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ウクライナの首都から西部へ移住 アンドレイさんに聞く

ウクライナ国内からオンラインで取材に応じるアンドレイさん=豊橋市内で(11日午後7時)
ウクライナ国内からオンラインで取材に応じるアンドレイさん=豊橋市内で(11日午後7時)
リビウに設置された難民キャンプ(アンドレイさん提供)
リビウに設置された難民キャンプ(アンドレイさん提供)

 ウクライナへのロシアによる軍事侵攻が続いている。主戦場の首都キエフでは安全な土地へ移る国民も増えた。西部のリビウ州に家族と移住したシュワチコ・アンドレイさん(33)もそうだ。10年来の親交がある豊橋市牛川町の会社員、河合実さん(38)の協力でアンドレイさんにオンラインで近況を尋ねた。
【聞き手・加藤広宣】

 ―リビウ州に移住したいきさつは。
 ◆移住のきっかけは報道です。2月16日のニュース番組で米国バイデン大統領による「ロシアは軍事侵攻する」との発言を信じました。
 リビウは父のふるさとでもあり、現在はポーランドに住む親戚の自宅を借りられ幸運でした。中国出身の妻と2人の子どもと一緒に暮らしています。会社には当初、2週間の長期休暇を申請しました。沈静化すれば戻ることも視野に入れていたためです。
 移住から1週間後、皮肉にもバイデン大統領の言葉通り、ロシアによる侵攻は現実となってしまいました。休暇期間は過ぎましたが、このままリビウにとどまることを決めました。

 ―リビウのまちはどんな様子でしょうか。
 ◆キエフをはじめ主戦場の東部などと違い、地理的にはポーランド国境に近い西部のため現在も比較的安全です。普段は市街地に出られるし、移住者で住居がない人向けの難民キャンプも国が提供しています。転入手続で役所を訪ねた際に見掛けました。キエフやハリコフなど戦火が激しい東部からの移住者が増えているようでした。
 リビウにも方言やなまりがあり、移住者はすぐに分かるそうです。「キエフから来た」と分かると親切な態度に変わる地元住民も多いです。キャンプ住まいの難民も増える中、国民どうし支えあって立ち向かう機運が高まっているようです。
 一方、現地の空港施設が爆撃されるなど、いつ起きるか分からない有事への緊張も高まりつつあります。国境では移住が可能な人は鉄道やバスで出国しています。
 ウクライナでは18~60歳が徴兵対象です。私は出国はできませんが、いつでも戦地に向かう覚悟で暮らしています。

 ―移住で仕事には影響がありましたか。
 ◆勤務先は中国系資本の医療法人のような組織です。中国語や英語、ウクライナ語などを使えるため翻訳業務を任されています。現場作業の必要がないので、インターネットや情報端末が整っていれば通常業務に支障はありません。

 ―国内外の情勢や戦況などを踏まえ、今後の見通しなどはどう考えていますか。
 ◆現在は東部や南部が主戦場ですが、戦況次第でリビウにも侵攻が迫ってくることも予想されます。キエフに残ることを選んだ知人や会社の同僚らは現在、マシンガンなど武器を手に戦っています。有事の際、家族には国内など安全な土地に避難してほしいと考えています。

 ―攻撃を続けるロシアに思うことは。
 ◆国内では、病院などの破壊や原子力発電所を標的とした攻撃など人道的に許されない行為が続いています。日々のニュース報道を見るたび、攻撃をやめれば「あと何人の命が救えたか」と悲しい気持ちになります。
 一方、ロシア国民も情報統制などで、この侵略戦争の実態が伝わっていません。断言できることは「この戦争になんの意味もない」ことです。両国民にとって今回の戦争から学ぶことは何もないと確信しています。ロシアは早く攻撃をやめるべきです。

 ―日本にも親友が多いそうです。何を伝えたいですか
 ◆今回の軍事侵攻は遠い国の出来事ではありません。日露間にも北方領土問題があります。海外から声をあげることも重要だと思います。
 中国留学中の2011年には日本各地を旅しました。クラスメートの実家がある豊橋市にも立ち寄りました。山に近く緑あふれるのどかな風景が印象的。次は家族で豊橋を訪ねたいです。一刻も早い終戦と平和が戻る日を願って。

 ウクライナへのロシアによる軍事侵攻が続いている。主戦場の首都キエフでは安全な土地へ移る国民も増えた。西部のリビウ州に家族と移住したシュワチコ・アンドレイさん(33)もそうだ。10年来の親交がある豊橋市牛川町の会社員、河合実さん(38)の協力でアンドレイさんにオンラインで近況を尋ねた。
【聞き手・加藤広宣】

 ―リビウ州に移住したいきさつは。
 ◆移住のきっかけは報道です。2月16日のニュース番組で米国バイデン大統領による「ロシアは軍事侵攻する」との発言を信じました。
 リビウは父のふるさとでもあり、現在はポーランドに住む親戚の自宅を借りられ幸運でした。中国出身の妻と2人の子どもと一緒に暮らしています。会社には当初、2週間の長期休暇を申請しました。沈静化すれば戻ることも視野に入れていたためです。
 移住から1週間後、皮肉にもバイデン大統領の言葉通り、ロシアによる侵攻は現実となってしまいました。休暇期間は過ぎましたが、このままリビウにとどまることを決めました。

 ―リビウのまちはどんな様子でしょうか。
 ◆キエフをはじめ主戦場の東部などと違い、地理的にはポーランド国境に近い西部のため現在も比較的安全です。普段は市街地に出られるし、移住者で住居がない人向けの難民キャンプも国が提供しています。転入手続で役所を訪ねた際に見掛けました。キエフやハリコフなど戦火が激しい東部からの移住者が増えているようでした。
 リビウにも方言やなまりがあり、移住者はすぐに分かるそうです。「キエフから来た」と分かると親切な態度に変わる地元住民も多いです。キャンプ住まいの難民も増える中、国民どうし支えあって立ち向かう機運が高まっているようです。
 一方、現地の空港施設が爆撃されるなど、いつ起きるか分からない有事への緊張も高まりつつあります。国境では移住が可能な人は鉄道やバスで出国しています。
 ウクライナでは18~60歳が徴兵対象です。私は出国はできませんが、いつでも戦地に向かう覚悟で暮らしています。

 ―移住で仕事には影響がありましたか。
 ◆勤務先は中国系資本の医療法人のような組織です。中国語や英語、ウクライナ語などを使えるため翻訳業務を任されています。現場作業の必要がないので、インターネットや情報端末が整っていれば通常業務に支障はありません。

 ―国内外の情勢や戦況などを踏まえ、今後の見通しなどはどう考えていますか。
 ◆現在は東部や南部が主戦場ですが、戦況次第でリビウにも侵攻が迫ってくることも予想されます。キエフに残ることを選んだ知人や会社の同僚らは現在、マシンガンなど武器を手に戦っています。有事の際、家族には国内など安全な土地に避難してほしいと考えています。

 ―攻撃を続けるロシアに思うことは。
 ◆国内では、病院などの破壊や原子力発電所を標的とした攻撃など人道的に許されない行為が続いています。日々のニュース報道を見るたび、攻撃をやめれば「あと何人の命が救えたか」と悲しい気持ちになります。
 一方、ロシア国民も情報統制などで、この侵略戦争の実態が伝わっていません。断言できることは「この戦争になんの意味もない」ことです。両国民にとって今回の戦争から学ぶことは何もないと確信しています。ロシアは早く攻撃をやめるべきです。

 ―日本にも親友が多いそうです。何を伝えたいですか
 ◆今回の軍事侵攻は遠い国の出来事ではありません。日露間にも北方領土問題があります。海外から声をあげることも重要だと思います。
 中国留学中の2011年には日本各地を旅しました。クラスメートの実家がある豊橋市にも立ち寄りました。山に近く緑あふれるのどかな風景が印象的。次は家族で豊橋を訪ねたいです。一刻も早い終戦と平和が戻る日を願って。

ウクライナ国内からオンラインで取材に応じるアンドレイさん=豊橋市内で(11日午後7時)
ウクライナ国内からオンラインで取材に応じるアンドレイさん=豊橋市内で(11日午後7時)
リビウに設置された難民キャンプ(アンドレイさん提供)
リビウに設置された難民キャンプ(アンドレイさん提供)

カテゴリー:社会・経済

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