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豊橋市中央図書館で「飽海遺跡」紹介する展示会

今年度の調査で出土した遠賀川式土器=豊橋市中央図書館で
今年度の調査で出土した遠賀川式土器=豊橋市中央図書館で
出土したすずり
出土したすずり
紹介する村上主任学芸員。手前が製塩土器の破片
紹介する村上主任学芸員。手前が製塩土器の破片

 豊橋市中央図書館で9日、古代の郡役所「渥美郡衙(ぐんが)」の最有力候補地とされる「飽海(あくみ)遺跡」を紹介する展示会が始まった。飽海遺跡を単独で扱う展示は初めて。
 大半が豊橋市役所や豊橋公園のある吉田城址(じょうし)と重なる飽海遺跡は、市の元収入役、丸地古城(1886~1972年)らのグループが、1920年代に貝塚を発見したことで存在を知られるようになった。土器の破片や矢尻などが出土して古墳時代から集落が存在したと推定される。ただ、後の造成などで削られたため、縄文時代までの遺構は確認されていない。
 郡衙は大宝元(701)年に制定された大宝令で、「国」に次ぐ「郡」を収める機関として置かれた。渥美郡衙が開かれた時期は不明で、文献からはその位置も分からない。ただ、吉田城址の発掘調査とともに出土する土器や遺構などから、ここに郡衙があった可能性が高くなってきた。
 まず、奈良時代から平安時代にかけての高級食器である「緑釉(りょくゆう)陶器」や、墨書がある土器、すずりが出土したことから、文字を書く特別な人々がいたことがうかがえる。
 さらに、渥美半島で塩を作り、それを納める「製塩土器」が大量に出ている。海水を煮詰め、水が蒸発して塩が付着した土器をそのまま納めたとされる。収税機関があったことが分かる。
 また、2018年度の調査で、大量の須恵器や灰釉陶器、土師器とともに、穴の底から馬の頭骨が出土した。役所による雨乞いか、悪疫退散の儀式があったのではないかと推定されている。
 ほかにも、掘立柱建物跡は、役所施設特有の四角形の柱穴が見つかっている。
 一方、今年度の調査では弥生時代の初めに九州北部から東海地方に伝わった「遠賀川式土器」が出土した。この土器の東限といい、米作とともに持ち込まれたとみられる。「あくみ」や「あつみ」の地名は、現在の福岡市東部を発祥とする古代の氏族「阿曇氏(あずみうじ)」に由来するとされる。
 豊橋市文化財センターの村上昇主任学芸員は「吉田城の下には古代の鍵となる施設があった。豊橋の歴史の奥深さを知ってほしい」と話した。
 28日まで図書館1階情報発信コーナーで。
【山田一晶】

 豊橋市中央図書館で9日、古代の郡役所「渥美郡衙(ぐんが)」の最有力候補地とされる「飽海(あくみ)遺跡」を紹介する展示会が始まった。飽海遺跡を単独で扱う展示は初めて。
 大半が豊橋市役所や豊橋公園のある吉田城址(じょうし)と重なる飽海遺跡は、市の元収入役、丸地古城(1886~1972年)らのグループが、1920年代に貝塚を発見したことで存在を知られるようになった。土器の破片や矢尻などが出土して古墳時代から集落が存在したと推定される。ただ、後の造成などで削られたため、縄文時代までの遺構は確認されていない。
 郡衙は大宝元(701)年に制定された大宝令で、「国」に次ぐ「郡」を収める機関として置かれた。渥美郡衙が開かれた時期は不明で、文献からはその位置も分からない。ただ、吉田城址の発掘調査とともに出土する土器や遺構などから、ここに郡衙があった可能性が高くなってきた。
 まず、奈良時代から平安時代にかけての高級食器である「緑釉(りょくゆう)陶器」や、墨書がある土器、すずりが出土したことから、文字を書く特別な人々がいたことがうかがえる。
 さらに、渥美半島で塩を作り、それを納める「製塩土器」が大量に出ている。海水を煮詰め、水が蒸発して塩が付着した土器をそのまま納めたとされる。収税機関があったことが分かる。
 また、2018年度の調査で、大量の須恵器や灰釉陶器、土師器とともに、穴の底から馬の頭骨が出土した。役所による雨乞いか、悪疫退散の儀式があったのではないかと推定されている。
 ほかにも、掘立柱建物跡は、役所施設特有の四角形の柱穴が見つかっている。
 一方、今年度の調査では弥生時代の初めに九州北部から東海地方に伝わった「遠賀川式土器」が出土した。この土器の東限といい、米作とともに持ち込まれたとみられる。「あくみ」や「あつみ」の地名は、現在の福岡市東部を発祥とする古代の氏族「阿曇氏(あずみうじ)」に由来するとされる。
 豊橋市文化財センターの村上昇主任学芸員は「吉田城の下には古代の鍵となる施設があった。豊橋の歴史の奥深さを知ってほしい」と話した。
 28日まで図書館1階情報発信コーナーで。
【山田一晶】

今年度の調査で出土した遠賀川式土器=豊橋市中央図書館で
今年度の調査で出土した遠賀川式土器=豊橋市中央図書館で
出土したすずり
出土したすずり
紹介する村上主任学芸員。手前が製塩土器の破片
紹介する村上主任学芸員。手前が製塩土器の破片

カテゴリー:社会・経済

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