物価高などが背景にある。
 報告を受けて設楽町の土屋浩町長は同日夜にコメントを発表。
 「現場の地理的要因のほか、働き方改革や物価高など社会要因も分かる」と理解を示す一方、「計画申し入れから約50年。移転を決めた水没地域の住民らの苦しみを思うと耐え難い」と胸の内を語った。さらに工期延長で、付替道路や生活道路整備の進み具合、まちづくりや水源地域整備事業などの計画と社会情勢に見合わなくなる点などに不安を募らせる。
 豊橋市の浅井由崇市長も国交省の報告内容には理解を示しつつ、水源地の再建や流域の治水事業については、計画通りの実施を望んだ。
 その中で「豊川水系流域治水プロジェクトで洪水時の被害軽減に努めている。特に霞堤(かすみてい)地区は安全対策へいち早く事業を進めてほしい」と求めた。
 隣接する新城市の下江洋行市長も報告には理解を示しつつ「引き続き総事業費の圧縮や工期短縮に取り組んでほしい。水源地域の皆さんの生活再建対策は重要」などと配慮した。
 東三河広域連合では完成を見通して昨年、ダムサイトの一角に「山村都市交流拠点施設」の整備構想を打ち出した。2027年完成へ今年度は基本計画作成を予定し、外部委託事業者の募集を始めたばかり。
 連合では「委託契約前なので違約金などは発生しなかった。8年後まで社会情勢の変化を踏まえることも必要」と動向に注視する構えだ。

事業費増に警鐘も

 一方、「設楽ダムの建設中止を求める会」の前代表で元愛知大学教授の市野和夫さんは「当初事業費2070億円から1・5倍超に膨らむ。別の方法で治水対策をした方が安い」と指摘した。
 また「現場は地質が悪く不適切な立地。地すべり対策は、上流部にある深層崩壊の危険箇所に施すもので、膨大な工事になる。うまくいくかも不明。すでに一部工事は始まったことを現地視察で確認した」と述べた。
 この時期の発表は「物価高騰でごまかしきれなくなったからでは」と推測。ダム工事の今後について「渇水対策は十分で治水は下流の堤防工事で済む。今からでもダムはやめるべきだ」と主張した。

衆院議員の根本氏コメント

 元国土交通政務官で自民党の根本幸典衆院議員(愛知15区)は18日、東愛知新聞の電話取材に応じ、国が示した工期延長や総事業費増額の方針について考えを述べた。
 根本氏は「地すべり対策など技術的要因に、現場での働き方改革や物価高など社会的要因も重なった。これは受け入れざるを得ない」との認識を示した。
 地元への生活再建や治水への影響は「生活道路の付け替えなど新たな負担増を下流域の受益者全体で支えるべきだ」とした。下流域の治水については「霞堤(かすみてい)のある地区での安全対策を急ぐよう、国への働き掛けを強めたい」との考えを示した。
 働き方改革が工期延長に与える影響について「社会や時代の要請で、建設業界の人材確保にも不可欠だ」と理解を求めた。将来的には「事業の長期化傾向となれば、機材リースなどの負担や総事業費の増加につながる。国土強靭化への新たな課題になり得る」と指摘した。
【取材班】

工期延長に伴い基本構想作成も中断される「山村都市交流拠点施設」の建設予定地=設楽町で
工期延長に伴い基本構想作成も中断される「山村都市交流拠点施設」の建設予定地=設楽町で
設楽ダム工期延長で関係者困惑

カテゴリー:政治・行政

 PR

PR