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捜索救助犬、課題は養成

現場に見立てた山野訓練=豊橋市岩田町で
現場に見立てた山野訓練=豊橋市岩田町で
救助犬とともにハンドラーの養成も課題だ
救助犬とともにハンドラーの養成も課題だ

 地震や豪雨など自然災害に備え、豊橋市は市内を拠点とする団体「捜索救助犬HDS-K9」(平井智也代表)と災害時の出動で協定を結んだ。危険な現場での素早い救助が望める一方、養成は長年の課題という。災害が大規模化すれば犬とペアを組むハンドラーを含め複数組が出動する。平井代表は「担い手探しを含め養成は課題が多い」と話す。
 HSDS-K9は、警察犬の養成経験を持つ平井代表が営む「平井ドッグスクール」(豊川市東上町)を母体に2018年に発足した。東三河を拠点とする新たな団体設立を目指し、副代表の杉原久依さんらが平井代表の経験と知見を求めて共同で立ち上げた。
 平井代表の施設や新城市内のドッグファームでしつけや服従などの基本的な訓練を経て、山林などを使った定期的な「山野訓練」で現場感覚や捜索術を磨く。この訓練が可能な場所は限られ、市消防の訓練施設や隣の山林を借りたり、山間地がある豊田市や岐阜県、がれきを使った訓練施設を求めて長野県などに遠征したりもする。
 出動できる捜索犬は現在、8歳の雄「リッター号」だけだ。ベルジアンシェパードドッグのマリノアと呼ばれる種で、細身だが強い体躯と機動力を兼ね備えている。
 豊橋市岩田町の市消防グラウンドとその一帯で3月下旬、捜索を想定した訓練があった。リッター号とペアを組む「ハンドラー」が無線通信とGPS(全地球測位システム)の端末を手に、雑木林に隠れた捜索対象者を探し当てるものだ。
 人の数万倍といわれる嗅覚を頼りに、人の居場所を特定。訓練では探し当てた人からもらったボールをくわえてハンドラーの元へ戻る。災害現場では探し当てた場所で吠え続けて、救助者らに居場所を知らせる。この日の訓練では約2時間かけて、捜索範囲を半径約300㍍まで広げながら感覚を養った。
 リッター号はすでに死んだ2頭の捜索犬に続く3代目だ。現在は2歳の雌「奏響(サユラ)」が続いて基本訓練中。杉原副代表は「現場に出るまで養成するには5年近くかかる。奏響はあと約3年かけて『一人前』にしたい」と話す。
 平均寿命が15年とされる救助犬が、現場で活躍できるのは約10年だ。頭数不足には養成の難しさに寿命との闘いがある。さらに犬と意思疎通を一つにするハンドラーの養成や運営基盤の壁も加わる。
 HDS-K9は主要メンバー4人は普段、会社員などの職を持つボランティアで成り立つ。リッターと組むハンドラーの近藤亘央さんは「希望者もいるが総じて担い手は少ない。求められる適性なども壁になり得る」と説明する。
 全国各地の救助犬を扱う団体でも国や自治体の直接的な支援はない。寄付のほか、ふるさと納税で間接的に支援する自治体もあるが心もとない。
 杉原さんは「自治体とは初の協定。まずは足掛かりとして認知度を高めたい。多くに関心を持ってもらい支援の輪が広がれば」と話す。
【加藤広宣】

 地震や豪雨など自然災害に備え、豊橋市は市内を拠点とする団体「捜索救助犬HDS-K9」(平井智也代表)と災害時の出動で協定を結んだ。危険な現場での素早い救助が望める一方、養成は長年の課題という。災害が大規模化すれば犬とペアを組むハンドラーを含め複数組が出動する。平井代表は「担い手探しを含め養成は課題が多い」と話す。
 HSDS-K9は、警察犬の養成経験を持つ平井代表が営む「平井ドッグスクール」(豊川市東上町)を母体に2018年に発足した。東三河を拠点とする新たな団体設立を目指し、副代表の杉原久依さんらが平井代表の経験と知見を求めて共同で立ち上げた。
 平井代表の施設や新城市内のドッグファームでしつけや服従などの基本的な訓練を経て、山林などを使った定期的な「山野訓練」で現場感覚や捜索術を磨く。この訓練が可能な場所は限られ、市消防の訓練施設や隣の山林を借りたり、山間地がある豊田市や岐阜県、がれきを使った訓練施設を求めて長野県などに遠征したりもする。
 出動できる捜索犬は現在、8歳の雄「リッター号」だけだ。ベルジアンシェパードドッグのマリノアと呼ばれる種で、細身だが強い体躯と機動力を兼ね備えている。
 豊橋市岩田町の市消防グラウンドとその一帯で3月下旬、捜索を想定した訓練があった。リッター号とペアを組む「ハンドラー」が無線通信とGPS(全地球測位システム)の端末を手に、雑木林に隠れた捜索対象者を探し当てるものだ。
 人の数万倍といわれる嗅覚を頼りに、人の居場所を特定。訓練では探し当てた人からもらったボールをくわえてハンドラーの元へ戻る。災害現場では探し当てた場所で吠え続けて、救助者らに居場所を知らせる。この日の訓練では約2時間かけて、捜索範囲を半径約300㍍まで広げながら感覚を養った。
 リッター号はすでに死んだ2頭の捜索犬に続く3代目だ。現在は2歳の雌「奏響(サユラ)」が続いて基本訓練中。杉原副代表は「現場に出るまで養成するには5年近くかかる。奏響はあと約3年かけて『一人前』にしたい」と話す。
 平均寿命が15年とされる救助犬が、現場で活躍できるのは約10年だ。頭数不足には養成の難しさに寿命との闘いがある。さらに犬と意思疎通を一つにするハンドラーの養成や運営基盤の壁も加わる。
 HDS-K9は主要メンバー4人は普段、会社員などの職を持つボランティアで成り立つ。リッターと組むハンドラーの近藤亘央さんは「希望者もいるが総じて担い手は少ない。求められる適性なども壁になり得る」と説明する。
 全国各地の救助犬を扱う団体でも国や自治体の直接的な支援はない。寄付のほか、ふるさと納税で間接的に支援する自治体もあるが心もとない。
 杉原さんは「自治体とは初の協定。まずは足掛かりとして認知度を高めたい。多くに関心を持ってもらい支援の輪が広がれば」と話す。
【加藤広宣】

現場に見立てた山野訓練=豊橋市岩田町で
現場に見立てた山野訓練=豊橋市岩田町で
救助犬とともにハンドラーの養成も課題だ
救助犬とともにハンドラーの養成も課題だ

カテゴリー:社会・経済

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