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宇宙空間で持続可能な光学レンズづくりへ

天野課長㊧と奥田さん=蒲郡市のニデック大沢工場で
天野課長㊧と奥田さん=蒲郡市のニデック大沢工場で
表面をコーティングしたレンズ㊨は小さな発泡スチロールの粒子が付着しない(提供)
表面をコーティングしたレンズ㊨は小さな発泡スチロールの粒子が付着しない(提供)

 精密機器製造の「ニデック」(蒲郡市)の研究提案が、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」のアイデア型研究として採択された。得意とする光学コーティング技術を飛躍させ、宇宙空間で持続可能な光学レンズづくりにつなげる。
 JAXAが募集したのは「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーション」。全国の著名企業や大学などから121件の応募研究提案があり、採択された34件の一つとなった。
 ニデックがJAXAとつながったのは、異業種間の技術交流を目的とする「イノベーション・デザイン・ラボ」だった。ここでJAXAの課題がニデックの技術で解決できる可能性があると考え、共同研究に応募した。
 小惑星探査機「はやぶさ2」による「リュウグウ」への到達と試料採取、地球への帰還で話題になったように、天体表面の探査には光学センサーが重要な役割を果たす。だが、そこにはレゴリス =ことば= と呼ばれる微小な粒子があり、レンズに付着すると視界が曇り地球に送る画像データに悪影響が出る。また、月面や火星の探査で活躍しているローバーもレゴリスの付着に悩まされている。
 月面のレゴリスは小さなものでは数マイクロ㍍(1マイクロ㍍は1000分の1㍉)。肉眼では確認できない大きさだ。
 ニデックはJAXAと共同で、同社の光学コーティング技術を基盤とする持続可能なレンズ表面の防塵技術の開発を目指す。細かな粒子がそもそも付着しないようにするわけだ。
 同社コート事業部の天野辰次課長によると、ポイントの一つは静電気だ。コーティングによって表面に導電性を持たせ、静電気がたまらなくすることで、ちりやほこりの付着を防ぐ。今回の研究ではこの技術を発展させる。
 研究は1月15日にスタートした。1年間で新しいコーティングを開発する。研究チームは天野課長以下5人。地上にはないレゴリスは、清水建設が開発した「月土壌シミュラント」を使う。
 チームの一員の奥田良さんは「培った防塵技術で開発を成功させたい」と意気込んでいる。
 実用化すれば、探査機のセンサーや、電源となる太陽光パネルへの利用が検討されている。さらに、日常生活でもディスプレーや眼鏡などへのほこりの付着を長期間防ぐコーティングが可能になる。
 蒲郡から宇宙開発への貢献と、さらなる豊かな生活の提供とを目指す挑戦が始まっている。
【山田一晶】

ことば
レゴリス
 月、惑星や小惑星などの天体表面に分布する砂。砕けた岩盤などの微粒子で、大半は数㍉以下の大きさ。特に月面は数㌢から数十㍍の厚さのレゴリスに覆われている。月には大気がなく、風化しないため、地球の砂のように丸みを帯びず、角ばっているのが特徴。

 精密機器製造の「ニデック」(蒲郡市)の研究提案が、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」のアイデア型研究として採択された。得意とする光学コーティング技術を飛躍させ、宇宙空間で持続可能な光学レンズづくりにつなげる。
 JAXAが募集したのは「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーション」。全国の著名企業や大学などから121件の応募研究提案があり、採択された34件の一つとなった。
 ニデックがJAXAとつながったのは、異業種間の技術交流を目的とする「イノベーション・デザイン・ラボ」だった。ここでJAXAの課題がニデックの技術で解決できる可能性があると考え、共同研究に応募した。
 小惑星探査機「はやぶさ2」による「リュウグウ」への到達と試料採取、地球への帰還で話題になったように、天体表面の探査には光学センサーが重要な役割を果たす。だが、そこにはレゴリス =ことば= と呼ばれる微小な粒子があり、レンズに付着すると視界が曇り地球に送る画像データに悪影響が出る。また、月面や火星の探査で活躍しているローバーもレゴリスの付着に悩まされている。
 月面のレゴリスは小さなものでは数マイクロ㍍(1マイクロ㍍は1000分の1㍉)。肉眼では確認できない大きさだ。
 ニデックはJAXAと共同で、同社の光学コーティング技術を基盤とする持続可能なレンズ表面の防塵技術の開発を目指す。細かな粒子がそもそも付着しないようにするわけだ。
 同社コート事業部の天野辰次課長によると、ポイントの一つは静電気だ。コーティングによって表面に導電性を持たせ、静電気がたまらなくすることで、ちりやほこりの付着を防ぐ。今回の研究ではこの技術を発展させる。
 研究は1月15日にスタートした。1年間で新しいコーティングを開発する。研究チームは天野課長以下5人。地上にはないレゴリスは、清水建設が開発した「月土壌シミュラント」を使う。
 チームの一員の奥田良さんは「培った防塵技術で開発を成功させたい」と意気込んでいる。
 実用化すれば、探査機のセンサーや、電源となる太陽光パネルへの利用が検討されている。さらに、日常生活でもディスプレーや眼鏡などへのほこりの付着を長期間防ぐコーティングが可能になる。
 蒲郡から宇宙開発への貢献と、さらなる豊かな生活の提供とを目指す挑戦が始まっている。
【山田一晶】

ことば
レゴリス
 月、惑星や小惑星などの天体表面に分布する砂。砕けた岩盤などの微粒子で、大半は数㍉以下の大きさ。特に月面は数㌢から数十㍍の厚さのレゴリスに覆われている。月には大気がなく、風化しないため、地球の砂のように丸みを帯びず、角ばっているのが特徴。

天野課長㊧と奥田さん=蒲郡市のニデック大沢工場で
天野課長㊧と奥田さん=蒲郡市のニデック大沢工場で
表面をコーティングしたレンズ㊨は小さな発泡スチロールの粒子が付着しない(提供)
表面をコーティングしたレンズ㊨は小さな発泡スチロールの粒子が付着しない(提供)

カテゴリー:社会・経済

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