「吉田塾」前田建設工業ファンタジー営業部に学ぶ

　若手経営者の勉強会「吉田塾」（塾長、山本明彦元副金融担当相）は19日夜、豊橋市西松山町の山本事務所で第１２５回例会を開いた。準大手ゼネコン前田建設工業の岩坂照之さんが20年前に立ち上げた「ファンタジー営業部」のユニークなプロジェクトで学んだ事業アイデアの「共創」について語った。
　同営業部は自社サイトを通じた広報活動の一環で始めた。自社の技術力や業務内容を理解してもらう試みとして、一般にも関心が高いアニメやゲームに登場する建造物を設計図面で「つくってみる」ことだった。
　あくまで架空の建造物だが、サイトの趣旨を貫くため、設計や材料は現実世界でも通用する仕様で検討を重ねた。素材メーカーなど取引企業も巻き込んで、設計ができるまでの検討過程や成果物などを月１回の連載方式で定期的に公開した。
　過去の架空建設プロジェクトは「マジンガーＺ」の合体ユニットの「格納庫」（72億円）や、「機動戦士ガンダム」の「地球連邦軍南米ジャブロー基地」（２５３２億円）など多岐にわたる。
　原作者やアニメ制作会社など著作権の承諾条件は「作品をしっかり読み込むこと」だった。
　「銀河鉄道９９９」のプロジェクトでは、おなじみの列車が宇宙に旅立つ鉄橋づくりに挑んだ。橋脚部材に鉄鋼を選んだところ「第２話を見落としましたね」と鋭い指摘。コンクリートから鉄筋がむき出すシーンを見て慌てて修正したという。
　２００３年の開始当初は「業界に縁のない人にも技術力や業務内容を発信したかった」と岩坂さん。ファンの新しい楽しみ方も提案できて注目も集まった。書籍や映画化もされ、就職活動では「ファンタジー営業部志望」の学生まで現れた。
　現在は同社ＩＣＩ総合センター長として、空想を事業につなげる「共創」やアイデア創出を支援する。共創の長短について岩坂さんは「一人よがりの思い込みは異なる視点ですぐ排除される点がいい」と説いた。
【加藤広宣】