新城吹奏楽団が11日 亡き師に捧げる定期演奏会

　新城吹奏楽団の常任指揮者で元県立新城東高校音楽教諭の山本家寛さんが11月20日に亡くなった。享年84。今月11日に第95回定期演奏会を控えていた。プログラムは山本さんが構成しており、団員たちは山本さんへの恩返しの気持ちを込めて演奏する。

　山本さんは県立時習館高校、京都市立音楽短期大学を卒業後、１９５８年に御津町立御津中学校の教員として着任。63年から県立新城高校、72年に新設の新城東高校に赴任し、２００１年度まで29年間、音楽を教えた。私立杜若高校（豊田市）などの校歌の作曲でも知られる。
　吹奏楽団では１９７３年の結成当初から指揮者を務めた。昨年５月は没後２３０年のモーツアルト、同12月には生誕１００年のアルフレッド・リードにスポットを当てるなど、有名作曲家の生没年などの節目を伝えるために曲目を選んだ。
　95回目の演奏会は３部構成。生誕２９０年のハイドンと、３部に同１６０年のドビュッシーから選曲し、自作曲２曲を含めて８曲の指揮を務める予定だった。

　妻正子さん（81）によると、外出時には常にダブルのジャケット、ちょうネクタイ姿で、胸ポケットには指揮棒を入れていた。11月14日、体調が悪化して救急車を呼んだ際も、着替えてから車に乗った。病室に五線紙と鉛筆を持ってくるよう頼んできたという。「とにかく作曲が好きでした」と振り返る。
　病床では団員が渡してくれた携帯電話で連絡を取り合い、来年以降の公演に向け、チャイコフスキーやグリーグ、メンデルスゾーンをオーケストラ用に編曲していた。
　亡くなる直前、豊橋東高校創立１２０周年記念第九演奏会に出演した長女が病院を訪ねた際には、すでに意識がなかったが、演奏の報告に体が反応を示したという。正子さんは「ベートーベンが好きだったから、つい体が動いたようでした」という。「１００回目の演奏会を楽しみにしていたのに」と残念がった。

　吹奏楽団は今回、山本さんの選曲どおりに進める。指揮する原田美香恵さん（57）は高校時代の教え子。「音楽の道を作ってくれました。大学受験時にも付きっきりで指導してくれたのは忘れません。演奏で恩返ししたい」と述べた。
　演奏会は11日午後２時に大ホールで開演。入場券は１０００円。前売り小中高生５００円、一般８００円。新城文化会館、ピアゴ新城店などで販売中。
【安藤聡】