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東三河の水と農㊤

カテゴリー:特集

食料需給量の見通し(農林水産省資料から抜粋)
食料需給量の見通し(農林水産省資料から抜粋)

どうする東三河の農業、食料危機の時代に課題山積

 気候変動や地政学リスクなど、さまざまな要因で世界の食と農業が危機を迎えつつある。農業生産に影響を与える異常気象は増えた。昨年から続くロシアのウクライナ侵攻で穀物や肥料原料などの供給不安が表面化した。農業依存度の高い国では飢餓が再び増加に転じるなど、食料危機が現実味を帯びている。食の安全保障が揺らぐ中、国内では農業生産性や担い手減少などの課題を抱える。
 気候変動は小麦やトウモロコシなどの生産を脅かしつつある。猛烈な暑さや干ばつ、洪水、暴風雨などの異常気象を背景とした自然災害は1990年から2016年までに年平均213件発生しているという。農業依存度の高い国では著しく飢餓が進んでいるともいう。
 FAO(国連食糧農業機関)が2018年にまとめた「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、減りつつあった飢餓人口はここ数年で増加に転じた。約10年前の水準まで後退したという。
 また、昨年はロシアがウクライナに侵攻した。ウクライナは小麦やトウモロコシなどの供給量で世界の上位3カ国に入る。同国政府によると紛争の影響で22年の農産品輸出額は前年の277億㌦からほぼ半減した。
 一方、ロシアは窒素やカリウム、リンの肥料原料で世界的な輸出国だ。化学肥料のほぼ全量を輸入に頼る日本は1㌶あたりの消費量は268㌔で世界2位。中国の輸出制限も加わり、輸入肥料は調達先の変更も迫られた。
 農林水産省の食料需給予測では、2050年の需要量は世界で58・17億㌧を見込む。畜産物と穀物の増加が要因で2010年に比べ1・7倍、人口増や経済発展により低所得国は2・7倍となる見通しだ。
 世界的な食糧危機が迫る中、国内農業はどうか。農林水産省の作物統計や農業産出額などを基に推計した、都道府県別の生産性伸び率で愛知県は2015年までの15年間で1%を下回った。群馬や長野県などは30%前後で伸びる中、生産性向上が課題となっている。
 また、担い手減少も深刻だ。20年の「農業センサス」によると、東三河の農業経営体は9296件で、5年間で約2100件(約18%)減った。このまま進めば30年には約5600件まで減り続けるという。
 さらに昨年は鳥インフルエンザウイルスでニワトリやアイガモが大量に殺処分された。感染による殺処分は全国でも過去最大となり、飼料価格高騰の影響で卵の値上がりも深刻化した。

11日は豊橋で「水と農」シンポ

 東三河の農業は豊川用水に支えられ発展してきた。世界が食糧危機を迎える中、地域の農業を支える「豊川(とよがわ)総合用水土地改良区」では、インフラ強化や情報化に取り組んでいる。11日には各分野の専門家らを豊橋市に迎え「水と農」の課題を考えるシンポジウムを開く。
(続きは本紙でお楽しみください)

どうする東三河の農業、食料危機の時代に課題山積

 気候変動や地政学リスクなど、さまざまな要因で世界の食と農業が危機を迎えつつある。農業生産に影響を与える異常気象は増えた。昨年から続くロシアのウクライナ侵攻で穀物や肥料原料などの供給不安が表面化した。農業依存度の高い国では飢餓が再び増加に転じるなど、食料危機が現実味を帯びている。食の安全保障が揺らぐ中、国内では農業生産性や担い手減少などの課題を抱える。
 気候変動は小麦やトウモロコシなどの生産を脅かしつつある。猛烈な暑さや干ばつ、洪水、暴風雨などの異常気象を背景とした自然災害は1990年から2016年までに年平均213件発生しているという。農業依存度の高い国では著しく飢餓が進んでいるともいう。
 FAO(国連食糧農業機関)が2018年にまとめた「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、減りつつあった飢餓人口はここ数年で増加に転じた。約10年前の水準まで後退したという。
 また、昨年はロシアがウクライナに侵攻した。ウクライナは小麦やトウモロコシなどの供給量で世界の上位3カ国に入る。同国政府によると紛争の影響で22年の農産品輸出額は前年の277億㌦からほぼ半減した。
 一方、ロシアは窒素やカリウム、リンの肥料原料で世界的な輸出国だ。化学肥料のほぼ全量を輸入に頼る日本は1㌶あたりの消費量は268㌔で世界2位。中国の輸出制限も加わり、輸入肥料は調達先の変更も迫られた。
 農林水産省の食料需給予測では、2050年の需要量は世界で58・17億㌧を見込む。畜産物と穀物の増加が要因で2010年に比べ1・7倍、人口増や経済発展により低所得国は2・7倍となる見通しだ。
 世界的な食糧危機が迫る中、国内農業はどうか。農林水産省の作物統計や農業産出額などを基に推計した、都道府県別の生産性伸び率で愛知県は2015年までの15年間で1%を下回った。群馬や長野県などは30%前後で伸びる中、生産性向上が課題となっている。
 また、担い手減少も深刻だ。20年の「農業センサス」によると、東三河の農業経営体は9296件で、5年間で約2100件(約18%)減った。このまま進めば30年には約5600件まで減り続けるという。
 さらに昨年は鳥インフルエンザウイルスでニワトリやアイガモが大量に殺処分された。感染による殺処分は全国でも過去最大となり、飼料価格高騰の影響で卵の値上がりも深刻化した。

11日は豊橋で「水と農」シンポ

 東三河の農業は豊川用水に支えられ発展してきた。世界が食糧危機を迎える中、地域の農業を支える「豊川(とよがわ)総合用水土地改良区」では、インフラ強化や情報化に取り組んでいる。11日には各分野の専門家らを豊橋市に迎え「水と農」の課題を考えるシンポジウムを開く。
(続きは本紙でお楽しみください)

食料需給量の見通し(農林水産省資料から抜粋)
食料需給量の見通し(農林水産省資料から抜粋)

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