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役者の傍らで手話通訳 新しいスタイルの映画

間もなく撮影開始。右端が加藤さん。ここで手話通訳する=愛知大学逍遥館で
間もなく撮影開始。右端が加藤さん。ここで手話通訳する=愛知大学逍遥館で
イメージショット。リリカ役の安藤叶さん㊧とマリア役の花村美緒さん (提供)
イメージショット。リリカ役の安藤叶さん㊧とマリア役の花村美緒さん (提供)
指導する上田准教授㊨
指導する上田准教授㊨

愛大・上田准教授ゼミの研究

 手話通訳者が役者と一緒に画面に登場し、そのセリフを伝える新しい映画の撮影が、愛知大学豊橋キャンパスを中心に進んでいる。同大文学部メディア芸術専攻の上田謙太郎准教授ゼミの研究で、1月に豊橋市の「穂の国とよはし芸術劇場プラット」で上映する。

 タイトルは「リリカとマリア」。45~60分の中編になる予定だ。脚本、出演、撮影などもすべて3年生のゼミ生がこなす。
 聴覚障害者への映画鑑賞サービスは、撮影後に付けた字幕などがある。今回は画面の中に手話通訳者を登場させることで、鑑賞サービスにすると同時に、映画表現としても新しいスタイルを目指している。手話を知らない観客も楽しめる。

 役者には固有の手話通訳者がつく。舞台通訳者の加藤真紀子さんと高田美香さんが指導係で、映画に出演する。他の手話通訳者はゼミ生で、セリフを訳した加藤さんの手話表現を動画で学習し、撮影に備えた。
 9~10月に撮影を準備し、今月クランクイン。19日には豊橋キャンパス逍遥館で撮影があった。一つは4人の学生が食堂でうわさ話をしているシーンだった。緑色の服を着た4人の通訳者が傍らに立っている。役者のセリフの後、ややあって手話表現する。

 役者がセリフを語る場面と手話通訳の場面を並立させ、役者と手話通訳者の両方をしっかり見られる構図とテンポづくりがポイント。上田准教授によると、同時通訳にすると、登場人物と手話通訳との間で観客の視線が振られて見づらなくなる。そこで、セリフが終わってから手話通訳をするようにしているという。「手話は『動体』なので、観客はどうしても映像中の動くものに反射的に注目してしまう。まずは登場人物の方をしっかり見て次に手話通訳を見る、という順序を作っている」と説明した。
 通常の手話は同時通訳だ。それをコントロールし、敢えてタイミングをずらしている。5回目の撮影となった加藤さんによると、セリフと手話を完全にずらす▽半分くらいずらす▽同時通訳に近い―のパターンがある。芝居の勢いやセリフの長さによって演出担当の学生が使い分けているそうだ。

 主人公の後ろからと正面からの2カットを撮った。リリカが席に座ったまま後ろを振り向くと、立っている加藤さんも振り向き、セリフを訳した。加藤さんは「役者の気持ちを表現するために必要な動き。手話通訳者のアドリブもあるし、表情も使い分ける」と話す。
 演出を巡って学生が上田准教授に意見することもあった。キャストとスタッフに聴覚障害者は入っていないが、試作版を見てもらい「手話通訳者の衣装の色をそろえたほうが見やすい」というアドバイスを得たという。

 上田准教授は「誰も見たことがない映画だと思います。『観客の度肝を抜くような映画を作る!』と宣言して始めたプロジェクト。ぜひその真価を確かめに来てください」と呼び掛ける。
 12月に編集し、上映は1月6日午後1時半、プラットの「アートスペース」で。入場無料。豊橋文化振興財団共催。
【山田一晶】


 あらすじ 大学生リリカは、「お嬢」とやゆされる大学生マリアと出会う。しっかり者だが友達との関係に不満を持っているリリカは、成績優秀なのに勝手気ままで生活力のないマリアにひかれていく。偶然同じアパートに住んでいる2人は次第に仲良くなった。ところが、ある時リリカはマリアのお金を盗んでしまい…。

愛大・上田准教授ゼミの研究

 手話通訳者が役者と一緒に画面に登場し、そのセリフを伝える新しい映画の撮影が、愛知大学豊橋キャンパスを中心に進んでいる。同大文学部メディア芸術専攻の上田謙太郎准教授ゼミの研究で、1月に豊橋市の「穂の国とよはし芸術劇場プラット」で上映する。

 タイトルは「リリカとマリア」。45~60分の中編になる予定だ。脚本、出演、撮影などもすべて3年生のゼミ生がこなす。
 聴覚障害者への映画鑑賞サービスは、撮影後に付けた字幕などがある。今回は画面の中に手話通訳者を登場させることで、鑑賞サービスにすると同時に、映画表現としても新しいスタイルを目指している。手話を知らない観客も楽しめる。

 役者には固有の手話通訳者がつく。舞台通訳者の加藤真紀子さんと高田美香さんが指導係で、映画に出演する。他の手話通訳者はゼミ生で、セリフを訳した加藤さんの手話表現を動画で学習し、撮影に備えた。
 9~10月に撮影を準備し、今月クランクイン。19日には豊橋キャンパス逍遥館で撮影があった。一つは4人の学生が食堂でうわさ話をしているシーンだった。緑色の服を着た4人の通訳者が傍らに立っている。役者のセリフの後、ややあって手話表現する。

 役者がセリフを語る場面と手話通訳の場面を並立させ、役者と手話通訳者の両方をしっかり見られる構図とテンポづくりがポイント。上田准教授によると、同時通訳にすると、登場人物と手話通訳との間で観客の視線が振られて見づらなくなる。そこで、セリフが終わってから手話通訳をするようにしているという。「手話は『動体』なので、観客はどうしても映像中の動くものに反射的に注目してしまう。まずは登場人物の方をしっかり見て次に手話通訳を見る、という順序を作っている」と説明した。
 通常の手話は同時通訳だ。それをコントロールし、敢えてタイミングをずらしている。5回目の撮影となった加藤さんによると、セリフと手話を完全にずらす▽半分くらいずらす▽同時通訳に近い―のパターンがある。芝居の勢いやセリフの長さによって演出担当の学生が使い分けているそうだ。

 主人公の後ろからと正面からの2カットを撮った。リリカが席に座ったまま後ろを振り向くと、立っている加藤さんも振り向き、セリフを訳した。加藤さんは「役者の気持ちを表現するために必要な動き。手話通訳者のアドリブもあるし、表情も使い分ける」と話す。
 演出を巡って学生が上田准教授に意見することもあった。キャストとスタッフに聴覚障害者は入っていないが、試作版を見てもらい「手話通訳者の衣装の色をそろえたほうが見やすい」というアドバイスを得たという。

 上田准教授は「誰も見たことがない映画だと思います。『観客の度肝を抜くような映画を作る!』と宣言して始めたプロジェクト。ぜひその真価を確かめに来てください」と呼び掛ける。
 12月に編集し、上映は1月6日午後1時半、プラットの「アートスペース」で。入場無料。豊橋文化振興財団共催。
【山田一晶】


 あらすじ 大学生リリカは、「お嬢」とやゆされる大学生マリアと出会う。しっかり者だが友達との関係に不満を持っているリリカは、成績優秀なのに勝手気ままで生活力のないマリアにひかれていく。偶然同じアパートに住んでいる2人は次第に仲良くなった。ところが、ある時リリカはマリアのお金を盗んでしまい…。

間もなく撮影開始。右端が加藤さん。ここで手話通訳する=愛知大学逍遥館で
間もなく撮影開始。右端が加藤さん。ここで手話通訳する=愛知大学逍遥館で
イメージショット。リリカ役の安藤叶さん㊧とマリア役の花村美緒さん (提供)
イメージショット。リリカ役の安藤叶さん㊧とマリア役の花村美緒さん (提供)
指導する上田准教授㊨
指導する上田准教授㊨

カテゴリー:社会・経済

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