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見送られた和菓子店の関係者と茶会

自ら抹茶をたてた森さんとウクレレを奏でる伊達さん(奥2人)=駅前大通3の「冷や水」で
自ら抹茶をたてた森さんとウクレレを奏でる伊達さん(奥2人)=駅前大通3の「冷や水」で
和菓子店の「おみおくり」の品が並ぶ展示会場。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介している=駅前大通2の大豊組合会議室で
和菓子店の「おみおくり」の品が並ぶ展示会場。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介している=駅前大通2の大豊組合会議室で

豊橋で伊達さんの「おみおくり」作品展

 休廃業店の最期をみとる「おみおくり」プロジェクトを続ける大阪府在住の美術家、伊達伸明さんの作品展が5日まで、豊橋市駅前大通2の水上ビル「大豊組合会議室」で開かれている。自身の創作活動から生まれたプロジェクトで、今回は2年前に見送られた和菓子店の関係者と茶会イベントを催した。
 建築物の「おみおくり」は、伊達さんが20年前に始めた「建築物ウクレレ化保存計画」の延長で生まれた。
 階段のきしみなど日常生活で聞こえる「音」への関心が強く、こうした建物の部材で楽器を作ることを思い立った。京都芸術センター建設時、取り壊した小学校の廃材でウクレレを作ったのを皮切りに、寺や知人宅など次々と制作依頼が舞い込んだという。
 「提供主と話すと、建物の歴史や思い出話が次々と返ってくる。単なる楽器の材料ではなく、物語が詰まっていると実感した」と伊達さん。持ち主の心境に寄り添った「おみおくり」の原点について振り返った。
 部材選びで重視するのは人肌感の多さと歴史の積もった跡。手すりや床など、日常的に肌が触れる頻度が多い場所は思い入れも多い。リフォーム跡は家の変遷も分かる地層のようなものだ。
 これまで手掛けたウクレレは76本。自分から働きかけず、縁者を通じた依頼で家族の総意を得て着手する「一期一会」が基本姿勢だ。
 今回の展示会で茶会を企画した和菓子店「桃林堂」(江南市)は2年前に店を見送った。店主の長女、森真理子さん=さいたま市=も伊達さんと仕事で知り合った。
 ウクレレには餅を蒸すせいろやまんじゅうを作る木型など、調理器具も使った。出来栄えについて森さんは「包装用の作業台を選ぶセンスがいい」と絶賛する。作業台の天板は長年の作業で擦れて角が取れた状態。丸みを帯びてやわらかい風合いに仕上がった。
 店の最期をみとった森さんは「今はコロナ禍もあって小売店は苦しい状況が続く。少し前だったが節目を迎えたことは幸いだった。見送るのと見送られる側が時間をともにでき、過去と未来をつなぐ儀式のよう」と半生を過ごした建物に思いを巡らせた。
 展示会は5日午後6時まで。桃林堂の「遺品」で作ったウクレレをはじめ、せいろや木型も並ぶ。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介する。
【加藤広宣】

豊橋で伊達さんの「おみおくり」作品展

 休廃業店の最期をみとる「おみおくり」プロジェクトを続ける大阪府在住の美術家、伊達伸明さんの作品展が5日まで、豊橋市駅前大通2の水上ビル「大豊組合会議室」で開かれている。自身の創作活動から生まれたプロジェクトで、今回は2年前に見送られた和菓子店の関係者と茶会イベントを催した。
 建築物の「おみおくり」は、伊達さんが20年前に始めた「建築物ウクレレ化保存計画」の延長で生まれた。
 階段のきしみなど日常生活で聞こえる「音」への関心が強く、こうした建物の部材で楽器を作ることを思い立った。京都芸術センター建設時、取り壊した小学校の廃材でウクレレを作ったのを皮切りに、寺や知人宅など次々と制作依頼が舞い込んだという。
 「提供主と話すと、建物の歴史や思い出話が次々と返ってくる。単なる楽器の材料ではなく、物語が詰まっていると実感した」と伊達さん。持ち主の心境に寄り添った「おみおくり」の原点について振り返った。
 部材選びで重視するのは人肌感の多さと歴史の積もった跡。手すりや床など、日常的に肌が触れる頻度が多い場所は思い入れも多い。リフォーム跡は家の変遷も分かる地層のようなものだ。
 これまで手掛けたウクレレは76本。自分から働きかけず、縁者を通じた依頼で家族の総意を得て着手する「一期一会」が基本姿勢だ。
 今回の展示会で茶会を企画した和菓子店「桃林堂」(江南市)は2年前に店を見送った。店主の長女、森真理子さん=さいたま市=も伊達さんと仕事で知り合った。
 ウクレレには餅を蒸すせいろやまんじゅうを作る木型など、調理器具も使った。出来栄えについて森さんは「包装用の作業台を選ぶセンスがいい」と絶賛する。作業台の天板は長年の作業で擦れて角が取れた状態。丸みを帯びてやわらかい風合いに仕上がった。
 店の最期をみとった森さんは「今はコロナ禍もあって小売店は苦しい状況が続く。少し前だったが節目を迎えたことは幸いだった。見送るのと見送られる側が時間をともにでき、過去と未来をつなぐ儀式のよう」と半生を過ごした建物に思いを巡らせた。
 展示会は5日午後6時まで。桃林堂の「遺品」で作ったウクレレをはじめ、せいろや木型も並ぶ。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介する。
【加藤広宣】

自ら抹茶をたてた森さんとウクレレを奏でる伊達さん(奥2人)=駅前大通3の「冷や水」で
自ら抹茶をたてた森さんとウクレレを奏でる伊達さん(奥2人)=駅前大通3の「冷や水」で
和菓子店の「おみおくり」の品が並ぶ展示会場。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介している=駅前大通2の大豊組合会議室で
和菓子店の「おみおくり」の品が並ぶ展示会場。伊達さんの過去の作品もパネルで紹介している=駅前大通2の大豊組合会議室で

カテゴリー:社会・経済

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