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「雲の涯」への思い強い髙須豊川堂会長

「雲の涯」などを手にする髙須会長=本の豊川堂本店で
「雲の涯」などを手にする髙須会長=本の豊川堂本店で
店内に設けられた追悼コーナー
店内に設けられた追悼コーナー

海軍工廠空襲の悲劇を高校生に伝えたい

 「穏やかな人だった。子どもたちに幸せに生きることを訴え続けていた。何度もお会いし、うちにもよく来てくれるなど、親しくお付き合いしてきた」と、亡くなった宗田理さんについて語るのは、豊橋市の「本の豊川堂」の髙須博久会長だ。訃報を受けて呉服町の本店に追悼コーナーを作った。
 「『自分の小説が面白くて仕方ないと思って書いている』とおっしゃっていた。楽しんで作品を書いていた。小説家としていろいろなエピソードを語ってくれた」と懐かしむ。
 髙須会長にとって特別な作品がある。「雲の涯 中学生の太平洋戦争」だ。角川書店(現KADOKAWA)から1991年8月1日に四六判を発行した。45年8月7日の豊川海軍工廠(こうしょう)の爆撃は450人以上の学徒を含む2500人以上の命を奪った。同作は広島や長崎の原爆投下に隠れてしまっていたこの空襲を、当時中学生だった宗田さんが後世に残そうと書いたノンフィクションだ。「8月1日に発刊したのは、7日の工廠の追悼の気持ちがあったのだと思っている」と髙須会長。県立時習館高校では、図書館司書によって新入生に作品の巻頭にある詩の読み聞かせが続けられていたという。

KADOKAWAに掛け合い、絶版から復刻

 95年にはその詩は削られたものの、文庫版が刊行された。髙須会長は多くの犠牲者を出した時習館高校の生徒たちに読んでもらおうと働きかけ、この本が1年生の推薦図書になった。数年後に絶版となるが、髙須会長は宗田さんと相談し、2人がそれぞれKADOKAWAに「高校生たちが読み続けている」と掛け合い、豊川堂の依頼として3000部の復刻が実現した。現在も重版は継続し、時習館高校の新入生に加え、今年度は県立豊橋東高校の1年生の推薦図書にもなっている。
 「学徒動員や、友人が亡くなるつらさなど、戦争経験の無い子どもたちに読んでもらい、戦争の悲惨さを知ってほしい。宗田さんは『若い人に幸せに生きてほしい』と願っていた。個人的にも、これからも若い人たちにこの本を読み続けてもらいたいと思っている。この小説が若い人たちの力になってくれたらと思う」と髙須会長は話す。
【田中博子】

海軍工廠空襲の悲劇を高校生に伝えたい

 「穏やかな人だった。子どもたちに幸せに生きることを訴え続けていた。何度もお会いし、うちにもよく来てくれるなど、親しくお付き合いしてきた」と、亡くなった宗田理さんについて語るのは、豊橋市の「本の豊川堂」の髙須博久会長だ。訃報を受けて呉服町の本店に追悼コーナーを作った。
 「『自分の小説が面白くて仕方ないと思って書いている』とおっしゃっていた。楽しんで作品を書いていた。小説家としていろいろなエピソードを語ってくれた」と懐かしむ。
 髙須会長にとって特別な作品がある。「雲の涯 中学生の太平洋戦争」だ。角川書店(現KADOKAWA)から1991年8月1日に四六判を発行した。45年8月7日の豊川海軍工廠(こうしょう)の爆撃は450人以上の学徒を含む2500人以上の命を奪った。同作は広島や長崎の原爆投下に隠れてしまっていたこの空襲を、当時中学生だった宗田さんが後世に残そうと書いたノンフィクションだ。「8月1日に発刊したのは、7日の工廠の追悼の気持ちがあったのだと思っている」と髙須会長。県立時習館高校では、図書館司書によって新入生に作品の巻頭にある詩の読み聞かせが続けられていたという。

KADOKAWAに掛け合い、絶版から復刻

 95年にはその詩は削られたものの、文庫版が刊行された。髙須会長は多くの犠牲者を出した時習館高校の生徒たちに読んでもらおうと働きかけ、この本が1年生の推薦図書になった。数年後に絶版となるが、髙須会長は宗田さんと相談し、2人がそれぞれKADOKAWAに「高校生たちが読み続けている」と掛け合い、豊川堂の依頼として3000部の復刻が実現した。現在も重版は継続し、時習館高校の新入生に加え、今年度は県立豊橋東高校の1年生の推薦図書にもなっている。
 「学徒動員や、友人が亡くなるつらさなど、戦争経験の無い子どもたちに読んでもらい、戦争の悲惨さを知ってほしい。宗田さんは『若い人に幸せに生きてほしい』と願っていた。個人的にも、これからも若い人たちにこの本を読み続けてもらいたいと思っている。この小説が若い人たちの力になってくれたらと思う」と髙須会長は話す。
【田中博子】

「雲の涯」などを手にする髙須会長=本の豊川堂本店で
「雲の涯」などを手にする髙須会長=本の豊川堂本店で
店内に設けられた追悼コーナー
店内に設けられた追悼コーナー

カテゴリー:社会・経済

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