AI搬送ロボの安全性実証

豊橋・武蔵精密グループ企業　制御基板「マエストロ」開発

　豊橋市の自動車部品大手「武蔵精密工業」のグループ企業が、ＡＩ（人工知能）を生かした工場での搬送ロボットを効率制御するプラットフォーム（基盤）「マエストロ」を開発し、報道関係者らに公開した。人や物の動きをモニターで一元管理し、業務効率や安全性向上のほか、人手不足への対応にもつながるという。

　武蔵精密とイスラエルのスタートアップ「ＳＩＸＡＩ」の合弁企業「６３４（シックススリーフォー）ＡＩ」（イスラエル）が開発した。工場内の天井に複数のカメラを設け映像をＡＩが分析。ロボットの動きからパレット枚数や配置などを常時モニターで把握。危険予測や警告などのほか、在庫や生産効率を確認できる「ＫＰＩモニタリング」の機能もある。
　武蔵精密植田工場で25日にあったデモンストレーションでは、６３４ＡＩ社のアナット・カファンＣＥＯ（最高経営責任者）が画面を使って工場内の動きを示し、パレットに積んだ荷物を指定場所へ搬送ロボに運ばせる作業などを披露。ロボットの進路に人が立つと急停止したり、荷崩れなどを起こした箇所への立ち入りを禁止したりする安全性の機能を実証してみせた。
　マエストロ導入で、可視化が困難なフォークリフト稼働状況の把握や労働災害コストの削減効果が見込めるほか、物流現場で心配されるフォークリフト運転者の人材不足などの課題解決にも期待できるという。
　武蔵精密によると植田工場やイスラエルで試験導入しており、技術面の改善を経て国内外の製造業や物流拠点への普及を図る。
　武蔵精密の大塚浩史社長は「イスラエルの最先端ＡＩ技術、日本が誇るものづくりの力を合わせることで技術革新を起こしたい」と述べた。
　ほか、もう一つの合弁会社「Ｍｕｓａｓｈｉ　ＡＩ」が開発したＡＩ外観検査機も紹介。自動車部品などで検査不良を１００％検出でき、トヨタ自動車が導入したことで話題にもなった。熟練工などの加齢に伴う検出率低下の心配もなく、より人間らしい仕事に人員を振り向けることも見込めるという。
【加藤広宣】