文字の大きさ

「ウクライナに平和を」元プロサッカー選手の祈り㊤

カテゴリー:特集

ウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドでプレーしていた時の加藤さん(左から2人目)とチームメート
ウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドでプレーしていた時の加藤さん(左から2人目)とチームメート
政変の影響で3年前に解散したFCドニプロのスタジアム
政変の影響で3年前に解散したFCドニプロのスタジアム
25日に届いたギレイさんからのメッセージ。「キエフと東部からの人でいっぱいだ」「プーチンは狂ってしまった」とある
25日に届いたギレイさんからのメッセージ。「キエフと東部からの人でいっぱいだ」「プーチンは狂ってしまった」とある

 ロシアのウクライナ侵攻は、民間人にも犠牲者が出るなど深刻な事態だ。蒲郡市の元プロサッカー選手、加藤康弘さん(35)はちょうど10年前にウクライナのチームでプレーしていた。戦争がスポーツに与える影響や、現地の人々の横顔、いま日本の子どもたちに伝えたいことを語った。3回にわたり紹介する。
(由本裕貴)

 蒲郡で生まれ育ち、2009年から9年間、国内外のチームでプレーした加藤さん。12~13年にはウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドというクラブに所属した。本拠地ウージュホロドはウクライナ最西端の都市で、スロバキアやハンガリーとの国境がすぐ近く。カルパチア山脈が見下ろす自然豊かな街だ。
 加藤さんは、クラブ在籍時に生活を送ったアパートを経営する女性タティアナ・ギレイさんと連絡を取っている。東に600㌔以上離れた首都キエフにロシア軍が侵攻したと報じられた25日午後、ギレイさんからSNSのメッセージが来た。「とても怖い。でも絶対に勝つ」。ウージュホロドはまだ平穏だが、東部から多くの国民が逃れてきており、ギレイさんは「プーチンがさらに軍を進めれば恐ろしいことになる。私たちはそれほど多くの武器を持ってない。プーチンは狂ってしまった」と続けた。
 加藤さんは「自分が住んだ街や行ったことのある場所がテレビに出たり、お世話になった現地在住の日本人の方も取材を受けたりしていて、とても他人事とは思えない、何とも言えない心境です」と表情を曇らせる。
 戦争はスポーツにも大きな影響を及ぼす。加藤さんはウージュホロドでプレーした後、ポーランドのクラブへ移籍。直後の14年、ロシアがウクライナ南部クリミアを併合し、東部ドネツクとルガンスクでは親ロシア派による独立国が誕生した。これら地域のクラブは国内リーグから除名されてロシアリーグへ加盟。ウクライナの代表選手がポーランドのチームに移籍してきた。「彼は格下のポーランドでプレーするしか道はなく、母国の家族にお金を送るために貪欲にプレーしていました。自分のサッカー人生の中でも、特にウクライナでは政治や経済の影響をもろに受けることを肌で感じました。資金が潤沢なクラブだろうと、関係ありません」
 政変の影響で複数のクラブが消滅し、16年には加藤さんの古巣ウージュホロドが解散。加藤さん自身も試合経験があり、UEFA欧州リーグで準優勝した実績もあるFCドニプロも19年に解散した。ドネツク地方を拠点とし、国内トップクラスの強さを誇るFCシャフタール・ドネツクは、14年の紛争でスタジアムのドンバス・アリーナが爆破されたことで、リビウ、キエフと活動拠点を転々としている。
 今回のウクライナ侵攻を受けても、5月末にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる予定だった欧州チャンピオンズリーグ決勝がフランス開催に変更となった。
(続きは本紙でお楽しみください)

 ロシアのウクライナ侵攻は、民間人にも犠牲者が出るなど深刻な事態だ。蒲郡市の元プロサッカー選手、加藤康弘さん(35)はちょうど10年前にウクライナのチームでプレーしていた。戦争がスポーツに与える影響や、現地の人々の横顔、いま日本の子どもたちに伝えたいことを語った。3回にわたり紹介する。
(由本裕貴)

 蒲郡で生まれ育ち、2009年から9年間、国内外のチームでプレーした加藤さん。12~13年にはウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドというクラブに所属した。本拠地ウージュホロドはウクライナ最西端の都市で、スロバキアやハンガリーとの国境がすぐ近く。カルパチア山脈が見下ろす自然豊かな街だ。
 加藤さんは、クラブ在籍時に生活を送ったアパートを経営する女性タティアナ・ギレイさんと連絡を取っている。東に600㌔以上離れた首都キエフにロシア軍が侵攻したと報じられた25日午後、ギレイさんからSNSのメッセージが来た。「とても怖い。でも絶対に勝つ」。ウージュホロドはまだ平穏だが、東部から多くの国民が逃れてきており、ギレイさんは「プーチンがさらに軍を進めれば恐ろしいことになる。私たちはそれほど多くの武器を持ってない。プーチンは狂ってしまった」と続けた。
 加藤さんは「自分が住んだ街や行ったことのある場所がテレビに出たり、お世話になった現地在住の日本人の方も取材を受けたりしていて、とても他人事とは思えない、何とも言えない心境です」と表情を曇らせる。
 戦争はスポーツにも大きな影響を及ぼす。加藤さんはウージュホロドでプレーした後、ポーランドのクラブへ移籍。直後の14年、ロシアがウクライナ南部クリミアを併合し、東部ドネツクとルガンスクでは親ロシア派による独立国が誕生した。これら地域のクラブは国内リーグから除名されてロシアリーグへ加盟。ウクライナの代表選手がポーランドのチームに移籍してきた。「彼は格下のポーランドでプレーするしか道はなく、母国の家族にお金を送るために貪欲にプレーしていました。自分のサッカー人生の中でも、特にウクライナでは政治や経済の影響をもろに受けることを肌で感じました。資金が潤沢なクラブだろうと、関係ありません」
 政変の影響で複数のクラブが消滅し、16年には加藤さんの古巣ウージュホロドが解散。加藤さん自身も試合経験があり、UEFA欧州リーグで準優勝した実績もあるFCドニプロも19年に解散した。ドネツク地方を拠点とし、国内トップクラスの強さを誇るFCシャフタール・ドネツクは、14年の紛争でスタジアムのドンバス・アリーナが爆破されたことで、リビウ、キエフと活動拠点を転々としている。
 今回のウクライナ侵攻を受けても、5月末にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる予定だった欧州チャンピオンズリーグ決勝がフランス開催に変更となった。
(続きは本紙でお楽しみください)

ウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドでプレーしていた時の加藤さん(左から2人目)とチームメート
ウクライナのFCホヴェルラ・ウージュホロドでプレーしていた時の加藤さん(左から2人目)とチームメート
政変の影響で3年前に解散したFCドニプロのスタジアム
政変の影響で3年前に解散したFCドニプロのスタジアム
25日に届いたギレイさんからのメッセージ。「キエフと東部からの人でいっぱいだ」「プーチンは狂ってしまった」とある
25日に届いたギレイさんからのメッセージ。「キエフと東部からの人でいっぱいだ」「プーチンは狂ってしまった」とある

カテゴリー:特集

 PR

PR