豊橋の銭湯「人蔘湯」が4月に復活

　ボイラーの故障で昨年９月に閉店した豊橋市神明町の銭湯「人蔘湯（にんじんゆ）」が復活する。日本から銭湯を消さないために、継業やコンサルティングをしている「ゆとなみ社」（京都市、湊三次郎社長）が営業を引き継ぎ、４月にオープンする。
　人蔘湯は１９５０年に開業。地域の人たちに愛され、営業を続けてきた。昨年８月、ボイラーが故障して修理が不能になったほか、さまざまな設備が老朽化しており、店主の藤井寿美子さん（74）が閉店を決断した。
　銭湯は全国的に減少が続いている。藤井さんや豊橋市によれば、市内には１９７０年頃は20カ所以上の銭湯があったが、２０００年頃には14カ所、現在は人参湯を入れて２カ所まで減っている。背景には各家庭の風呂が普及したことや、より大きくて１日中楽しめるスーパー銭湯の進出がある。
　厳しい状況の中、助け舟を出したのが、ゆとなみ社。同社は京都府と滋賀県で４カ所の銭湯を継業しており、すべて黒字化に成功。うち１カ所では集客を４倍にまで増やした。
　人蔘湯は、閉店前に１日平均80～１００人が来店していた。ＳＮＳで宣伝すれば若者も訪れるようになり、採算ベースに乗ると判断。ジェットバス、電気風呂、薬湯、スチームサウナなどがそろっていることや、豊橋駅から近いことも魅力に感じた。
　約９００万円かけて改修する。ボイラーを入れ替えるほか、ロビーを新設し番台からフロント形式に変更する。男湯には男性に人気の「ドライサウナ」を新設する。
　少しでも改修コストを下げようと、古いボイラーの撤去は業者に頼まず、湊社長らが自ら解体する。また改修費用の一部はクラウドファンディングを活用して集める予定だ。
　湊社長は「豊橋市内のスーパー銭湯に行ったが、どこも人気で若者も多く訪れていた。ＳＮＳなどを活用すれば、常連さんに加えて若者が訪れてくれる」と期待する。
　店長を務める同社の大武千明さん（35）は「周辺の店とも連携して、銭湯を訪れた皆さんが、地域を回遊して楽しめる仕組みを作りたい」と意気込む。
　藤井さんはスタッフの１人として働くことになっており「70年の歴史に幕を下ろしたが、復活することができ、感謝しています。常連さんと再会できるのが楽しみです」と話す。
【竹下貴信】