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豊川幼児殺害事件 受刑者の再審請求を棄却

再審請求棄却を受け「不当判決」を知らせる弁護団=名古屋高裁前で
再審請求棄却を受け「不当判決」を知らせる弁護団=名古屋高裁前で
高裁の決定への憤りを隠せない後藤氏㊥ら弁護団=桜華会館で
高裁の決定への憤りを隠せない後藤氏㊥ら弁護団=桜華会館で

 2002(平成14)年の豊川幼児殺害事件で有罪となり、裁判のやり直しを求める再審を請求していた田邉雅樹受刑者(51)に対し、名古屋高裁は25日、請求を棄却した。高裁刑事第1部の山口裕之裁判長は「自白の信用性は揺るがない」「新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」と田邉氏の犯行を認めた。弁護団は期限となる28日までに異議申し立てを行う方針だ。

 決定的な物的証拠や目撃証言がない事件では、弁護団は専門家の見識も踏まえた33点にも及ぶ無実を示す証拠資料を提出。2016年7月の再審請求からようやく出た決定要旨は本文9㌻、証拠に対する言及はわずか3㌻で、後藤昌弘弁護団長は「結論ありきの決定で、新証拠が真剣に検討されたと思えない。この程度の内容に2年半もかかったのか」と憤った。
 高裁は、田邉氏が被害児の略取経路で「赤信号で止まり青信号で発信した」と供述した信号「山桃」が、当時は赤の点滅信号だったとの指摘に「時間経過の記憶劣化で思い違いしたり、他の交差点での出来事と混同した可能性もある」。被害児を車に乗せたなら、繊維片など何らかの微物が残るとした車両実験の資料には「再現実験であり現実とは条件が異なる。いくら実験を重ねたところで無意味だ」と一蹴した。
 また、田邉氏が勾留中に同房者に犯行を認めていたことを挙げ「捜査官の働きかけがない状況での自白で任意性に疑念なく、信用性も高い」と判断。DNA再鑑定で無実が証明された足利事件を例に、田邉氏が生い立ちや性格から嘘の自白をしてしまう「供述弱者」だとする心理学者の指摘には「無関係な他事件の例に引き寄せて意見を言うに過ぎない」と退けた。
 弁護団13人は高裁近くの桜華会館で会見し、決定に反論した。海上保安庁の漂流予測を用いた自白の投棄地点に関する矛盾に対し、高裁は「予測の精度に限界がある」としただけで具体的な言及がないことを問題視。車両実験は「無意味だ」とする判断には、後藤弁護士は「検察が持つ証拠を開示し証明するならまだ理解できる。最初から再審請求なんかしても無駄だと言っているようだ」と不快感を示した。
 決定に対し、名古屋高検次席検事は「適正・妥当な決定だ」とコメントした。
(由本裕貴)

 2002(平成14)年の豊川幼児殺害事件で有罪となり、裁判のやり直しを求める再審を請求していた田邉雅樹受刑者(51)に対し、名古屋高裁は25日、請求を棄却した。高裁刑事第1部の山口裕之裁判長は「自白の信用性は揺るがない」「新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」と田邉氏の犯行を認めた。弁護団は期限となる28日までに異議申し立てを行う方針だ。

 決定的な物的証拠や目撃証言がない事件では、弁護団は専門家の見識も踏まえた33点にも及ぶ無実を示す証拠資料を提出。2016年7月の再審請求からようやく出た決定要旨は本文9㌻、証拠に対する言及はわずか3㌻で、後藤昌弘弁護団長は「結論ありきの決定で、新証拠が真剣に検討されたと思えない。この程度の内容に2年半もかかったのか」と憤った。
 高裁は、田邉氏が被害児の略取経路で「赤信号で止まり青信号で発信した」と供述した信号「山桃」が、当時は赤の点滅信号だったとの指摘に「時間経過の記憶劣化で思い違いしたり、他の交差点での出来事と混同した可能性もある」。被害児を車に乗せたなら、繊維片など何らかの微物が残るとした車両実験の資料には「再現実験であり現実とは条件が異なる。いくら実験を重ねたところで無意味だ」と一蹴した。
 また、田邉氏が勾留中に同房者に犯行を認めていたことを挙げ「捜査官の働きかけがない状況での自白で任意性に疑念なく、信用性も高い」と判断。DNA再鑑定で無実が証明された足利事件を例に、田邉氏が生い立ちや性格から嘘の自白をしてしまう「供述弱者」だとする心理学者の指摘には「無関係な他事件の例に引き寄せて意見を言うに過ぎない」と退けた。
 弁護団13人は高裁近くの桜華会館で会見し、決定に反論した。海上保安庁の漂流予測を用いた自白の投棄地点に関する矛盾に対し、高裁は「予測の精度に限界がある」としただけで具体的な言及がないことを問題視。車両実験は「無意味だ」とする判断には、後藤弁護士は「検察が持つ証拠を開示し証明するならまだ理解できる。最初から再審請求なんかしても無駄だと言っているようだ」と不快感を示した。
 決定に対し、名古屋高検次席検事は「適正・妥当な決定だ」とコメントした。
(由本裕貴)

再審請求棄却を受け「不当判決」を知らせる弁護団=名古屋高裁前で
再審請求棄却を受け「不当判決」を知らせる弁護団=名古屋高裁前で
高裁の決定への憤りを隠せない後藤氏㊥ら弁護団=桜華会館で
高裁の決定への憤りを隠せない後藤氏㊥ら弁護団=桜華会館で

カテゴリー:社会・経済

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