天ぷら油をチェーンソーの潤滑油に

　チェーンソーを使った彫刻作りの大会を開いている東栄町で、市民団体が飲食店や家庭で出る使用済み天ぷら油を回収し、チェーンソーオイル（潤滑油）にする普及する活動に取り組んでいる。すでに賛同する人たちが増えており、環境に優しい町をアピールしたい考えだ。
　活動をするのは任意団体「チェンソーアートクラブ東栄」。町内では２００１年から、一本の丸太を削って作品の出来栄えを競う「日本チェンソーアート競技大会」が開かれており、クラブが実行委員を務める。
　木の伐採などに使われるチェーンソーは、燃料にはガソリンを、刃を回転させるチェーン部分の潤滑油には鉱物性のオイルを使う。クラブの伊藤茂夫副会長によると、作動時には潤滑油が地面や服にも飛び散る。「操作する人はもちろん、大会では見物客にも油がかかってしまう」という。このため、環境への配慮が課題となっている。
　そんな中、使用済み天ぷら油からチェーンソーオイルを製造している「中部エコバイオ」（小牧市）と出合った。クラブが廃油の回収を担う。店から出たものは産業廃棄物、家庭からのものは可燃ごみとして扱われるため、町と約定書を取り交わすなどの手続きをした。
　回収場所はクラブが指定管理業務を受託している町林業センター（奈根）。昨年秋から町内の飲食業組合を通じて店や住民に呼び掛けた。クラブによると、飲食店は10店、個人からは延べ50人が持ち寄り、約１５０㍑分になっているという。
　クラブはこれまで、チェーンソーアート作品づくりで出てきた「おが粉」のリサイクルもしている。今回はさらなる資源再利用の取り組みだ。
　実際に伊藤副会長にこのオイルを使ってチェーンソーを動かしてもらった。周囲に天ぷらの匂いが漂った。
　事務局の谷川美恵子さんは「町内に流れる大千瀬川へアユの友釣りを楽しみに来る人もいる。チェーンソーオイルが生態系へ与える影響を懸念する住民もいた」という。「森林組合も使うことになっている。ＳＤＧｓ（持続可能な開発目標）に賛同する取り組みとして続けたい」と話している。
【安藤聡】