水上ビルの魅力紹介する山田さん

　舞台映像作家の山田晋平さん（41）が豊橋市駅前大通３の通称水上ビルに構えたアトリエ「冷や水」の見学会があり、２日間で２００人近い人が足を運んだ。リノベーションをして空き家を生まれ変わらせる過程を映像や写真で紹介。トークイベントもあり「豊橋で一番魅力的な場所」と語る水上ビルに拠点を移した経緯やまちづくりへの思いも語った。
　問屋だった名残で天井に開いた穴から光が降り注ぐ「冷や水」は、築50年以上の大豊商店街の一角にある。３月中旬から工事を始め、畳をフローリングにしたり、壁を鮮やかな緑色や青色に塗ったりするなど１～３階のすべてに手を加え、約３カ月かけてほぼ完成した。
　動画共有サイト「ＹｏｕＴｕｂｅ」でライブ配信したトークイベントは６月27日、建築家で大豊協同組合代表理事を務める黒野有一郎さん（53）と実施した。東京出身で京都を拠点に活動してきた山田さんは、愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授を７年間務めた後、仕事も多く人脈もある京都へ戻らなかった理由について「本当に悩んだ。京都は文化芸術がすごく充実したまちで、ぼくがいなくてもまわっていく土壌がある。一方、豊橋は、芸術文化を楽しむための場所や機会がまだまだ足りない。それをぼくがつくり出せるとしたら、豊橋に求めてもらえる。人やまちに必要とされる感覚は生きていく上で大事」と明かした。
　水上ビルは近年、１階の空き店舗に若者が入居してコーヒーショップや花屋などを開き、活気を取り戻しつつある。一方で、住居として使ってきた２～３階で空き家が徐々に増えている現状がある。黒野さんは、１階をアトリエに、２、３階を居住スペースにする山田さんの暮らし方に「住まい型のいい例。皆さんの参考になる」と話し、単なるテナントではなく、まちづくりを担うキーパーソンとしても期待感を示した。
　２階に象徴のように鎮座する４㍍以上のアイランドキッチンは、地元企業からの寄贈。ＳＤＧｓ（持続可能な開発目標）の目標の一つ「住み続けられるまちづくりを」の取り組みとして協力を得ており、山田さんは「あのキッチンがこの場所（アトリエ）を魅力的なものにしている。提供してくれた人のためにも、芸術文化を広める活動をして、まちづくりにきちんと貢献していきたい」と力を込めた。
　トークイベントの模様は「ＹｏｕＴｕｂｅ」に公開している。「冷や水　オープンハウス　トークイベント」で検索する。
（飯塚雪）