文字の大きさ

豊川御油町の書店「世賜堂」3月末で閉店

子どもたちの漫画の立ち読み場としても人気=世賜堂で
子どもたちの漫画の立ち読み場としても人気=世賜堂で
今月末で閉店する世賜堂=豊川市御油町で
今月末で閉店する世賜堂=豊川市御油町で

 地域に愛された本屋さんが、また一つ姿を消す。豊川市御油町の旧東海道沿いにある明治15年創業の書店「世賜堂(せいしどう)」が、今月末で閉店する。無料宅配サービスのほか、待ち合わせ・立ち読み可能という寛容な姿勢で地元に長く親しまれた。

 世賜堂は御油町の中心部に位置し、雑誌や漫画、文庫本のほか、文具や裁縫用品、たばこなども販売。子どもからお年寄りまで訪れる書店として愛された。第15代目の小泉純子さんと家族が切り盛りしてきたが、後継者不足や予定される消費税率引き上げなどを見据え、閉店を決めた。
 明治中期、宝飯郡の役所が当時御油村に置かれた時に最も繁昌した。もともと印刷業を兼ねていたことで、戦前から祭事で使う麻ひもなどの貴重な紙類の注文も受け付けた。無料で宅配サービスを請け負い、遠くは蒲郡市まで赴いたことも。今もパートが車で最後の宅配に奔走している。
 旧道沿いで御油小学校の通学路も近いことから、子どもらの憩いの場としても人気だった。店内での漫画の立ち読みはOK、店の外にはベンチも置かれ、待ち合わせもOK。妹の真莉愛さん、友達の佐藤璃玖君とよく訪れる御油小の高山真裟姫さんも「ノートや消しゴムをよく買った。自転車や歩きでも来られるので、なくなっちゃうのは寂しい」と話した。
 併設する建物2階を活用し、土日は自由に絵本や漫画を読める「本の広場」も提供した。小泉代表の義弟で、夏目慶三さん(73)は「お客さんだけでなく、パートさんにも本当にいい人に恵まれた。街の便利なお店としての役割を果たせなくなるのが申し訳ない」と明かす。
 平成の終わりと共に、一つの老舗が歴史に幕を下ろす。日曜定休だが、最終営業日となる31日(日)は営業する。

 【取材後記】御油小卒業生の記者も、世賜堂ファンの一人だった。少年ジャンプやコミックボンボンなどの漫画雑誌を買ったり、時には立ち読みし、友達との話のネタを仕入れた。夢中で読んでいると外が土砂降りとなり、店のおばさんが「やむまでいていいよ」と言ってくれた。
 昔ながらの店内の匂い、小銭で買える駄菓子、店員と世間話する客…。大型店が増え、アマゾンなどのネット通販が主流になった現代、世賜堂のような「住民憩いの場」を兼ねた小さな本屋は貴重な存在だった。
 夏目さんから世賜堂が昭和26年に発行した「東海道 御油の昔と今 並に御油に秀でたる故人」を譲られた。江戸時代に宿場町として栄えた御油の歴史が記載された貴重な史料だ。意志を継ぎ、弊紙の歴史連載の参考資料として活用したい。
(由本裕貴)

 地域に愛された本屋さんが、また一つ姿を消す。豊川市御油町の旧東海道沿いにある明治15年創業の書店「世賜堂(せいしどう)」が、今月末で閉店する。無料宅配サービスのほか、待ち合わせ・立ち読み可能という寛容な姿勢で地元に長く親しまれた。

 世賜堂は御油町の中心部に位置し、雑誌や漫画、文庫本のほか、文具や裁縫用品、たばこなども販売。子どもからお年寄りまで訪れる書店として愛された。第15代目の小泉純子さんと家族が切り盛りしてきたが、後継者不足や予定される消費税率引き上げなどを見据え、閉店を決めた。
 明治中期、宝飯郡の役所が当時御油村に置かれた時に最も繁昌した。もともと印刷業を兼ねていたことで、戦前から祭事で使う麻ひもなどの貴重な紙類の注文も受け付けた。無料で宅配サービスを請け負い、遠くは蒲郡市まで赴いたことも。今もパートが車で最後の宅配に奔走している。
 旧道沿いで御油小学校の通学路も近いことから、子どもらの憩いの場としても人気だった。店内での漫画の立ち読みはOK、店の外にはベンチも置かれ、待ち合わせもOK。妹の真莉愛さん、友達の佐藤璃玖君とよく訪れる御油小の高山真裟姫さんも「ノートや消しゴムをよく買った。自転車や歩きでも来られるので、なくなっちゃうのは寂しい」と話した。
 併設する建物2階を活用し、土日は自由に絵本や漫画を読める「本の広場」も提供した。小泉代表の義弟で、夏目慶三さん(73)は「お客さんだけでなく、パートさんにも本当にいい人に恵まれた。街の便利なお店としての役割を果たせなくなるのが申し訳ない」と明かす。
 平成の終わりと共に、一つの老舗が歴史に幕を下ろす。日曜定休だが、最終営業日となる31日(日)は営業する。

 【取材後記】御油小卒業生の記者も、世賜堂ファンの一人だった。少年ジャンプやコミックボンボンなどの漫画雑誌を買ったり、時には立ち読みし、友達との話のネタを仕入れた。夢中で読んでいると外が土砂降りとなり、店のおばさんが「やむまでいていいよ」と言ってくれた。
 昔ながらの店内の匂い、小銭で買える駄菓子、店員と世間話する客…。大型店が増え、アマゾンなどのネット通販が主流になった現代、世賜堂のような「住民憩いの場」を兼ねた小さな本屋は貴重な存在だった。
 夏目さんから世賜堂が昭和26年に発行した「東海道 御油の昔と今 並に御油に秀でたる故人」を譲られた。江戸時代に宿場町として栄えた御油の歴史が記載された貴重な史料だ。意志を継ぎ、弊紙の歴史連載の参考資料として活用したい。
(由本裕貴)

子どもたちの漫画の立ち読み場としても人気=世賜堂で
子どもたちの漫画の立ち読み場としても人気=世賜堂で
今月末で閉店する世賜堂=豊川市御油町で
今月末で閉店する世賜堂=豊川市御油町で

カテゴリー:社会・経済

 PR

PR