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天皇直筆の文書 2点は本物

本物であることが発表された、羽田八幡宮文庫旧蔵資料の「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」の2点と、「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」(右から)=豊橋市中央図書館で
本物であることが発表された、羽田八幡宮文庫旧蔵資料の「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」の2点と、「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」(右から)=豊橋市中央図書館で

 豊橋市図書館は、江戸時代に地元の町民らが開設した私設文庫「羽田八幡宮文庫」の旧蔵資料の中にある、後奈良天皇(戦国時代の第105代天皇)、後陽成天皇(戦国~江戸時代の第107代天皇)の宸翰(しんかん、天皇直筆の文書)が真筆(本物)であることを発表。5日、同市中央図書館で説明会を実施した。
 羽田八幡宮文庫は1848年、羽田八幡宮神主の羽田野敬雄や地元町人らが設立した、日本最古級となる貸出も行う近代的図書館の先駆けとして知られる私設文庫。図書館が文庫旧蔵資料を市の文化財に指定するため昨年8月に調査したところ、室町幕府の2代将軍・足利義詮の自筆書状や織田信長の朱印状、豊臣秀吉の書状、徳川家康が上杉景勝にあてた書状など武将の書状5点と共にこれら天皇の宸翰3点を確認、真贋確認を行ってきた。
 うち武将の書状については昨年11月に本物と発表。今回、その時点では確認できなかった宸翰について、「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」が料紙や筆跡から本物だと発表された。残りの1点、後二条天皇(鎌倉時代の第94代天皇)の宸翰・歌切については、高貴な人物の書であることは間違いないが比較資料が少なく人物の特定には至らず、今後は「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」とするという。
 説明会には調査にあたった上島享・京都大学大学院文学研究科教授や、田中久雄・同市図書館長らが出席。今回調査した3点はいずれも極めて上質な料紙に風格のある書がしたためられたもので、特に打雲(うちぐもり)という青い文様を漉き込み装飾を施した最高級の料紙に和歌を2首書いた後奈良天皇の宸翰は、多く残されている同天皇宸翰の中でも優品とされるという。
 後陽成天皇宸翰と(伝)後二条天皇宸翰については、吉田藩家老・和田元長が寄進したもので、吉田藩主・松平信順(のぶより)が京都所司代として在京していたことがあることから、吉田藩と京都の公家社会との交流も考えることのできる貴重な資料となった。
 町民による江戸時代の私設文庫に武将の書状や宸翰を所蔵していたのは稀有な例といい、吉田藩士が家宝を寄進していることからも同文庫の信頼度の高さが分かる。「羽田八幡宮文庫の評価も今後大きく変わってくるのでは」と同図書館。同館では今秋、先に発表された武将の書状などと共に「羽田八幡宮文庫展」を開き、一般公開の予定という。
(田中博子)

 豊橋市図書館は、江戸時代に地元の町民らが開設した私設文庫「羽田八幡宮文庫」の旧蔵資料の中にある、後奈良天皇(戦国時代の第105代天皇)、後陽成天皇(戦国~江戸時代の第107代天皇)の宸翰(しんかん、天皇直筆の文書)が真筆(本物)であることを発表。5日、同市中央図書館で説明会を実施した。
 羽田八幡宮文庫は1848年、羽田八幡宮神主の羽田野敬雄や地元町人らが設立した、日本最古級となる貸出も行う近代的図書館の先駆けとして知られる私設文庫。図書館が文庫旧蔵資料を市の文化財に指定するため昨年8月に調査したところ、室町幕府の2代将軍・足利義詮の自筆書状や織田信長の朱印状、豊臣秀吉の書状、徳川家康が上杉景勝にあてた書状など武将の書状5点と共にこれら天皇の宸翰3点を確認、真贋確認を行ってきた。
 うち武将の書状については昨年11月に本物と発表。今回、その時点では確認できなかった宸翰について、「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」が料紙や筆跡から本物だと発表された。残りの1点、後二条天皇(鎌倉時代の第94代天皇)の宸翰・歌切については、高貴な人物の書であることは間違いないが比較資料が少なく人物の特定には至らず、今後は「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」とするという。
 説明会には調査にあたった上島享・京都大学大学院文学研究科教授や、田中久雄・同市図書館長らが出席。今回調査した3点はいずれも極めて上質な料紙に風格のある書がしたためられたもので、特に打雲(うちぐもり)という青い文様を漉き込み装飾を施した最高級の料紙に和歌を2首書いた後奈良天皇の宸翰は、多く残されている同天皇宸翰の中でも優品とされるという。
 後陽成天皇宸翰と(伝)後二条天皇宸翰については、吉田藩家老・和田元長が寄進したもので、吉田藩主・松平信順(のぶより)が京都所司代として在京していたことがあることから、吉田藩と京都の公家社会との交流も考えることのできる貴重な資料となった。
 町民による江戸時代の私設文庫に武将の書状や宸翰を所蔵していたのは稀有な例といい、吉田藩士が家宝を寄進していることからも同文庫の信頼度の高さが分かる。「羽田八幡宮文庫の評価も今後大きく変わってくるのでは」と同図書館。同館では今秋、先に発表された武将の書状などと共に「羽田八幡宮文庫展」を開き、一般公開の予定という。
(田中博子)

本物であることが発表された、羽田八幡宮文庫旧蔵資料の「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」の2点と、「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」(右から)=豊橋市中央図書館で
本物であることが発表された、羽田八幡宮文庫旧蔵資料の「後奈良天皇宸翰・二首懐紙」「後陽成天皇宸翰・花鳥風月四大字」の2点と、「(伝)後二条天皇宸翰・歌切」(右から)=豊橋市中央図書館で

カテゴリー:社会・経済

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