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コロナでネット通販へ本腰、豊橋の花農家

コロナ禍を機に新たな需要の掘り起こしを狙う伊藤さん=二川町で
コロナ禍を機に新たな需要の掘り起こしを狙う伊藤さん=二川町で

 全国有数の花の産地で知られる豊橋市で、生産者が新型コロナウイルス禍で失った販路をインターネット通販で取り戻そうと取り組んでいる。二川町でバラ農園を営む伊藤慧(けい)さん(34)もその一人だ。昨夏から市が期間限定で設けた販売支援サイト「花いちばドットコム」に参加した。新たな売り先の「消費者」に響く見せ方にも知恵を絞るなど、サイトが終了した今も試行錯誤する日が続く。
 伊藤さんは父が営んでいる「伊藤バラ園」を一緒に経営する。主に冠婚葬祭用に好まれる白系の品種を扱う。
 田原市の菊などと同じように、コロナ禍で需要が激減した。卒業式や入学式などが集中する4月前後は深刻で、前年比半減以下の月も続いた。
 用途の違う品種への転換も考えたが断念。終息後を見据えると再転換が容易ではないからだ。白地の花を青や黄などに着色する「染め物」の技術を一部で採用し、幅を広げることにした。
 これまでの売り方は市場出荷のみ。市場担当者から聞く生花店などのニーズを踏まえ栽培に取り組んできた。冠婚葬祭用の需要はそれまで安定していたが、最近は様式の変化に加えコロナ禍が追い打ちを掛けた。
 「栽培に専念することが生産者の役割。出荷すれば業務のサイクルは終わりだった」と伊藤さんはいう。
 収穫後の出荷作業も品種別に10本単位でまとめ3~4束にして箱詰めするだけ。厳しい規格さえ満たせば市場や小売店が販売を担う。流通システムに乗っての役割分担が明確だった。
 だがコロナ禍で、多くの農産物市場から需要が消えた。独自に販売ルートを持たない多くの農家は一時、出荷調整を余儀なくされた。
 一部では道の駅が販路開拓を支えたが、豊橋市は昨年7月に支援サイトを開設し、市内の花農家8軒が参加した。以前からネット通販に関心があった伊藤さんも「花いちば」の誘いにも乗った。
 「つくって市場へ引き渡す」これまでの手法とは勝手が違う。市が委託するサイト管理者は、生産者の顔が見える動画や記事を次々と掲載した。
 商品発送でも、違う品種を詰め合わせるなど市場ではあり得ない方法だ。消費者のニーズに合わせた商品の見せ方などの工夫やこだわりが新鮮だったという。
 「確かに手間や時間がかかるが、それ以上に消費者と直接つながり、意見を聞けたことは魅力的だった」という。
 「花いちば」のサイトは3月末で閉鎖された。今はネット販売の研究と通常の市場出荷を並行している。規格外販売にも着目してインスタグラムでは、大量のバラの花を浮かべたバスタブの写真も投稿した。今は動画にも挑戦したいという。
 「贈答の印象が強すぎるが、花を買うことは特別なことではない。気軽に楽しむイメージを伝えたい」と意気込む。
【加藤広宣】

 全国有数の花の産地で知られる豊橋市で、生産者が新型コロナウイルス禍で失った販路をインターネット通販で取り戻そうと取り組んでいる。二川町でバラ農園を営む伊藤慧(けい)さん(34)もその一人だ。昨夏から市が期間限定で設けた販売支援サイト「花いちばドットコム」に参加した。新たな売り先の「消費者」に響く見せ方にも知恵を絞るなど、サイトが終了した今も試行錯誤する日が続く。
 伊藤さんは父が営んでいる「伊藤バラ園」を一緒に経営する。主に冠婚葬祭用に好まれる白系の品種を扱う。
 田原市の菊などと同じように、コロナ禍で需要が激減した。卒業式や入学式などが集中する4月前後は深刻で、前年比半減以下の月も続いた。
 用途の違う品種への転換も考えたが断念。終息後を見据えると再転換が容易ではないからだ。白地の花を青や黄などに着色する「染め物」の技術を一部で採用し、幅を広げることにした。
 これまでの売り方は市場出荷のみ。市場担当者から聞く生花店などのニーズを踏まえ栽培に取り組んできた。冠婚葬祭用の需要はそれまで安定していたが、最近は様式の変化に加えコロナ禍が追い打ちを掛けた。
 「栽培に専念することが生産者の役割。出荷すれば業務のサイクルは終わりだった」と伊藤さんはいう。
 収穫後の出荷作業も品種別に10本単位でまとめ3~4束にして箱詰めするだけ。厳しい規格さえ満たせば市場や小売店が販売を担う。流通システムに乗っての役割分担が明確だった。
 だがコロナ禍で、多くの農産物市場から需要が消えた。独自に販売ルートを持たない多くの農家は一時、出荷調整を余儀なくされた。
 一部では道の駅が販路開拓を支えたが、豊橋市は昨年7月に支援サイトを開設し、市内の花農家8軒が参加した。以前からネット通販に関心があった伊藤さんも「花いちば」の誘いにも乗った。
 「つくって市場へ引き渡す」これまでの手法とは勝手が違う。市が委託するサイト管理者は、生産者の顔が見える動画や記事を次々と掲載した。
 商品発送でも、違う品種を詰め合わせるなど市場ではあり得ない方法だ。消費者のニーズに合わせた商品の見せ方などの工夫やこだわりが新鮮だったという。
 「確かに手間や時間がかかるが、それ以上に消費者と直接つながり、意見を聞けたことは魅力的だった」という。
 「花いちば」のサイトは3月末で閉鎖された。今はネット販売の研究と通常の市場出荷を並行している。規格外販売にも着目してインスタグラムでは、大量のバラの花を浮かべたバスタブの写真も投稿した。今は動画にも挑戦したいという。
 「贈答の印象が強すぎるが、花を買うことは特別なことではない。気軽に楽しむイメージを伝えたい」と意気込む。
【加藤広宣】

コロナ禍を機に新たな需要の掘り起こしを狙う伊藤さん=二川町で
コロナ禍を機に新たな需要の掘り起こしを狙う伊藤さん=二川町で

カテゴリー:社会・経済

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