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ロシアやウクライナへの思い語る平野さん

カテゴリー:特集

インタビューに答える平野さん=豊橋市内で
インタビューに答える平野さん=豊橋市内で
キエフの観光名所「独立広場」㊤と「ペチェールスカ大修道院」(長濱浩さん撮影)
キエフの観光名所「独立広場」㊤と「ペチェールスカ大修道院」(長濱浩さん撮影)

 ロシアによるウクライナへの侵攻で世界中が揺れている。豊橋市在住で、大学でロシア語や異文化研究を教える平野恵美子さん(中京大学特定任用教授)に、両国の友人とのやりとりや、ロシア文化の専門家の立場から現在の思いなどを聞いた。
【田中博子】

 高校時代に好きなロシアのバレエダンサーがいたことから、ロシア語を勉強し始めました。東京外国語大学ロシヤ語学科に進み、4年生で初めてロシアを訪れました。新型コロナウイルス流行前までは、ほぼ毎年ロシアに足を運んでいました。落ち着いたら、毎年あるバレエ関連の学会や秋にあるフェスティバルに行くつもりでしたが…。日本人の有名なダンサーの方も招かれたので、現地で会いましょうと約束していたのですが、その方も行けるかどうか微妙ですね。
 ウクライナには行ったことがないんですよ。ポーランドのワルシャワ大学で1年間、日本語を教えていたことがあり、滞在中にベラルーシに遊びに行ったことはあります。
 ロシア人、ウクライナ人の両方に友人がいます。ウクライナ出身でウクライナ人かロシア人か知らない人も。現地で知り合った方もいるし、留学や仕事で来日したときに知り合った人もいますね。
 例えば、アンチロシアみたいな活動ってあるじゃないですか。プーチン政権とロシア国民の考えが一緒と思っている人がすごく多い。ロシア国内でも「戦争反対」って活動をしていて、日本でも報道するようになったんだけれども、それを知らない日本人も多い。
 ところが日本人向けに、私がSNSで「ロシア国内でも戦争反対する人がいっぱいいる」って書いたら、キエフにいるウクライナ人の友達からすぐコメントが来ました。まず、キエフのWiFiが安定していることにも驚いたんですが、「ロシアの反戦活動なんかいまさら遅い」と。
 「そもそも2014年のクリミア併合のときから反対してなかったのが悪い。プーチンを許してきたのが悪い」と書いてきて。私は「ロシアは政権と国民が一枚岩ではない」ということを知らせたくて書いたのだけれど、現地ウクライナ人から批判が来ました。友達は穏やかな方で、私個人への怒りではないんですが。
 確かに「一方的に爆撃を受けているのに、なんで加害者に寄り添っているの」ということにもなる。日本人向けに、ロシアをかばうつもりではなく、反ロシアと言ってロシア料理店などに嫌がらせをするのは間違っていると思うからこその発信だけれど、実際に爆撃に遭っている人からすると「外国人のあなたがなぜ寄り添っているの」となるのかもしれない。
 そのキエフの友達はワルシャワ大で知り合いました。数年前には一緒にコンサートに行ったり、お茶を飲んだりしていた人が、SNSで「猫の餌を買いに行ったらミサイルが落ちてくるのを見た」「隣人と火炎瓶を作りました」なんて書いています。とても同じ時代、同じ世界にいるとは思えない感じ。でも、SNSをしているのは余裕があるからではなく、「ずっと使ってなかったけど、SNSでも見ないと頭がおかしくなりそう」というのが理由のようです。
 一方、ロシアの友人は、少なくとも私の周囲にいる人はもちろん「戦争反対」ってことを表明しています。しかし、例えばもっと上の世代には、やっぱりプーチンは人気があるんですね。政府のプロパガンダをそのまま信じている人もいます。
 ロシア語を教えている大学はたくさんあって、政治とか経済とか関係なく、文化芸術レベルで付き合っている人たちが肩身の狭い思いをしています。自分もそのうちの一人なんですが。
 例えばある大学も、ウクライナとロシア両方の被害者に対して寄り添うような声明を出したら、非難のコメントが付いたとか。被害者にしてみたら「加害者は悪いけれど、家族は悪くないですよ」と言われても納得できない部分があるとは思うからわからなくはないですが。個人的には今のところは影響はないけれど、SNSでフォロワーの多い人は「売国奴」なんて書かれた人もいます。ロシア語をやっているというだけで。
 ウクライナ人でも、お母さんがロシア人、おじいさんがロシア人なんて人はものすごくたくさんいます。同僚でロシア語を教えている人がいるんですが、ウクライナ出身とは言っても、聞くまでウクライナ人なのかロシア人なのか、両方の血が流れているのか分からない。
 その先生に先日お会いした際、ご家族は大丈夫か聞いたんですが、お母さんは車でポーランドの国境まで逃げたそうです。連絡がつくのか尋ねたら、そこでも意外なことにネットがつながっている。ネット環境は安定しているのだけれど、その人が言うにはロシアからのネットは遮断しているから、日本からの情報をダイレクトに送っているということなんです。
(続きは本紙でお楽しみください)

 ロシアによるウクライナへの侵攻で世界中が揺れている。豊橋市在住で、大学でロシア語や異文化研究を教える平野恵美子さん(中京大学特定任用教授)に、両国の友人とのやりとりや、ロシア文化の専門家の立場から現在の思いなどを聞いた。
【田中博子】

 高校時代に好きなロシアのバレエダンサーがいたことから、ロシア語を勉強し始めました。東京外国語大学ロシヤ語学科に進み、4年生で初めてロシアを訪れました。新型コロナウイルス流行前までは、ほぼ毎年ロシアに足を運んでいました。落ち着いたら、毎年あるバレエ関連の学会や秋にあるフェスティバルに行くつもりでしたが…。日本人の有名なダンサーの方も招かれたので、現地で会いましょうと約束していたのですが、その方も行けるかどうか微妙ですね。
 ウクライナには行ったことがないんですよ。ポーランドのワルシャワ大学で1年間、日本語を教えていたことがあり、滞在中にベラルーシに遊びに行ったことはあります。
 ロシア人、ウクライナ人の両方に友人がいます。ウクライナ出身でウクライナ人かロシア人か知らない人も。現地で知り合った方もいるし、留学や仕事で来日したときに知り合った人もいますね。
 例えば、アンチロシアみたいな活動ってあるじゃないですか。プーチン政権とロシア国民の考えが一緒と思っている人がすごく多い。ロシア国内でも「戦争反対」って活動をしていて、日本でも報道するようになったんだけれども、それを知らない日本人も多い。
 ところが日本人向けに、私がSNSで「ロシア国内でも戦争反対する人がいっぱいいる」って書いたら、キエフにいるウクライナ人の友達からすぐコメントが来ました。まず、キエフのWiFiが安定していることにも驚いたんですが、「ロシアの反戦活動なんかいまさら遅い」と。
 「そもそも2014年のクリミア併合のときから反対してなかったのが悪い。プーチンを許してきたのが悪い」と書いてきて。私は「ロシアは政権と国民が一枚岩ではない」ということを知らせたくて書いたのだけれど、現地ウクライナ人から批判が来ました。友達は穏やかな方で、私個人への怒りではないんですが。
 確かに「一方的に爆撃を受けているのに、なんで加害者に寄り添っているの」ということにもなる。日本人向けに、ロシアをかばうつもりではなく、反ロシアと言ってロシア料理店などに嫌がらせをするのは間違っていると思うからこその発信だけれど、実際に爆撃に遭っている人からすると「外国人のあなたがなぜ寄り添っているの」となるのかもしれない。
 そのキエフの友達はワルシャワ大で知り合いました。数年前には一緒にコンサートに行ったり、お茶を飲んだりしていた人が、SNSで「猫の餌を買いに行ったらミサイルが落ちてくるのを見た」「隣人と火炎瓶を作りました」なんて書いています。とても同じ時代、同じ世界にいるとは思えない感じ。でも、SNSをしているのは余裕があるからではなく、「ずっと使ってなかったけど、SNSでも見ないと頭がおかしくなりそう」というのが理由のようです。
 一方、ロシアの友人は、少なくとも私の周囲にいる人はもちろん「戦争反対」ってことを表明しています。しかし、例えばもっと上の世代には、やっぱりプーチンは人気があるんですね。政府のプロパガンダをそのまま信じている人もいます。
 ロシア語を教えている大学はたくさんあって、政治とか経済とか関係なく、文化芸術レベルで付き合っている人たちが肩身の狭い思いをしています。自分もそのうちの一人なんですが。
 例えばある大学も、ウクライナとロシア両方の被害者に対して寄り添うような声明を出したら、非難のコメントが付いたとか。被害者にしてみたら「加害者は悪いけれど、家族は悪くないですよ」と言われても納得できない部分があるとは思うからわからなくはないですが。個人的には今のところは影響はないけれど、SNSでフォロワーの多い人は「売国奴」なんて書かれた人もいます。ロシア語をやっているというだけで。
 ウクライナ人でも、お母さんがロシア人、おじいさんがロシア人なんて人はものすごくたくさんいます。同僚でロシア語を教えている人がいるんですが、ウクライナ出身とは言っても、聞くまでウクライナ人なのかロシア人なのか、両方の血が流れているのか分からない。
 その先生に先日お会いした際、ご家族は大丈夫か聞いたんですが、お母さんは車でポーランドの国境まで逃げたそうです。連絡がつくのか尋ねたら、そこでも意外なことにネットがつながっている。ネット環境は安定しているのだけれど、その人が言うにはロシアからのネットは遮断しているから、日本からの情報をダイレクトに送っているということなんです。
(続きは本紙でお楽しみください)

インタビューに答える平野さん=豊橋市内で
インタビューに答える平野さん=豊橋市内で
キエフの観光名所「独立広場」㊤と「ペチェールスカ大修道院」(長濱浩さん撮影)
キエフの観光名所「独立広場」㊤と「ペチェールスカ大修道院」(長濱浩さん撮影)

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