疑われた東栄町民の署名

　東栄町の住民有志が、町営の診療所「東栄医療センター」での人工透析再開などを目指し、条例改正を求めた直接請求＝ことば＝署名について、村上孝治町長の後援会が署名の有効性を問うようなチラシを町内で配っていたことが判明した。チラシは、大村秀章知事のリコール署名で大量の無効署名が出ていることと関連付け、有志の署名を疑う内容となっている。町選挙管理委員会による縦覧期間直前で、住民有志は「正当に取り組んだ活動なのに疑うとは」と憤りを隠さない。

　署名活動は「東栄町人工透析・入院を守る会」が、昨年12月２日から１カ月間実施した。町選管によると、１０７６人分が集まり、９７８人分が有効とされた。
　昨年12月１日時点の選挙人名簿登録者数は２７４３人で、直接請求に必要な有権者の50分の１の「55人」を大きく上回った。
　縦覧は今月10～16日に役場であった。チラシは期間の直前に全戸配布されている。「知らないうちに被害者として巻き込まれているかも？　あなたは大丈夫ですか…」の見出しに、署名運動の内容説明を全て聞き理解した上で賛同の意思があったか▽自分で署名したか▽家族が署名した場合、一人ひとりが理解して自分で署名したか－の確認を促している。
　傍らには知事リコール署名が83％無効だったことを伝える中日新聞記事もコピーを掲載している。
　村上町長は「条例の改廃と知事リコールは同じ直接請求の制度。署名した人には、しっかり判断しての署名だったのか、確かめてほしかった」と説明した。
　町はＪＲ飯田線東栄駅近くにある築40年以上の旧東栄病院の医療センターを建て替える方針を示している。２０１９年３月に救急診療を中止し、人工透析は20年３月末に廃止した。
　守る会の西谷賢治代表は「署名した人を犯罪者として、おとしめるような行為ではないか」と批判している。
　大村知事のリコール署名であった大規模な不正が、他の直接請求に悪影響を与える結果となっている。
　東栄町の署名は、縦覧を終えた後に再び西谷代表に返され、改めて町に本請求する。その後、町は20日以内に議会を招集し、審議する。
【安藤聡】

ことば
直接請求
　住民が署名を集め、首長に条例の制定と改正、廃止を請求できる地方自治法の制度。条例の制定と改廃の請求などは有権者の50分の１、「議会の解散」と「議員および首長、主要公務員の解職」は有権者の３分の１以上の署名が必要となる。