コロナ解雇 労働者悲鳴

　厚生労働省が発表した統計で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて解雇などにあった人は５万人にのぼることが分かった。多くは雇い止めされた非正規雇用者だ。県内の７月の有効求人倍率（季節調整値）は１・07倍で、初めて全国平均（１・08倍）を割り、東三河でも回復の見通しは厳しい。長年非正規労働を続けている豊橋市在住の50代男性も「半年近く無収入だ」と窮状を訴える。
　男性は20代で県内に転居して以来、派遣や請け負いなどの非正規労働を続けている。コロナ禍で４月末、派遣先だった豊橋市内の自動車部品会社から契約を打ち切られた。派遣会社が次の派遣先企業を探したが、どこも人員整理で手いっぱいだった。
　会社の寮で待機すれば、家賃や光熱費、保険料は建て替えだが支払ってもらえる。職場で知り合った友人の中には、派遣会社に解雇してもらって失業保険を受けながら求職活動する者もいる。
　男性も失業保険受給を考えたが「会社との関係を絶って寮に住み続けられるか不安だった。不況で求人は激減し、年齢的なハンデもある。若者のように勢いで飛び出せない」と、自力での求職活動に二の足を踏んだという。
　この半年余り、数十万円の貯金を取り崩しながら爪に火をともす生活が続く。建て替えてもらった家賃などの固定費は月約10万円。仕事が始まれば返済する必要がある。
　コロナ第２波が落ち着いた８月下旬には次の職場も決まり、業務開始前の研修が始まったが、今月に入っても必要な講習はまだ残っている。個人の通信手段で利用してきたプリペイド式の「ガラケー」は、料金チャージができず、受信のみに制限された。向こう半年で補充しなければ電話番号も消滅してしまう。
　「研修は徐々に始まったが、実際の勤務開始日は未定のまま。最初の給料が出るまで１カ月以上かかる。早く働き出さないと、生活もままならなくなってしまう」と心配する。
　ハローワーク豊橋が管内でまとめた７月の有効求人倍率は、県全域より低い０・92倍。前年同月（１・75倍）の半分近く落ち込み、ピークの今年１月（１・85倍）から下がり続けている。コロナ解雇が顕在化した春以降は失業保険の受給者も５割増しという。
　同ハローワークの滝沢良仁次長は「失業保険受給者ベースではリーマンショック時の方が激しく混乱した。コロナの場合は、第３波など長期化することが心配だ」と説明した。
【加藤広宣】