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外国人技能実習生 田原の現場から㊤

カテゴリー:特集

「マーコ」で菊の花を間引くヘルさん㊧
「マーコ」で菊の花を間引くヘルさん㊧

信頼関係構築阻む言葉の壁

 田原市福江町のNPO法人「渥美半島まちづくり推進機構ウィズ」が開催するオンライン日本語教室から2月、外国人技能実習生が日本語能力試験に合格した。保美町でトマトやイチゴなどを生産販売する「マーコ」では数多くのインドネシア国籍の実習生が真面目に働いていた。全国では、技能実習生を巡るトラブルが相次いで報道されている。どんな人たちなのか。話を聞いた。

 マーコで会ったヘル・マウラナさんほか2人は明るい好青年。ここで外国人実習生をまとめる福田督さんほか同僚たちとの日本での生活を「2番目の家族」と笑顔で話した。
 長年にわたり異文化交流を続ける市文化会館内にあるNPO法人「たはら国際交流協会」に実習生について聞いた。
 協会は外国人向けの日本語教室のほか、バーベキュー、クリスマス会、ハロウィーン、世界各国料理教室、日本語スピーチコンテストなどのイベントを開く。参加する実習生は時期によって異なるが、最初の1年だけ姿を見せ、以降は来なくなるという実習生が多いという。
 野村満里奈さんは協会主催の「渥美にほんご教室」で教える。「能力試験合格を目的にするのではなく、日本語を学んで日本の文化を楽しんでほしい」と教室の目標を説明する。
 教室に来る実習生について「1年目に試験があるので、そのために来る人もいる。実習生は入国前と入国後にそれぞれ講習を受けるが、講習期間中に十分に日本語が身につく人は少数。『母国で勉強した日本語は役に立たなかった』という人もいる」と話す。
 また「2年目以降も教室に来る人は、異文化交流を楽しむ余裕がある人で、とてもコミュニケーションが上手。そういった方から深刻な問題を相談されることはあまりない」と語った。実習生の人柄について聞くと「ごく普通の人。文化の違いはあるが、私たちとそう変わったところはない」と話した。
 外国人技能実習生が関わった事件が相次いで報道された。昨年10月、群馬県太田市のアパートの台所で豚を解体したとしてベトナム国籍の男ら13人が逮捕された。このうち10人は実習生だった。大半は就労先から失踪していたという。
 今年1月には大阪市内で電動アシスト自転車など約60台を盗んだとしてベトナム国籍の元実習生の男4人が逮捕されている。また、その過酷な労働実態が何度もメディアに取り上げられている。外国人技能実習生を非難する声もネットなどでは目立つ。
 だが、ヘルさんやマーコの現場からはそのようなものは感じられなかった。何が違うのか。
 「渥美にほんご教室」ボランティアスタッフの岡田孝司さんは「受け入れ先の事業主と良好な関係を築くけるかが重要。異文化交流を積極的に促す事業主もいて、私たちのところへ来る実習生はそういう人が多い」と話す。
 野村さんは「母国に残った家族に送金しているなど、出稼ぎのために実習生となった人は、どうしても視野が狭くなりがち。長時間働いて、少しでもお金を稼ごうとする。それがかなわないと、SNSなどで『いい仕事がある』などとだまされてしまう」という。
 外国人実習生のコミュニケーション相手は、多いとは言えない。受け入れ先の事業主と、派遣元の管理団体のほかは必須ではない。
 言葉の問題もあり、それ以外と交流しない実習生もいるという。そういった人は事業主との関係がこじれると、SNSなどを活用して同国人のコミュニティーに頼る。
 逮捕された人たちはSNS上の同国人コミュニティーで活動し、事件に関与した。異国の地で困っている人に犯罪をそそのかす者がいるのだ。
 外国人実習制度は、発展途上国の外国人にとっては魅力的な出稼ぎとして捉えられている。実習生の母国によっては、日本の最低賃金でも母国の大卒者以上の給料になるという。田原市で「なぜ実習生になったのか」と聞くと多くは「金」を第1か第2の理由に挙げた。
【岸侑輝】

信頼関係構築阻む言葉の壁

 田原市福江町のNPO法人「渥美半島まちづくり推進機構ウィズ」が開催するオンライン日本語教室から2月、外国人技能実習生が日本語能力試験に合格した。保美町でトマトやイチゴなどを生産販売する「マーコ」では数多くのインドネシア国籍の実習生が真面目に働いていた。全国では、技能実習生を巡るトラブルが相次いで報道されている。どんな人たちなのか。話を聞いた。

 マーコで会ったヘル・マウラナさんほか2人は明るい好青年。ここで外国人実習生をまとめる福田督さんほか同僚たちとの日本での生活を「2番目の家族」と笑顔で話した。
 長年にわたり異文化交流を続ける市文化会館内にあるNPO法人「たはら国際交流協会」に実習生について聞いた。
 協会は外国人向けの日本語教室のほか、バーベキュー、クリスマス会、ハロウィーン、世界各国料理教室、日本語スピーチコンテストなどのイベントを開く。参加する実習生は時期によって異なるが、最初の1年だけ姿を見せ、以降は来なくなるという実習生が多いという。
 野村満里奈さんは協会主催の「渥美にほんご教室」で教える。「能力試験合格を目的にするのではなく、日本語を学んで日本の文化を楽しんでほしい」と教室の目標を説明する。
 教室に来る実習生について「1年目に試験があるので、そのために来る人もいる。実習生は入国前と入国後にそれぞれ講習を受けるが、講習期間中に十分に日本語が身につく人は少数。『母国で勉強した日本語は役に立たなかった』という人もいる」と話す。
 また「2年目以降も教室に来る人は、異文化交流を楽しむ余裕がある人で、とてもコミュニケーションが上手。そういった方から深刻な問題を相談されることはあまりない」と語った。実習生の人柄について聞くと「ごく普通の人。文化の違いはあるが、私たちとそう変わったところはない」と話した。
 外国人技能実習生が関わった事件が相次いで報道された。昨年10月、群馬県太田市のアパートの台所で豚を解体したとしてベトナム国籍の男ら13人が逮捕された。このうち10人は実習生だった。大半は就労先から失踪していたという。
 今年1月には大阪市内で電動アシスト自転車など約60台を盗んだとしてベトナム国籍の元実習生の男4人が逮捕されている。また、その過酷な労働実態が何度もメディアに取り上げられている。外国人技能実習生を非難する声もネットなどでは目立つ。
 だが、ヘルさんやマーコの現場からはそのようなものは感じられなかった。何が違うのか。
 「渥美にほんご教室」ボランティアスタッフの岡田孝司さんは「受け入れ先の事業主と良好な関係を築くけるかが重要。異文化交流を積極的に促す事業主もいて、私たちのところへ来る実習生はそういう人が多い」と話す。
 野村さんは「母国に残った家族に送金しているなど、出稼ぎのために実習生となった人は、どうしても視野が狭くなりがち。長時間働いて、少しでもお金を稼ごうとする。それがかなわないと、SNSなどで『いい仕事がある』などとだまされてしまう」という。
 外国人実習生のコミュニケーション相手は、多いとは言えない。受け入れ先の事業主と、派遣元の管理団体のほかは必須ではない。
 言葉の問題もあり、それ以外と交流しない実習生もいるという。そういった人は事業主との関係がこじれると、SNSなどを活用して同国人のコミュニティーに頼る。
 逮捕された人たちはSNS上の同国人コミュニティーで活動し、事件に関与した。異国の地で困っている人に犯罪をそそのかす者がいるのだ。
 外国人実習制度は、発展途上国の外国人にとっては魅力的な出稼ぎとして捉えられている。実習生の母国によっては、日本の最低賃金でも母国の大卒者以上の給料になるという。田原市で「なぜ実習生になったのか」と聞くと多くは「金」を第1か第2の理由に挙げた。
【岸侑輝】

「マーコ」で菊の花を間引くヘルさん㊧
「マーコ」で菊の花を間引くヘルさん㊧

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