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トランプ現象を読み解く

カテゴリー:コラム

暴露合戦とFBI捜査まで飛び出した混乱の米国大統領選挙が終わりました。
11月20日に、第45代大統領に就任するトランプ氏は、戦後一貫して従米路線を貫いてきた日本政府が驚くような今までとは全く違うスタンスを日本にとってくる可能性を秘めています。それは、70年続いた戦後という時代の「不連続点」が訪れることを意味しているのかもしれません。この70年間続いた「アメリカありき」の前提条件が砂上の楼閣のように崩れ去る時を迎えるかもしれないということです。
ところで、フランスの碩学、エマニュエル・トッドは「帝国以後」(藤原書店2003年)で、今から十年以上前にパックスアメリカーナの終焉を的確に分析しています。著者のトッドは、乳児死亡率の上昇を根拠にソビエト連邦崩壊を独特の視点で見事に予言した「最後の転落」(1976年)を書いたこと、フランスのシラク政権のブレインだったことでも有名です。それでは、この本の内容を少し紹介します。

「1950年から1990年までの世界の非共産化部分に対するアメリカの覇権は、ほとんど帝国の名に値するものであった。(略)
共産主義の崩壊は、依存の過程を劇的に加速化することとなった。1990年から2000年の間に、アメリカの貿易赤字は、1000億ドルから4500億ドルに増加した。その対外勘定の均衡をとるために、アメリカはそれと同額の外国資本の流入を必要とする。この第三千年紀開幕にあたって、アメリカ合衆国は自分の生産だけでは生きて行けなくなっていたのである。教育的・人口学的・民主主義的安定化の進行によって、世界がアメリカなしで生きられることを発見しつつあるその時に、アメリカは世界なしでは生きられないことに気づきつつある。(p37-38)
どのようにして、どの程度の早さで、ヨーロッパ、日本、その他の投資家たちが身ぐるみ剥がされるかは、まだ、わからないが、早晩身ぐるみ剥がされることは間違いない。最も考えられるのは、前代未聞の規模の証券パニックに続いてドル崩壊が起こるという連鎖反応で、その結果は、アメリカ合衆国の「帝国」としての経済的地位に終止符を打つことになろう。(P143)」

また、トッドは20世紀にはいかなる国も戦争によって、もしくは軍事力の増強のみによって、国力を増大させることに成功していない、米国は長期間にわたって旧世界の軍事的紛争に巻き込まれることを巧みに避けることができたために、20世紀の勝利者となったと冷静に分析しています。
ところで2015年の人口動態調査によると現在のアメリカでは、45~54歳の白人の死亡率が1999年以降、上昇し続けているという異常な事態になっています。トッドは、このこともグローバル化疲れ(グローバリゼーション・ファティーグ)によるものの一つだと分析しています。
これが今回のトランプ現象を創り出したものであり、英国のEU離脱、多くの米国民がTPPに反対している背景にあるとも指摘しています。
終戦後70年間、アメリカシステムの中に組み込まれてきた日本も21世紀にふさわしい今後の在り方を考える時を迎えたようです。地方も同様です。
(統括本部長 山本正樹)

暴露合戦とFBI捜査まで飛び出した混乱の米国大統領選挙が終わりました。
11月20日に、第45代大統領に就任するトランプ氏は、戦後一貫して従米路線を貫いてきた日本政府が驚くような今までとは全く違うスタンスを日本にとってくる可能性を秘めています。それは、70年続いた戦後という時代の「不連続点」が訪れることを意味しているのかもしれません。この70年間続いた「アメリカありき」の前提条件が砂上の楼閣のように崩れ去る時を迎えるかもしれないということです。
ところで、フランスの碩学、エマニュエル・トッドは「帝国以後」(藤原書店2003年)で、今から十年以上前にパックスアメリカーナの終焉を的確に分析しています。著者のトッドは、乳児死亡率の上昇を根拠にソビエト連邦崩壊を独特の視点で見事に予言した「最後の転落」(1976年)を書いたこと、フランスのシラク政権のブレインだったことでも有名です。それでは、この本の内容を少し紹介します。

「1950年から1990年までの世界の非共産化部分に対するアメリカの覇権は、ほとんど帝国の名に値するものであった。(略)
共産主義の崩壊は、依存の過程を劇的に加速化することとなった。1990年から2000年の間に、アメリカの貿易赤字は、1000億ドルから4500億ドルに増加した。その対外勘定の均衡をとるために、アメリカはそれと同額の外国資本の流入を必要とする。この第三千年紀開幕にあたって、アメリカ合衆国は自分の生産だけでは生きて行けなくなっていたのである。教育的・人口学的・民主主義的安定化の進行によって、世界がアメリカなしで生きられることを発見しつつあるその時に、アメリカは世界なしでは生きられないことに気づきつつある。(p37-38)
どのようにして、どの程度の早さで、ヨーロッパ、日本、その他の投資家たちが身ぐるみ剥がされるかは、まだ、わからないが、早晩身ぐるみ剥がされることは間違いない。最も考えられるのは、前代未聞の規模の証券パニックに続いてドル崩壊が起こるという連鎖反応で、その結果は、アメリカ合衆国の「帝国」としての経済的地位に終止符を打つことになろう。(P143)」

また、トッドは20世紀にはいかなる国も戦争によって、もしくは軍事力の増強のみによって、国力を増大させることに成功していない、米国は長期間にわたって旧世界の軍事的紛争に巻き込まれることを巧みに避けることができたために、20世紀の勝利者となったと冷静に分析しています。
ところで2015年の人口動態調査によると現在のアメリカでは、45~54歳の白人の死亡率が1999年以降、上昇し続けているという異常な事態になっています。トッドは、このこともグローバル化疲れ(グローバリゼーション・ファティーグ)によるものの一つだと分析しています。
これが今回のトランプ現象を創り出したものであり、英国のEU離脱、多くの米国民がTPPに反対している背景にあるとも指摘しています。
終戦後70年間、アメリカシステムの中に組み込まれてきた日本も21世紀にふさわしい今後の在り方を考える時を迎えたようです。地方も同様です。
(統括本部長 山本正樹)

カテゴリー:コラム

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