豊橋の「ヘアースタジオ髪ING」が100周年

　豊橋市南大清水町の理美容店「ヘアースタジオ髪ＩＮＧ（カミング）」が今年で創業１００周年を迎えた。祖父が大正時代に現在の広小路２で理髪店を興し、時代とともに場所や業容を変えつつ現在まで生き延びてきた。三代目の澤山卓司店主（64）は「美しい髪を届けたい」と誓いを新たにする。

　祖父の太市さんと祖母ゆきえさんが広小路通りに開いた「沢山理髪店」が前身だ。父正年さんも後を継いだ理髪店は卓司さんが生まれ育った実家でもある。
　「将来は跡取り」と期待されたが、当時「幼い頃から大変さは間近で見ていた。継ごうなんて考えていなかった」と振り返る。短大へ進学したのも安定したサラリーマンになろうとの考えからだった。
　一方、学生時代のアルバイト先は友人に紹介された豊橋駅前の美容室だった。実家が理容室のため抵抗なく始めたアルバイトだったが、「師」と仰ぐ店主の指導で奥深さに引き込まれた。
　祖父や父と違う美容業を目指そうと決め、卒業後は東京都内の美容室で８年間修業した。
　27歳で帰郷したのは１９８６年、まだ「バブル前夜」で上り調子の時代だった。豊橋駅前の中心街も人通りでにぎわっていたが郊外での出店に踏み切った。
　「車社会がさらに進めば、中心街のにぎわいは衰退してしまうのではと恐れた」と卓司さん。
　実家の理髪店とのれん分けするように、曙町のマンション１階でテナントとして開業したのが現在の美容室だ。
　バブルへと宅地開発も進み、５年後の91年には現在地に念願の店を構えた卓司さん。一時は田原市内と実家の理髪店の３店舗を営んだ。
　開業時の常連には近隣の豊橋技術科学大学の学生らも多く、当時の「貧乏学生」の中には大学で教える研究者も。常連客を集めた10日の謝恩パーティーでは出世した常連客も駆けつけた。
　35年を超えた美容室はスタッフが総勢７人まで成長。自らも後継者問題に直面する立場になった。今は現場では常連客相手に出る程度という卓司さん。
　「若いお客さんは若手が担うべき。職人気質からチームワークへの脱皮が必要。専念できる経営者も不可欠だ。『美しい髪と健康』の追求が経営のテーマ」と語る。
【加藤広宣】