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津波の事前避難 周知に課題

津波浸水想定区域がある牟呂校区の勉強会=牟呂地区市民館で
津波浸水想定区域がある牟呂校区の勉強会=牟呂地区市民館で
牟呂校区の浸水想定区域
牟呂校区の浸水想定区域

 豊橋市牟呂地区市民館で21日夜、南海トラフ地震に伴う津波浸水想定区域での事前避難をテーマにした勉強会があった。市は2月にまとめた防災対応指針で、国の「南海トラフ地震臨時情報」発表時に浸水想定区域の住民らに事前避難を求める。一方、校区自治会の加入率低下で、円滑に周知できるかといった課題も浮かんだ。
 臨時情報は、予知に依存しない新たな指針として2019年度から気象庁が運用を始めた。
 南海トラフや他の領域も含め、巨大地震を引き起こす恐れがある前兆現象も踏まえ事前に情報を発する。発生状況などにもよるが、約30分で「調査中」、約2時間で「警戒」が発表される。
 市の対応指針では、地震発生から30分以内に30㌢以上の津波で浸水する地域を対象に、全国初となる事前避難地域を指定した。沿岸部の12校区を選び、約3100世帯、約6700人が暮らしている。対象地域では原則1週間休校となる。
 この日は校区役員ら13人のほか、名古屋大学減災連携研究センターの平山修久さんらがリモート参加した。防災危機管理課の職員が、国や市の動画で情報発信の概要や発表時の対策について説明した。
 警戒情報が出ると、指定地域の住民には1週間の事前避難を促すことになる。浸水想定区域外に住む親戚や知人宅へ避難するか、確保できない場合は市の避難所へ水や食料を持ち込む。
 市では「台風などと違って地震は突然発生するため予測が難しい。周囲の状況を踏まえて『起こりやすい状態』を知らせるのが臨時情報と思ってほしい」と説明。「自助と共助の視点も今後の防災訓練に生かして」と助言を送った。
 臨時情報を市民の防災対応に生かす試みは、全国的にもまだ手探り状態だ。牟呂校区自治会の小林一男会長(83)は「加入率の低下で情報周知と防災意識の共有が進まない」と話す。
 校区内6063世帯のうち自治会員は2793人で加入率は46・1%(20年4月時点)。特に子育てが終わった世帯の脱会が顕著だという。
 三河港に接する神野新田町を抱える校区は、臨時情報に伴う事前避難対象が市内最多の1636世帯、3072人にも上る。小林会長は「従来の校区単位での防災訓練を自治会や町内会などきめ細かな単位で開催すべきだ」と話す。
 情報共有について小林会長は「子育て世代は学校を通じて周知できる期待が持てるが、高齢者宅は難しい。災害への共通認識がないと共助ができない」と心配する。
 ゲスト参加した平山さんは「地震発生は突発的なのでその場の瞬発力が求められるが、臨時情報はそれまでのウオームアップ期間。次にどう備えるかを考えておくことが大切」と助言した。
【加藤広宣】

 豊橋市牟呂地区市民館で21日夜、南海トラフ地震に伴う津波浸水想定区域での事前避難をテーマにした勉強会があった。市は2月にまとめた防災対応指針で、国の「南海トラフ地震臨時情報」発表時に浸水想定区域の住民らに事前避難を求める。一方、校区自治会の加入率低下で、円滑に周知できるかといった課題も浮かんだ。
 臨時情報は、予知に依存しない新たな指針として2019年度から気象庁が運用を始めた。
 南海トラフや他の領域も含め、巨大地震を引き起こす恐れがある前兆現象も踏まえ事前に情報を発する。発生状況などにもよるが、約30分で「調査中」、約2時間で「警戒」が発表される。
 市の対応指針では、地震発生から30分以内に30㌢以上の津波で浸水する地域を対象に、全国初となる事前避難地域を指定した。沿岸部の12校区を選び、約3100世帯、約6700人が暮らしている。対象地域では原則1週間休校となる。
 この日は校区役員ら13人のほか、名古屋大学減災連携研究センターの平山修久さんらがリモート参加した。防災危機管理課の職員が、国や市の動画で情報発信の概要や発表時の対策について説明した。
 警戒情報が出ると、指定地域の住民には1週間の事前避難を促すことになる。浸水想定区域外に住む親戚や知人宅へ避難するか、確保できない場合は市の避難所へ水や食料を持ち込む。
 市では「台風などと違って地震は突然発生するため予測が難しい。周囲の状況を踏まえて『起こりやすい状態』を知らせるのが臨時情報と思ってほしい」と説明。「自助と共助の視点も今後の防災訓練に生かして」と助言を送った。
 臨時情報を市民の防災対応に生かす試みは、全国的にもまだ手探り状態だ。牟呂校区自治会の小林一男会長(83)は「加入率の低下で情報周知と防災意識の共有が進まない」と話す。
 校区内6063世帯のうち自治会員は2793人で加入率は46・1%(20年4月時点)。特に子育てが終わった世帯の脱会が顕著だという。
 三河港に接する神野新田町を抱える校区は、臨時情報に伴う事前避難対象が市内最多の1636世帯、3072人にも上る。小林会長は「従来の校区単位での防災訓練を自治会や町内会などきめ細かな単位で開催すべきだ」と話す。
 情報共有について小林会長は「子育て世代は学校を通じて周知できる期待が持てるが、高齢者宅は難しい。災害への共通認識がないと共助ができない」と心配する。
 ゲスト参加した平山さんは「地震発生は突発的なのでその場の瞬発力が求められるが、臨時情報はそれまでのウオームアップ期間。次にどう備えるかを考えておくことが大切」と助言した。
【加藤広宣】

津波浸水想定区域がある牟呂校区の勉強会=牟呂地区市民館で
津波浸水想定区域がある牟呂校区の勉強会=牟呂地区市民館で
牟呂校区の浸水想定区域
牟呂校区の浸水想定区域

カテゴリー:社会・経済

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