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豊橋・水上ビルにアトリエ「冷や水」

山田晋平さん=アトリエ「冷や水」で
山田晋平さん=アトリエ「冷や水」で
山田さんが写した水上ビル
山田さんが写した水上ビル

 舞台映像作家で今年3月まで愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授を務めていた山田晋平さん(41)が、豊橋市駅前大通3の通称水上ビルにアトリエ「冷や水」を構えた。アーティストの存在が希少な地方で、まちなかに芸術の「種」をまき、地域とつながり、自身が与える刺激でどのような「芽」が出てくるのか。「彼が住み始めてから面白くなったと思ってもらえるように地道にやっていきたい」と笑う。
 東京都出身の山田さんへ、京都造形芸術大学在学中から、フリーランスで活動してきた。近年では、演劇カンパニー「チェルフィッチュ」作品への参加や、美術家の金氏徹平氏とのコラボレーションによるプロジェクションマッピング作品、ツアー・パフォーマンス「Kawalala-rhapsody」の監修など、映像芸術の新たな可能性を探る活動を展開する。愛大ではメディア芸術専攻の立ち上げに携わり、今年3月までの7年間、教壇に立った。
 「普通の中規模都市」。山田さんがそう表現する豊橋市は、大都市に比べ、日常的に現代美術に接するのは難しいまちでもある。演劇やダンス、オペラ、コンサートなど、さまざまな舞台作品で使用される映像を担当する山田さんの仕事も国内外に散らばる。
 だが、整備されていない、自分が希少な人材になれる場所だからこその経験ができるのでは、と考えた。2016(平成28)年の「あいちトリエンナーレ」をきっかけに、水上ビルの住人たちとの交流が始まったこともあり、「この土壌を耕すことにチャレンジしたいと思った。外の仕事で得た刺激を使って、ここでワークショップを開いて、まちへ還元できるようなイベントがやれれば、何かの芽が出るかもしれない」と話す。
 子どもたちと映画を撮ったり、芸術が好きな子たちが来て、思う存分好きなものについて語ったりできる場所に、このアトリエがなればと考えている。「芸術に興味がある人を増やし、その芽を伸ばしていきたい」という思いを、愛大時代から抱く。
 農業用水である牟呂用水の上、東西800㍍に渡る通称「水上ビル」は、鉄筋コンクリートで造られた3~5階建てのビル群。駄菓子やおもちゃの問屋、靴やたばこの専門店など老舗が現役で残る一方で、近年では、空き店舗に若者が入居してコーヒーショップや花屋、クラフトビール専門店などを開き、活気を取り戻しつつある。
 だが、水上ビルは終わりが決まっている商店街でもある。現行制度では建て替えが難しいため、建物の寿命へ向けて歩みを進め、常に「キチンと畳む」ことを住民たちが意識するまちだ。
 舞台映像作家として、これから10年以上かけて、このまちの最後の姿を映像に収めるつもりだ。「ここにあるコミュニティーをどうやって別の場所へ移すのか。終わりのプロセスはすごく悲しいことかもしれないし、ワクワクするようなことかもしれない。想像がつかないからこそ、その渦中に身を置いて体験したかった」。
 自分の家、まちが終わるそのときまで、カメラを手に寄り添い続ける。
(飯塚雪)

 舞台映像作家で今年3月まで愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授を務めていた山田晋平さん(41)が、豊橋市駅前大通3の通称水上ビルにアトリエ「冷や水」を構えた。アーティストの存在が希少な地方で、まちなかに芸術の「種」をまき、地域とつながり、自身が与える刺激でどのような「芽」が出てくるのか。「彼が住み始めてから面白くなったと思ってもらえるように地道にやっていきたい」と笑う。
 東京都出身の山田さんへ、京都造形芸術大学在学中から、フリーランスで活動してきた。近年では、演劇カンパニー「チェルフィッチュ」作品への参加や、美術家の金氏徹平氏とのコラボレーションによるプロジェクションマッピング作品、ツアー・パフォーマンス「Kawalala-rhapsody」の監修など、映像芸術の新たな可能性を探る活動を展開する。愛大ではメディア芸術専攻の立ち上げに携わり、今年3月までの7年間、教壇に立った。
 「普通の中規模都市」。山田さんがそう表現する豊橋市は、大都市に比べ、日常的に現代美術に接するのは難しいまちでもある。演劇やダンス、オペラ、コンサートなど、さまざまな舞台作品で使用される映像を担当する山田さんの仕事も国内外に散らばる。
 だが、整備されていない、自分が希少な人材になれる場所だからこその経験ができるのでは、と考えた。2016(平成28)年の「あいちトリエンナーレ」をきっかけに、水上ビルの住人たちとの交流が始まったこともあり、「この土壌を耕すことにチャレンジしたいと思った。外の仕事で得た刺激を使って、ここでワークショップを開いて、まちへ還元できるようなイベントがやれれば、何かの芽が出るかもしれない」と話す。
 子どもたちと映画を撮ったり、芸術が好きな子たちが来て、思う存分好きなものについて語ったりできる場所に、このアトリエがなればと考えている。「芸術に興味がある人を増やし、その芽を伸ばしていきたい」という思いを、愛大時代から抱く。
 農業用水である牟呂用水の上、東西800㍍に渡る通称「水上ビル」は、鉄筋コンクリートで造られた3~5階建てのビル群。駄菓子やおもちゃの問屋、靴やたばこの専門店など老舗が現役で残る一方で、近年では、空き店舗に若者が入居してコーヒーショップや花屋、クラフトビール専門店などを開き、活気を取り戻しつつある。
 だが、水上ビルは終わりが決まっている商店街でもある。現行制度では建て替えが難しいため、建物の寿命へ向けて歩みを進め、常に「キチンと畳む」ことを住民たちが意識するまちだ。
 舞台映像作家として、これから10年以上かけて、このまちの最後の姿を映像に収めるつもりだ。「ここにあるコミュニティーをどうやって別の場所へ移すのか。終わりのプロセスはすごく悲しいことかもしれないし、ワクワクするようなことかもしれない。想像がつかないからこそ、その渦中に身を置いて体験したかった」。
 自分の家、まちが終わるそのときまで、カメラを手に寄り添い続ける。
(飯塚雪)

山田晋平さん=アトリエ「冷や水」で
山田晋平さん=アトリエ「冷や水」で
山田さんが写した水上ビル
山田さんが写した水上ビル

カテゴリー:社会・経済 / 芸能・文化

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